オールジャパンで国土強靱化「レジリエンス認証」制度

掲載日 2024年6月7日
分野 産業・経済活動
地域名 全国

気候変動による影響

近年、気候変動の影響による台風や水害などの自然災害が多発しています。このような気象災害(風水害等)は、民間企業にも建物の損傷や、停電、操業停止など直接的な影響をもたらしているだけでなく、広範囲における冠水によるサプライチェーンや物流の断絶等を通じて間接的な影響も及ぼしています。将来には、地球温暖化の進行により、豪雨や台風などの風水害や猛暑などの気象災害のリスクがさらに高まることが予測されており、民間企業の備え(気候変動適応)として、これらのリスクを想定したBCP(事業継続計画)を策定、活用することが期待されています。

取り組み

内閣官房国土強靱化推進室は、国土強靱化(注1)に資する民間企業等の取組を促進するため、事業継続(BCPの策定と運用)に積極的に取り組んでいる団体を認証する「国土強靱化貢献団体認証制度(レジリエンス認証)」を2016年に創設しました。本創設に伴い、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会では、「国土強靱化貢献団体の認証に関するガイドライン」(2016年2月、内閣官房国土強靱化推進室)に基づき、第三者として認証する仕組みで運用を開始しました(図1)。

レジリエンス認証取得の具体的な基準は、以下の通りです。

①事業継続(自助)

  1. 事業継続に係る方針が策定されている。
  2. 事業継続のための分析・検討がされている。
  3. 事業継続戦略・対策の検討と決定がされている。
  4. 一定レベルの事業継続計画(BCP)が策定されている。
  5. 事業継続に関して見直し・改善できる仕組を有し、適切に運営されている。
  6. 事前対策が実施されている。
  7. 教育・訓練を定期的に実施し、必要な改善が行われている。
  8. 事業継続に関する一定の経験と知識を有する者が担当している。
  9. 法令に違反する重大な事実がない。

②社会貢献(共助)※任意、かつ一項目以上を満たす。

  1. 社会貢献が定められている。
  2. 社会貢献の実績がある。
  3. 従業員の社会貢献を支援する制度が定められている。
  4. 従業員が行った社会貢献の実績がある。
  5. 上記以外の社会貢献が実施されている。

レジリエンス認証を取得すると、以下のようなメリットがあります。

  1. 事業継続に関する取組みを専門家に評価してもらうことで、取組の更なる改善につながります。
  2. 与信の向上や公的機関(国土強靱化推進室、協議会)のホームページ公表による信用力の向上につながります。
  3. レジリエンス認証ロゴマーク(図2)を名刺や広告等に付して、自社の事業継続や社会貢献への積極的な姿勢を顧客や市場に対してPRすることができます。(但し、医療法等他の法令で制限がされているものは除く。)
  4. 関東地方整備局管内の建設会社は、追加の書類を提示することにより、関東地方整備局「建設会社における災害時の事業継続力(企業BCP)認定」をあわせて受けることができます。
  5. 一部の金融機関による融資等が受けられます(注2)。

また、レジリエンスジャパン推進協議会では、次世代に向けたレジリエンス社会構築へ向けた強靱な国づくり、地域づくり、人づくり、産業づくりに資する活動、技術開発、製品開発等に取り組んでいる先進的な企業・団体を評価、表彰する制度「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靱化大賞)」を実施しています。

効果/期待される効果等

レジリエンス認証を取得した団体・企業等(注3)からは、以下のような評価が寄せられています。

  • BCPを策定する事により、不測の事態が発生した際どうすれば良いか認識できた。
  • 取得後、取引先からBCPプランの有無を問われることが増えた。
  • 定期的な訓練と見直し・改善により、個々の意識と組織対応力が向上した成果と感じている。

レジリエンス認証を取得する事によって、団体、企業における事業継続の取り組みを進め、不足の事態への迅速な対応を可能にします。さらに、企業価値の向上や企業競争力の強化、組織のレジリエンスを強めることにも繋がります。

レジリエンス認証の仕組み
図1 レジリエンス認証の仕組み
(出典:一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会「レジリエンス認証概要」)
レジリエンス認証ロゴマーク
図2 レジリエンス認証ロゴマーク(通常の認証(左)と、あわせて社会貢献に取り組んでいる団体の認証(右))
(出典:一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会「レジリエンス認証ロゴマークについて」)
図3 日本政策金融公庫のBCP融資(社会環境対応施設整備資金)のための要件確認証様式
図3 日本政策金融公庫のBCP融資(社会環境対応施設整備資金)のための要件確認証様式
(出典:一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会「日本政策金融公庫の BCP 融資の要件を満たすことの確認について」)

脚注
(注1)「国土強靱化」とは、災害に対する事前の備えとして、予断を持たずに最悪の事態を念頭に置き、人命を最大限に守り、また経済社会が致命的な被害を受けず、被害を最小化して迅速に回復する、「強さとしなやかさ」を備えた安全・安心な国土・地域・経済社会を構築することを目指す考え方。
(注2)事業継続ならびに防災目的の施設等の整備を実施している方(主に中小事業者)向けの日本政策金融公庫が行っている融資制度である。日本政策金融公庫のBCP融資(社会環境対応施設整備資金)を申請する団体は、レジリエンスジャパン推進協議会へ必要書類を提出し、確認を受けることにより要件確認証が発行される(図3)。
主な融資制度:
① 紀陽銀行「ビジネスレジリエンス対策ローン」
② 第三銀行の「事業継続サポートローン」
③ 静岡県信用保証協会災害時発動型保証予約システム「BCP特別保証」
④ 兵庫県信用保証協会の災害時発動型予約保証「そなえ」
⑤ 鹿児島県信用保証協会の保証制度「BCPサポート保証『あんしん』」
(注3)レジリエンス認証を取得する企業・団体等は、2024年3月末時点で301団体(そのうち「+社会貢献」は197団体)である。

出典・関連情報

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