- インフォグラフィック
- イラストで分かりやすい適応策
水道
生活環境研究部水管理研究領域
影響の要因
気候変動による豪雨や強い台風の増加、渇水の増加、水温上昇、海面水位の上昇等により、水道システムに対し水量、水質、水道施設へ影響を及ぼす可能性が極めて高い。
現在の状況と将来予測
現在、豪雨や台風による洪水等での水道施設の被害や、渇水に伴う減断水が発生している。原水濁度の上昇、水源での植物プランクトンの異常発生や、浄水処理での生物障害等による水質への影響も観察されている。さらに、水道システムへの影響被害にともなう他分野への影響も認められている。
将来、影響の拡大が懸念されると共に、対策費(施設更新等)の増大も懸念される。
適応策
水道システムを、河川や湖沼・ダム、地下水などの「水源系」、浄水処理を行う「処理系」、浄水を各家庭への送る配水管や配水池、さらに給水管や貯水槽などの「給配水系」に分類し、これらの各段階で増水、渇水、水質悪化への影響に対し、適応策を検討していく事が考えられる。
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水源系■水位・濁度監視の強化
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給配水系■広域的な送水管ネットワークの整備
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全体■浸水対策
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水源系■湖沼・ダムの機能向上
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給配水系■スマートメーターの導入
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■雨水・再生水の利用
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水源系■湖沼・ダムの水質観測・監視システムの向上
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処理系■浄水処理強化、最適化
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全体■情報共有・連携ネットワークの構築
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全体■対応マニュアル、計画の作成
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■水道ハザードマップの作成
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緊急時の水の備え、応急給水拠点の確認
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水質異常発生時の協力
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災害拠点病院では、災害時でも診療機能を3日程度維持するための給水の確保
*水質について増水・渇水対策に関する事項は、水質悪化対策から除く
増水時の水位上昇レベルと高濁度発生状況の把握について、事業体間連携も含む監視システムを強化する。
浄水場や給水所をつなぐ送水管線のネットワークを広域的に確保し、災害時のバックアップとしての給水を確保する。
水道施設を浸水から守るために、堤防や止水堰、下水道等の施設の整備を実施する。水道施設の適切な維持管理、計画的な更新等を行い、災害に備える。
ダムの嵩上げ、湖沼・ダムの堆積土砂の掘削・浚渫などによる既存施設の機能向上を実施する。
スマートメーターの導入により、水使用量が見える化され、節水意識が高まる。
雨水や下水処理水の再生水を、雑用水として利用する。
定期的な水質検査に加え、自動監視システムなども用いて水質観測・監視システム向上を実施する。また、水質悪化の早期検知ならびに監視の強化を行う。
水質悪化の早期把握と状況変化に対応する浄水処理システムを構築する。
水質悪化時に流域単位で協力体制をとり、情報共有し、原因調査・対応等について連携を取るネットワークを構築する。
増水対策では風水害対策マニュアル等を、渇水対策では渇水対策マニュアル、渇水タイムライン等を作成する。これらマニュアルには、断水時の応急給水計画も含まれる。なお、渇水タイムラインとは、渇水の深刻度の進展と影響・被害を想定した「渇水シナリオ」と、渇水による被害の軽減と最小化のための対策等を時系列で整理した「行動計画」(国土交通省2019)である。水質悪化対策では、水源から給水栓に至る各段階でリスク評価・管理を行う水安全計画を策定する。緊急時にはこれらマニュアル、計画に基づいて対応にあたる。マニュアル、計画は、PDCAサイクルにより継続的に見直す。
災害による水道事業への影響を、流域を単位として既存のハザードマップ、統計データ、水道地図等をGIS上に重ね合わせた水道ハザードマップを作成し、被害特性や問題点を抽出して、事前対策に役立てる。
高(施設整備等)
高(施設整備等)
高(システム構築)
*水質について増水・渇水対策に関する事項は、水質悪化対策から除く
適応策の進め方
【現時点の考え方】
大雨や台風による浄水場の冠水や水管橋の破断などの水道施設そのものへの影響や、渇水・洪水、濁水の影響による取水制限や断水の発生が確認されている。気候変動により、水量、水質、水道施設への更なる影響が懸念される。
【気候変動を考慮した考え方】
気候変動により水道システムは様々な影響を受ける可能性が考えられる。水源では、渇水、洪水、藻類・異臭味原因物質の増加、病原微生物汚染など、処理では水質悪化による影響、薬品量の増加、配水配水系では、ポンプへの負荷の増大や塩素不足などが考えられる。今後想定される気候変動によって引き起こされる水道システムへの影響を明らかにし、被害を低減・回避する対策を推進する必要がある。(以上秋葉他 2010より引用)
【気候変動を考慮した準備・計画】
気候変動が水道インフラに影響を及ぼすことが懸念されることも踏まえ、水の相互融通を含めたバックアップ体制の確保や老朽管を水害等の自然災害にも耐えられる耐震管へ更新するなどの水道の強靱化に向けた施設整備の推進や、施設の損壊等に伴う減断水が発生した場合における迅速で適切な応急措置及び復旧が行える体制の整備を行うとともに、総合的な水質管理の徹底を図る。(以上閣議決定 2018より引用)また、水道ハザードマップや渇水タイムラインを作成することにより、水害・渇水発生時に円滑に対応できるよう準備しておく必要がある。