みやこの生きもの・文化協働再生プロジェクト認定制度」の実施

掲載日 2023年8月4日
分野 自然生態系 / 国民生活・都市生活
地域名 近畿(京都府)

気候変動による影響

京都府では、100年で気温が約2℃上昇しており(注1)猛暑日や熱帯夜の増加、冬日の減少などの影響が生じています(注2)。

気候変動による積雪量の減少や冬期の死亡率の低下等からニホンジカの生息数の増加が京都府においても報告されています。ニホンジカの生息数の増加によって、祗園祭や和菓子業界で活用されてきたチマキザサの新芽が食害を受け絶滅の危機に瀕しているほか、葵祭(注3)で奉納されるフタバアオイが減少しつつあるなど、自然生態系だけでなく、伝統文化への影響も危惧されています。

取り組み

京都市では、京都の祭りや文化を支えてきた生きものの保全・再生のための取組を認定し、必要に応じて技術的な支援のための専門家を派遣する「京の生きもの・文化協働再生プロジェクト認定制度」を平成26年9月に創設し、京都ならではの自然環境や伝統文化を後世に受け継ぐための取組を推進しています。

令和4年度からは、より多くの方々に対してプロジェクト参加を促すため、自宅で希少な植物を育成する生息域外保全(注4)の取組をスタートしました。この取組は、本制度の趣旨や保全対象種の栽培方法等に関する育成講習会を実施し、受講した市民等に生息域外保全に取り組んでもらうものです。令和4年度は計60名の方を認定し、フタバアオイ、ヒオウギ、ノカンゾウ、イワギボウシの4種を対象として、希少種の育成を行っています(図)。また、育成全般に関する相談窓口を設け、「うまく育たない」、「肥料はどうすれば良いか」など育成に関する様々な問題や疑問をフォローアップしています。

さらに、この取組を広く知ってもらい、より多くの方々に生物多様性保全への興味・関心を持ってもらうため、参加者が育成している希少な植物の育成状況を紹介する「オンライン写真展示会」を開催しています。このように、「京の生きもの・文化協働再生プロジェクト認定制度」について、活動内容(目的、取組内容、利用方法等)を紹介することによって、活動に興味を持ち、容易に取り組めるものとなるよう目指しています。

効果/期待される効果等

本取組により、葵祭で使われるフタバアオイ、祇園祭の粽(ちまき)に欠かせないチマキザサ、をけら詣り(注5)で焚くオケラ及び源氏物語に登場するフジバカマなど、京都市の伝統文化を育んできた本市固有の生態系の保全を図ることができます。また、文化への利用の場面を通して保全の必要性を発信することで、取組の輪を広げ、「京都らしさ」の継承・発展に繋がる事が期待されます。

令和4年度の保全対象種となっている4種
図 令和4年度の保全対象種となっている4種
(出典:京都市ウェブページ「【広報資料】「京の生きもの・文化協働再生プロジェクト認定制度」認定者が育成中の希少植物のオンライン写真展示会を開催します!」)

脚注
(注1)統計期間:1881-2018年
(注2)猛暑日:日最高気温が35度以上の日。熱帯夜:夜間の最低気温が25度以上のこと。冬日:日最低気温が0度未満の日。 
(注3)葵祭とは、京都三大祭の1つでフタバアオイを奉納する神事「葵里帰り」が行われる。
(注4)生息域外保全とは、希少な植物を本来の生息地域以外の場所(鉢植え、事業所の庭等)で保全すること。
(注5)をけら詣りとは、大晦日にオケラというキク科の植物を焚き上げる除夜祭のこと。

出典・関連情報

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