気候変動による影響
ミナミアオカメムシは、熱帯から亜熱帯域に生息する昆虫で、主に穀類の子実の被害を及ぼす害虫です。三重県内では、1980年代までは東紀州地域のみに分布していましたが、地球温暖化の影響から越冬可能地域が拡大し、2006年頃から伊勢平野でも分布が確認されるようになりました。
掲載日 | 2020年7月22日 |
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分野 | 農業・林業・水産業 |
地域名 | 中部(三重県) |
ミナミアオカメムシは、熱帯から亜熱帯域に生息する昆虫で、主に穀類の子実の被害を及ぼす害虫です。三重県内では、1980年代までは東紀州地域のみに分布していましたが、地球温暖化の影響から越冬可能地域が拡大し、2006年頃から伊勢平野でも分布が確認されるようになりました。
ミナミアオカメムシには、越冬世代はコムギ、第2世代は早期水稲、第3世代はダイズというように、発生世代に応じて利用する寄主植物があります。三重県農業研究所はこの習性を活用し、本種の分布調査を行いました(図1)。
この調査結果から、メッシュ農業気象データシステム(注1)より入手した日平均気温が2.5℃未満の日数(期間:12月1日~2月28日)と、三重県病害虫防除所調査による10月のダイズにおけるミナミアオカメムシの発生量(25株あたりの成幼虫数の県平均値)から越冬可能地域の予測モデルを作成しました。この予測モデルは、メッシュ農業気象データシステムを利用することで、予測を行いたい地点を含む1㎞メッシュの越冬可能確率を算出することができます。また、越冬可能地域予測図を視覚化することも可能です(図2)。なお、予測モデルの結果の検証は、コムギを対象としたミナミアオカメムシ越冬世代の分布調査の結果を用いて比較しています。その結果、三重県における2015年の観測された越冬世代の分布と比較すると予測モデルの精度は概ね70%以上の正答率でした(注2)。
ミナミアオカメムシの越冬可能地域予測は、水稲やダイズ等における病害虫防除を目的とする発生予察情報としての活用が期待されています。
脚注
(注1)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が開発・運用を行う。https://amu.rd.naro.go.jp/
(注2)越冬可能確率0.5以上の地域を越冬可能地域とした場合。
赤:ミナミアオカメムシが確認された地点 / 白:ミナミアオカメムシが確認されなかった地点
図1 2012年、2014年のコムギにおけるミナミアオカメムシ越冬世代とダイズにおける第3 世代の分布調査結果
(出典:三重県農業研究所「ミナミアオカメムシは三重県の農業地域のほとんどで越冬でき、定着する可能性がある」)
図2 予測図作成プログラムを利用して作成した2015年の越冬可能地域予測図
(出典:三重県農業研究所「ミナミアオカメムシの越冬可能地域予測技術の開発」)