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八郎湖の水質保全対策

掲載日 2021年1月8日
分野 水環境・水資源
地域名 東北(秋田県)

気候変動による影響

秋田県の中央西部、男鹿半島の付け根に位置する八郎湖(図1)は、干拓事業により船越水道に設置された防潮水門で、日本海からの海水の浸入を防ぐことで淡水化します。徐々に富栄養化(注1)が進行し、近年はアオコ(注2)が大量に発生するなど、水質汚濁の問題が顕在化しています。
環境省による全国の公共用水域(河川・湖沼・海域)の過去約30年間(1981~2007年度)の水温変化調査では、4,477観測点のうち、夏季は72%、冬季は82%で水温の上昇傾向が確認されており、水温上昇に伴う水質変化が指摘されています(注3)。水温変化は気候変動の影響と断定できるわけではないとの研究がある一方で、年平均気温が10℃を超えるとアオコの発生確率が高くなる傾向を示す報告もあります。

取り組み

秋田県は、八郎湖の望ましい水環境及び流域の将来像として掲げた「恵みや潤いのある“わがみずうみ”」を長期ビジョンとして定め、平成19年より湖沼水質保全計画を策定しています。第1期計画(平成19年〜24年度)では、生活排水、工場・事業場排水、農地からの濁水などの発生源に係る負荷の削減対策を中心に展開しました。第2期計画(平成25年〜30年度)では、湖内での水質保全対策の検討やアオコの悪臭等による住民被害への対策に重点が置かれました。現在は令和元年~6年度を計画期間とする第3期計画が策定され、水質の汚濁状況を示すCOD(注4)、及び富栄養化の目安となる全窒素(注5)と全りん(注6)の水質及び汚濁負荷量の目標が定められています。そのために、水質保全の事業や規制に加えて、公共用水域の水質の監視が挙げられています。指定地域内の公共用水域の水質状況を的確に把握するため、定期的な水質の監視、測定を実施しています。また、生態系の保全を視野に入れて、下層 DO(注7)や透明度、TOC(注8)等の水質項目についても把握に努めています。

効果/期待される効果等

第1期計画では、流域の下水道整備率は90%に達し、水田の落水管理の取り組み面積は9割を超えるなど排出負荷の削減に一定の成果が見られました。また、閉鎖性が高く、汚濁が進んでいた西部承水路(図1)では、導水量を増加させて流動化を促進したことにより、一層の水質改善が図られました。第2期計画では、水田からの肥料の流出を抑制する施肥の効率化の取組面積は 95%に達するなど、湖に流入する負荷を一定程度削減したほか、自生する植物を活用した自然浄化施設の安定的な利用や、高濃度酸素水の供給による水質や底質への影響の検証を通じて、湖内での対策を進めていくための基盤を固めることができました。また、アオコ対策では、河川遡上防止用シルトフェンス(図2)の増加や抑制装置の導入、さらに監視カメラの設置により、悪臭防止等に一定の成果を上げることができました。なお、これらの対策により、八郎湖に流入する COD 等の汚濁負荷量はいずれも低減しています(図3)。

図1 八郎湖の位置のイメージ画像

図1 八郎湖の位置
(出典:美の国あきたネット「八郎湖の概要」)

図2 アオコ遡上防止フェンス鹿渡川のイメージ画像

 図2 アオコ遡上防止フェンス
鹿渡川(平成30年8月13日撮影)
(出典:美の国あきたネット「H30年度アオコ対策実施状況(河川遡上防止フェンス)」)

図3 八郎湖に流入すると推定される汚濁負荷量の推移のイメージ画像

図3 八郎湖に流入すると推定される汚濁負荷量の推移
(出典:秋田県 「八郎湖に係る湖沼水質保全計画(第3期)」)

脚注
(注1)窒素やりんなどの栄養塩類の濃度が増加していく現象をいう。富栄養化の状態になると植物プランクトンが異常繁殖し、アオコが発生しやすくなる。
(注2)植物プランクトンの一種である藍藻類が大量に発生し、湖や池の表面で緑色の粉をまいたような状態となったもの、またはその原因となった藍藻群集を示す。窒素とりんが豊富(富栄養)な淡水の止水域でみられ、八郎湖では夏場にみられる。
(注3)文部科学省 気象庁 環境省「日本の気候変動とその影響」(2012年度版)気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/rep130412/report_full.pdf
(注4)COD(Chemical Oxygen Demand)とは、化学的酸素要求量のことで水中の有機物を酸化剤化学的に分解する際に消費される酸素の量を表す。湖沼の水質の汚濁状況を示す代表的な指標で、この数値が大きいほど有機物が多く汚濁している。
(注5)全窒素(T-N)とは、水質汚濁の指標として用いられるもので、有機態窒素と無機態窒素の合計をいう。窒素は、植物プランクトンの増殖に欠かせないもので、りんとともに栄養塩と呼ばれ、その濃度は湖沼等の富栄養化の目安として使われる。
(注6)全りん(T-P)とは水質汚濁の指標として用いられるもので、有機態りんと無機態りんの合計をいう。りんは、植物プランクトンの増殖に欠かせないもので、窒素とともに栄養塩と呼ばれ、その濃度は湖沼等の富栄養化の目安として使われる。
(注7)DO(Dissolved Oxygen)とは、溶存酸素量の略称で、水中に溶けている酸素の量をいう。水中で消費される酸素の量が多いと、溶存酸素量は少なくなる。きれいな水ほど酸素は多く含まれ、水温の急激な上昇や藻類が著しく繁殖するときには過飽和となる。
(注8)TOC(Total Organic Carbon)とは、全有機炭素の略称で、水中の酸化されうる有機物の全量を炭素の量で示した水質指標の一つである。

出典・関連情報
環境省水・大気環境局「気候変動による湖沼における水質・生態系への影響及び適応策の検討」(平成27年7月)
https://www.env.go.jp/council/09water/y090-38/mat5-2.pdf
美の国あきたネット「八郎湖の概要」(2019年4月1日)
https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/26334
秋田県「八郎湖に係る湖沼水質保全計画(第3期)~恵みや潤いのある“わがみずうみ”を目指して ~」(令和2年3月)
https://www.pref.akita.lg.jp/uploads/public/archive_0000048564_00/八郎湖に係る湖沼水質保全計画(第3期).pdf
美の国あきたネット「H30年度アオコ対策実施状況(河川遡上防止フェンス)」(2018年9月27日)
https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/36287

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