熊谷市の暑さ対策
掲載日 | 2023年9月26日 |
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分野 | 健康 / 普及啓発 |
地域名 | 関東(埼玉県熊谷市) |
気候変動による影響
埼玉県熊谷地方気象台の1898年から2022年までの気温は、100年あたり2.2℃の割合で上昇しており、日本の平均気温の上昇率(1.3℃/100年)より高くなっています。これは、地球温暖化による気温上昇に加え、都市化の進行に伴うヒートアイランド現象の影響によるものと考えられています。
また、熊谷地方気象台では、2007年に40.9℃を観測し、74年ぶりに国内歴代最高気温の記録を更新しました(注1)。また、2018年には観測史上最高気温の41.1℃を記録し、熊谷市の熱中症による救急搬送者数は202人に上りました。
取り組み
熊谷市では、全国的猛暑の2004年に猛暑日(注2)の日数が28日を記録し、マスコミで大きく発信されたことを契機に、暑さを貴重な地域資源として捉えた様々なまちづくり事業を開始しました。
2007年には、当時の日本最高気温が熊谷で観測されたことを契機として、「あつさ はればれ 熊谷流プロジェクト」(あっぱれ熊谷流)を立ち上げました。このプロジェクトは「第1次総合振興計画(平成20年度~平成29年度)」のリーディングプロジェクトに位置付けられました。また、2010年からは、暑さ対策の調査・研究及び事業の企画・立案を行う暑さ対策プロジェクトチームを結成し、市民の生命、健康を守るための体制を強化しました。
「第2次総合振興計画(前期基本計画)」においても「暑さ対策日本一の推進」をリーディングプロジェクトに掲げ、引き続き熱中症対策等の暑さ対策及び地球温暖化対策を市民及び事業者等と連携しながら推進し、市民の健康第一の安心安全な日常生活の充実を図りました。
具体的には以下の事業などが実施されました。
- トイレの中から暑さ対策事業(実施時期:平成30年度~令和3年度)
- 熱中症を注意喚起する内容が記載されたトイレットペーパー(図1)と、尿の色や爪の色の変化で脱水症状の危険度を判定できるポスターを作成
- 市役所や公民館、道の駅等の市有施設のほか、駅やスポーツ施設、「熱中症予防声かけ事業」の協力店になっている商業施設のトイレなどに配布・掲示
- 熊谷駅前広場冷却ミスト事業
- 熊谷駅の利用者へ涼しさを提供するため、駅前広場に冷却ミストを設置
- 冷却ミストは、気温・湿度・風速・天気の条件を満たしたときに自動で噴霧(図2)。
- 噴霧エリアの温度を2~3℃下げる効果
- 緑のカーテン推進事業
- 学校や幼稚園に草花を植えたり、「緑のカーテン」を作成
- 緑のカーテンとしては、ツル性の植物「アサガオやヘチマ、ゴーヤ等」をネットにはわせ、室内の暑さ対策を実施
効果/期待される効果等
熊谷市における熱中症救急搬送者の初診時における傷病程度については、埼玉県や全国の数値と比較して、中等症以上での搬送者の割合が低くなっています(図3)。このことは、市が 2008年から実施してきた様々な暑さ対策や熱中症予防の啓発により、熱中症が死に至る危険もあるということが市民に周知され、早めに対処している証ではないかと考えられます。
また、熊谷市には気象台があるため、天気予報で暑さが示されることによる全国的な知名度上昇と「暑さ対策日本一」の称号により、民間企業等からの注目度も上がってきたため、2016年からは、民間企業等と連携した啓発活動も数多く行っています。企業等と連携することで、企業の特性や強み、発信力を生かした様々な視点からの熱中症予防の呼びかけが可能となっています。
脚注
(注1)山形県において、1933年7月25日に日最高気温40.8℃を記録。
(出典:気象庁「歴代全国ランキング」https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/rankall.php)
(注2)猛暑日とは、日最高気温が 35°C以上の日をいう。
出典・関連情報