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■浸水リスクに基づく設備の整備
- インフォグラフィック
- イラストで分かりやすい適応策
地下鉄
影響の要因
短時間強雨や強い台風の増加(「高波・高潮*」の増大含む)などにより、地下鉄へ浸水する事で様々な被害を及ぼす可能性がある。
*詳細は自然災害・沿岸域分野の「高波・高潮」参照。
現在の状況と将来予測
記録的な豪雨や台風により、地下駅等への浸水被害が生じている。大河川の氾濫等によって大都市部で大規模水害が発生した場合、甚大な人的被害の発生や、公共交通機関の運休に伴う経済社会的な影響が懸念される(国土交通省2015)。
適応策
まず浸水防止・遅延対策により止水し、避難時間も確保する事が重要となる。既に各時系列(平常時~豪雨等の予報・監視~浸水時)で必要な対策が実施されているが、今後の気候変動による外力の増大(リードタイムが短い集中豪雨の増加、高潮・高波の増大等)にも備えた対策の更なる強化を進める事が考えられる。
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■相互連携訓練
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■利用者への啓発
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■タイムラインに沿った準備
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■予報・監視に応じた対応
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■浸水対策と避難誘導の連携
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■避難確保・浸水防止計画の策定・見直し
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■連続する地下街等関係者との連携
(1)止水:洪水・内水・高潮ハザードマップ等から把握した浸水深と、浸水する可能性のある開口部等の条件に応じ、対策高さや性能等を検討する。主に①駅出入口(止水板・防水扉の設置、かさ上げ(スロープ設置等バリアフリーにも配慮))、②換気口(浸水防止機)、③トンネル坑口(防水壁や坑口防水ゲートの設置)、④トンネル内(防水ゲート)等の対策が行われている。設備は定期的に点検・補修を行うと共に、ハザードマップの改定等最新知見に基づき対策を検討する事が望ましい。
(2)停電対策:電気設備への浸水防止や、万一停電した場合の蓄電池設備による非常灯等の整備が行われている。
(3)排水ポンプ:トンネル等への浸水に備え、地上に水をくみ上げる排水ポンプが設置されている(停電時の備えも必要)。
従業員への研修や、訓練(情報収集・伝達、避難誘導、浸水対策)を定期的に実施する。特に地下街と接続する場合、地上出入口が複数となり水の流入経路も複雑になる事から、水が浸入しない避難経路を作る。これら実際の浸水時を想定し、訓練は接続し合う地下街等と連携して実施することが望ましい。併せて止水等設備の訓練も実施する。
日頃から利用者に水害発生時の行動を意識してもらう為に、海抜表示の取組が行われている。また避難場所や避難経路を施設内に掲示し、利用者に周知する事も行われている。
地下鉄事業者も参画して地域のタイムライン(事前防災行動計画)*策定が行われており、風水害が懸念される気象情報が発表された場合には、タイムラインにそって準備を行う事が考えられる。
*災害が発生することを前提として、関係者が災害時に行う防災行動を時系列に沿ってとりまとめたもの(荒川下流河川事務所参照2021年8月23日)
水害の種類によってリードタイムや浸水深等異なることから、特徴に応じた対策を講じる必要がある。
①計画運休(大型台風等):数日前から予報が発表され、利用者等への情報提供等を適切に行いながら計画運休を実施、従業員・利用者双方の安全確保が図られている。
②迅速な止水・避難体制への移行(集中豪雨等):予報や降雨から浸水までの時間が非常に短い。早急に「~浸水時(下記)」対応に移行する。
水防法に基づき、地域防災計画に定める地下街等の各施設では、「避難確保・浸水防止計画」の作成等が行われている。
地下駅と各地下街等関係する管理者が共同して浸水対策や避難誘導方法等を検討し、連携した避難確保・浸水計画とする事が望ましい。
万が一浸水等危機が迫った場合、止水と避難誘導を連携して行う。避難経路については、避難前に止水板等を設置する出口に続く階段は使用せずまた停電時でも避難誘導可能な経路を選定する。
適応策の進め方
地下街、地下鉄等の地下駅及びこれらに直結又は地下道を介して接続するビルによって形成されるような大規模な地下空間では、多数の地上出入口、地下接続口が存在するため、各施設管理者が想定していない経路から浸水が発生するなど、施設管理者間での浸水情報の共有が不十分な場合がある。このため、関係する複数の施設管理者が協議会等を設置し、連携して浸水防止が必要な出入口や浸水経路を把握し、また効果的な情報伝達や避難誘導方策を検討し、一体的な浸水防止・避難確保対策を促進するべきである。この際、地下空間を対象とした浸水シミュレーションを活用することや、地震や火災に関する避難計画等の検討が先行的に進められている場合はそれらを参考にすることも考えられる。(以上社会資本整備審議会 2015 より引用)