すごろく気候変動適応への道 付録

カエルくんとアキツノイケ研究所のウサギ博士

“夜通し遊ぶ”は様変わりしたけど

このすごろくの開発にあたり、世代が異なる多くの方々からのご意見やご質問をいただきました。中でも大学生から「どういう意味ですか?」というご質問の多かったイベントが、この「夜通し街に出て遊んだ」でした。

ここでの「夜遊び」について、80年代終わりのバブル期を経験した世代が連想する夜遊び(バイクで夜道を走り回る、ゲームセンターで遊び続ける)と、今の若い世代のつつましやかな夜遊び(コンビニに行っておやつを買い食い、部屋で夜通しゲーム)の違いに改めて気づかされました。

ところで、カエルくんのおじいちゃんがバイクで走り回った80年代の夜遊びは今の若い世代のそれに比べるとはるかに環境負荷が高そうに見えます。騒音や排ガスなどの面では確かにそうでしょう。ただ、改めて日本の国民一人当たりのCO2排出量の推移(図2-4)を見てみると、意外なことにバブル崩壊後の90年代以降も大きく下がることはなく、むしろ増加する傾向にあったことが分かります。

日本の国民一人当たりのCO2排出量の推移
出典:国立環境研究所温室効果ガスインベントリオフィス編
環境省地球環境局総務課脱炭素社会移行推進室監修「日本国温室効果ガスインベントリ報告書2024年」
第2章 温室効果ガス排出量及び吸収量の推移、国立環境研究所地球システム領域地球環境研究センター(2024年)

東日本大震災を契機に省エネの意識が高まったことや再生可能エネルギーの普及が進んだこともあり、2013年を境に、順調な減少傾向にありますが、それでも2022年と1990年とを比べてみると、その差はわずか一割程度です。このことにはもちろん、様々な要因が影響していますが、全体で見れば、今の私たちの暮らしとそれを支える産業全体がなお大量のエネルギーを必要としており、これに加え依然として化石燃料への依存が大きいことを意味しています。

例えば、今ではだれもが持っているスマホは電力消費が大きく頻繁に充電が必要ですし、そもそもスマホが快適に作動するには大量の情報を瞬時に処理するサーバーが不可欠であり、ここでも大量の電力が必要です。一方、80年代の若者はまだ携帯電話すら持っていませんでした。また、扇風機よりも大きな電力を消費するエアコンもぜいたく品で、今ほど普及はしていませんでした。気候変動適応の面で、今やスマホは防災上、エアコンは熱中症対策上の大切なアイテムになっています。今の私たちの便利で快適な暮らしは、多くのCO2の排出と無縁ではないのだということを私たちはまず自覚しなければなりません。さらに今後AIが普及することになれば、さらに多くの情報処理が必要になり、データセンターなどでもさらに多くの電力が必要になるかもしれません。

だれもがより便利で快適な暮らしを追求し、科学や産業が発達していくのは自然なことです。ただ、昔の人のように、その先が良いことばかりだと無邪気に信じるわけにはいかないのだということを、私たちは知っています。これからも私たち一人一人が、本当の豊かさを地球環境に配慮した持続可能な暮らし方の中に求め続けることが、その道をよりよい方向に導くのだということも自覚していなければなりませんね。

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