令和5年度 気候変動適応研修(新任者コース)の開催概要及びアンケート集計結果報告
I.研修概要について
受講期間 | 令和5年4月27日(木)~令和5年6月15日(木) |
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受講方法 | eラーニング |
主催 | 国立環境研究所 気候変動適応センター |
今回実施の研修は、地方公共団体や地域気候変動適応センターの新任者の皆様を対象に気候変動対策、とりわけ適応を担当されることになった方を対象にしました。初めて担当部署に配属された皆様にとっては、どこから取り掛かるべきか戸惑うことも多いと思います。
そこで、本研修では気候変動適応に関する基礎知識と、関連する情報が多く掲載されている気候変動適応センターが運営する「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」の使い方を自分のペースで学んでいただくことを目的としたeラーニングを実施しました。
全国の地方公共団体、地域気候変動適応センターや省庁等から多くの皆様が受講され、その内約230名の方々が学習後にWeb確認テストを受けられました。また、約80名の方から事後アンケートにご回答をいただき、その中でご質問もお受けしました。
以下、Web確認テスト参加者の属性、アンケート集計結果の一部および質問への回答を記載いたしました。
II.アンケート集計結果について
自由コメント(今回の研修について)
- e-ラーニングで受講がしやすかった。また、受講しながらA-PLATを触ってみることもできたので、わかりやすかったと思う。
- 基本的な考え方に加え、事例集や用語集がまとめられており理解が進んだ。
- 気候変動に係る将来予測などについては、今後のTCFD開示の参考になると考えている。
- 情報やデータのソースが明示されているので、自分でも調べやすく、助かる。
- 動画や音声があった方がわかりやすい。都道府県単位で、これまでの気候の変化や将来の気候に関する予測を地図やグラフで表示できるということだが、使い方をわかりやすく解説してほしい。
- これまでや将来の気候変動影響について、多くの情報を知ることができてよかった。確認テストはもう少し難しくてもいいのではないかと思った。
国立環境研究所 気候変動適応センターへの要望は?
- 気候の将来予測データの解析方法に関するマニュアルや資料があると、データの抽出や作図などが自分でもできて、より地域のニーズに合わせた資料を提供できるようになると思うのでそのような資料が欲しい。
- 他の自治体による適応策にかかる普及啓発事業等の情報を知る機会が増えると良い。
上記は、アンケートに記載いただいた自由記述欄から一部を抜粋したもので、これ以外にも多くの貴重なご意見を頂戴いたしました。今後の研修やA-PLATの内容等の参考とさせていただきます。研修へのご参加、アンケートへのご協力、誠にありがとうございました。
また、皆様からお寄せいただいた幾つかの質問とその回答を以下に掲載しましたので、こちらもご参照ください。
R5年度気候変動適応研修(新任者コース)Q&A一覧
- Q1: 気候変動は地球温暖化に伴うものだと認識している。そのため、地球温暖化対策を進めることが気候変動対策にもつながると考えている。近年はゼロカーボンシティを表明する自治体も増えており、併せて温暖化対策実行計画の策定をしているところも少なくないかと思うがその中であえて、「気候変動適応計画」として新たに策定する必要性が今一つ分からない。各自治体も様々な課題に対応するため各種計画を策定していることと思うが、あまり多くの計画があると、それぞれの位置づけが複雑になり、進捗管理や市民への普及啓発等の負担も大きくなるのではという不安もある。
- A1: ご指摘のとおり、地球温暖化に起因する気候変動の影響が顕在化しており、地域での気候変動対策の重要度が増しています。地球温暖化対策には、緩和策が最も必要かつ重要な対策となりますが、気候変動の影響は気温の上昇、農作物の品質低下、大雨や暴風による災害、熱中症など様々な形で既に現れており、今後も影響は大きくなる見込みであることから、影響をできるだけ抑えるため、科学的な情報をもとに計画的に変化に備えていくことが重要です。
そのための第一歩として、環境、農政、防災など関連する部局が取り組んでいる様々な行政計画・施策の中に、気候変動適応の視点を組み込んでいくことが重要と考えています。地域適応計画は、独立した計画として策定する方法もありますが、地球温暖化対策における地方公共団体実行計画や環境基本計画をはじめとする、他の関連する計画の一部に組み込む形で策定することもできます。関連する計画・施策等と連携し、区域の状況に合わせた策定の形式を選択することにより、施策・対策間での相乗効果の創出や計画の検討・実施の際の負荷低減等の効果が期待できます。
実際、令和4年12月末時点でA-PLATに掲載された地域気候変動適応計画は191件、うち市区町村での策定は145件となっています。その内訳は単独の計画が4.1%、温暖化対策実行計画の一部に組み込んだものが58.6%、環境基本計画の一部として組み込んだものが37.2%となっています。つまり、実行計画や環境基本計画の改定に併せて、適応に関する計画を盛り込み、地域気候変動適応計画として位置付ける市区町村がほとんどです。
地域適応計画に関して明確な認定基準がある訳ではなく、地域の実情に合わせ、地域課題の解決に資する計画作りから優先的に始めることが重要と考えています。
なお、国立環境研究所でも、「地域気候変動適応計画作成支援ツール」等、計画策定に携わるご担当者のご負担を少しでも軽減できるよう、ツールや資料の提供に努めておりますので、是非ご相談ください。
・参考資料:環境省事務連絡
- Q2: 気候変動に対する既存建築物の改修に対する具体的な対策事例と国土交通省等で基準として定める予定はあるのかどうかを知りたい。
- A2:主に水害対策となりますが、建築物のレジリエンス強化(耐水性建築)、重要設備の上層階への配置(受変電設備、非常用発電機等)、敷地の嵩上げ、建築物のピロティー化、止水版・防水扉の設置等の実施事例等があり、住宅の浸水対策改修等の工事費用の補助制度を設けている自治体もあります。
高齢者福祉施設等では垂直避難エレベーター、スロープ、避難スペースの確保等や非常用自家発電設備装置等の電気設備を水害から守るために、設備を屋上等に移設するための工事や止水板等の設置工事の改修があげられます。これらの工事費用の補助制度も各地で行われています。
<参考情報>
・A-PLAT インフォグラフィック( 洪水、 内水、 地下鉄、 建設業、 不動産業)
国土交通省では様々な気候変動対策関連の検討会等が設置されており、性能確保のための設計基準の見直し等の検討が適宜進められています。
<参考情報>
・国土交通省:「建築物における電気設備の浸水対策のあり方に関する検討会」
(令和元年11月設置)(建築物における電気設備の浸水対策ガイドライン)
・国土交通省:流域治水関連法に基づく「流域治水」の本格的実践
・建築研究所:建築物の浸水対策案の試設計に基づく その費用対効果に関する研究また、建築・不動産分野では、CASBEEやLEEDといった環境性能評価システムの認証数が増加傾向にあり、水害等自然災害に対する不動産のレジリエンスを定量化・可視化する認証制度等もスタートしています。こうした認証制度が望ましい建築・土地利用の誘導に寄与することも期待されています。
- Q3:環境省として、今回の気候変動への「適応」についてのみならず、「変動」についての研修が行われる予定はあるか。
- A3: 直近で気候変動そのものに関する研修を行う予定はありませんが、過去に行われた関連する研修等の講義スライドや関連動画を掲載していますのでよろしければご覧ください。
令和2年度 気候変動適応研修(中級コース)(主催:国立環境研究所気候変動適応センター)
・講義1気候変動予測の背景(気象庁気象研究所 高薮 出 主任研究官)
・講義2気候変動予測の見方(気象庁気象研究所 高薮 出 主任研究官)IPCC AR6 WG1における地域の記述と「日本の気候変動2020」(気象庁気象研究所)
IPCCが公表した報告書と、文部科学省及び気象庁が2020年12月に公表した『日本の気候変動2020』の内容を中心に、日本国内に焦点を絞って気候変動の「いま」と「これから」を解説する動画となっています。
- Q4:本研修資料を出典等記載の上、講演資料として引用したいが可能か。
- A4:可能です。ご活用いただけますと幸いです。
<参考情報>A-PLATのサイトポリシー
出典・関連情報