沿岸災害対応のための礫養浜パイロットプロジェクト

掲載日 2023年9月11日
分野 自然災害・沿岸域 / 国民生活・都市生活
地域名 海外(ツバル)

気候変動による影響

ツバルは、波によりサンゴ礫(れき)やサンゴ砂が打ち上げられて形成された島嶼国であり、国土の大半は標高1〜3mと低平です。近年、海岸浸食が進行しており、気候変動による海岸災害リスクが高まっています。特に首都のあるフォンガファレ島(図1)には、全人口の約5割にあたる5千人程が居住しており、高潮浸水被害による日々の生活へ影響が生じています。

取り組み

独立行政法人国際協力機構(以下、JICA)では、海岸が本来もつ防護と景観の両立を目指した持続可能な海岸対応策の検討を目的として、2012年2月から技術協力プロジェクト(開発計画調査型)によるツバルへの協力を開始しました。首都フナフティがあるフォンガファレ島中心部の砂浜が消失した海岸において、ツバルの自然海岸の形成過程や形状を参考とし、同国の浜を構成していたのと同様のサンゴ礫、サンゴ砂を用いた礫養浜(れきようひん(注))をパイロットプロジェクトとして実施し、2015年12月に完了しました(図2)。

JICAが提案・実施した礫養浜は、自然の海岸を模した工法であるため、良好な海岸状態を維持していくためには、海岸を利用する地域住民および海岸管理を担う行政の理解と、住民・コミュニティによる維持管理活動が必要です。その啓発活動として、維持管理されているきれいな海岸を利用できる楽しさ・喜びを、住民一人一人が実際に感じられる機会を提供するため、2016年7月に復元した海岸で小中学校の大運動会を実施しました。事前の準備や海岸清掃は、学校行事の一環として生徒・先生も参加し、政府関係者、地域、学校、JICA調査団(日本工営)が一体となって進められました。これらのイベント前には、海岸保護への理解を目的として、海岸環境に関する授業を全生徒対象に実施しました。運動会当日は青空・青い海の中で、子ども達の弾ける笑顔に包まれ、ツバル初の海岸での運動会は大成功に終わりました。

JICAでは、本事業をツバル国内の他地域へ展開することも検討しており、礫養浜に使用する礫や砂のストック確保や管理方法の検討も進めています。

効果/期待される効果等

建設工事終了後、サイクロンの襲来を受けても礫養浜は安定した状態が維持されています。また、本事業での運動会の成功を受けて、今後ツバルで定例行事として運動会を実施していく意向が政府関係者および学校側から示されました。

フォンガファレ島の場所
図1 フォンガファレ島の場所
(出典:独立行政法人 国際協力機構(JICA)ODA見える化サイト ウェブページ「沿岸災害対応のための礫養浜パイロットプロジェクト」)
工事前(左)と工事後(右)のプロジェクトサイトの様子
図2 工事前(左)と工事後(右)のプロジェクトサイトの様子
(出典:国際協力機構(JICA) ODA見える化サイト ウェブページ「沿岸災害対応のための礫養浜パイロットプロジェクト」)

脚注
(注)礫養浜(れきようひん):波によって海岸の砂が削り取られたような海岸へ、再び人の手で礫を戻す行為。
(国土交通省「第1回中長期的案展望に立った海岸保全検討会(平成18年12月27日) 参考資料9 用語の解説」
 https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/kaigan_hozen/01/pdf/ref09.pdf

出典・関連情報

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