インフォグラフィック
イラストで分かりやすい適応策
気候変動の影響と適応策

道路交通

国民生活・都市生活分野|都市インフラ、ライフライン等|水道、交通等
協力:名古屋大学大学院環境学研究科

影響の要因

気候変動による短時間強雨や強い台風の増加等は、道路インフラへ被害を及ぼす可能性が極めて高い。

現在の状況と将来予測

現在、豪雨等による道路への土砂流入や道路崩壊、倒木や流木による道路の通行障害、高速道路の盛土斜面や切土斜面の崩壊の発生等が報告されている。

将来、異常気象の増加に伴い、道路のメンテナンス、改修、復旧に必要な費用が増加することが予測されている。

適応策

沿道の災害リスクを低減すると共に、災害時の交通確保が可能な道路に改良していく必要がある また、災害発生時の代替路確保などネットワークの冗長性を確保し、緊急輸送から復旧・復興までの交通を確保することが重要となる。

ハード対策=  ソフト対策=

分類
沿道リスク*への
対応
  • 道路区域外に起因する災害への対応

    道路法面の固定
    道路法面の固定
  • 落石防止
    落石防止
  • 樹木の伐採
    樹木の伐採
  • 排水施設の改良
    排水施設の改良
道路ネットワークの
代替性確保
  • 災害時の代替性確保

    豪雨災害がよく発生する区間では、代替道路を確保し危険性の少ない道路にする

  • 多様な主体が管理する道の活用

    民間を含め多様な主体が管理する道を把握・共有し、避難路や代替輸送路として活用

道路構造の
強靭化
  • 新たな道路横断面構造の設定
    路肩の拡幅
  • 新技術の導入

    耐久性・耐水性に優れた舗装の導入

情報発信・
体制づくり
  • 統括的交通マネジメント
  • 道路交通情報等の迅速な提供

    救助・避難行動のために必要となる道路交通情報等を提供

*沿道リスクのうち、河川の堤防や海岸の防波堤における対策等も重要である。高波・高潮に対する適応策は「自然災害・沿岸域分野/沿岸/高波・高潮」、洪水に対する適応策は「自然災害・沿岸域分野/河川」に記載。

分類
沿道リスクへの
対応
道路ネットワークの
代替性確保
道路構造の
強靭化
情報発信・
体制づくり
方法
[ 道路法面の固定 ]

法枠工(崩落しそうな斜面をコンクリート製の枠で固定して崩落を防ぐ)や、法枠工とアンカー工の併用(コンクリート構造物と併せて、アンカーの設置により補強する)工法がある(国土交通省 参照2020年11月25日)。

[ 落石防止 ]

落石防護柵工(落石を防護する柵を設置)やポケット式落石防止網工(落石発生箇所により近い箇所に落石を受け止めるための網を設置)、ワイヤーロープ掛工(落ちてきそうな石をワイヤーロープで固定する)の工法がある(国土交通省 参照2020年11月25日)。

[ 樹木の伐採 ]

沿道区域の斜面崩壊の恐れのある地上部樹木を伐採し、撤去する。

[ 排水施設の改良 ]

水を浸透させると地盤が弱くなるため、排水することが重要。法面の浸食や安定性の低下を防止するため、小段排水等の排水施設の改良を実施する。

[ 災害時の代替性確保 ]

災害が頻発する区間では、同じ災害で不通にならないような場所に別の道路を整備したり、上下別構造になるようにし、災害時の代替路を確保して地域間の交通を確保する(例:一方が高波の影響を受けやすい道路である場合、もう一方は土砂災害等への対策を施した上で山側に整備する等)。場所(海岸沿い、河川沿い、山地等)に応じた適切な工法を用いることが重要。

[ 多様な主体が管理する道の活用 ]

山間地等において、民間を含め多様な主体が管理する道(公道、農道、林道、電力会社等の民間道等)を一元的に把握・共有して統合地図を作成し、避難路や代替輸送路として活用する。東日本大震災では林道・農道・森林作業道が住民の避難路、救助・復旧路として利用された。岐阜県や高知県等で統合地図の整備が行われている。 (「多様な主体が管理する道活用」連絡会 2019)

[ 新たな道路横断面構造の設定 ]

土砂災害が生じた際にも、最低限の交通が確保できるよう路肩を拡幅するなど、新たな道路構造仕様を設定する。

[ 新技術の導入 ]

既存の道路舗装の点検並びにその結果を踏まえた修繕等が進められる中で、より耐久性・耐水性の高い舗装を導入することで、気象条件の厳しい環境下でも道路の健全性を維持する。

[ 統括的交通マネジメント ]

平時から道路管理者、交通管理者等が集まり災害時の対応を協議しておき、応急・復旧に即応できる体制づくりを行っておく。災害発生後は状況に応じて道路網の情報提供や運用方法(緊急車両のみ通行可能、一般車も通行可能とする等)を決め、柔軟に決定・実施していく。

[ 道路交通情報等の迅速な提供 ]

プローブ情報(車両のリアルタイム走行情報)を活用した、通行可能な道路やハザード(道路冠水、土砂災害等)などの情報提供により、円滑な避難行動等を支援する。

時期
現在~
現在~
現在~
現在~
効果
交通障害の予防・軽減
代替経路の確保
交通障害の予防・軽減、交通確保
災害時の対応
コスト
低(工事費)
高(工事費等)
中(工事費)
低(ソフト対策)~
中(情報発信体制の整備)

適応策の進め方

【現時点の考え方】
沿道リスクへの対応や道路構造の強靭化等による安全性の向上や、道路ネットワークの代替性を確保することで、信頼性の高い道路を維持する。また、平時から関係者間で応急・復旧に即応できる体制づくりを行い、災害時には早急に被害状況を把握、緊急輸送道路として警察、消防等が迅速に活動し人命救助や緊急物資輸送等が円滑に行えるようにすると共に、通行規制等の情報提供も迅速に行う。

【気候変動を考慮した考え方】
今後、気候変動による短時間強雨や渇水の増加、強い台風の増加等が進めば、これらのインフラ・ライフライン等にも影響が及ぶことが懸念され(環境省 2020)、社会・経済への影響も大きい一方、ハード対策の実装には時間を要することが多いため、計画的な準備が重要となる。

【気候変動を考慮した準備・計画】
今後の大規模災害発生に備えた道路整備のあり方の検討や災害発生時における統括的な交通マネジメント、迅速な応急復旧等( 道路の耐災害性強化に向けた有識者会議 2019))を進め、今後の災害に備えることが重要となる。

2022年3月改訂

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