気候変動による影響
岩手県の将来気候(2076年~2095年平均)は、現在気候(1980年~1999年平均)と比較して4℃ 程度上昇し、季節別でも4~5℃程度の上昇が予想されています(注1)。また、夏日、真夏日、猛暑日、熱帯夜の増加と、冬日、真冬日の減少も予測されています(注2)。特に夏日は60日程度の増加がみられ、冬日は70日程度の減少となっています。この夏季の気温上昇などは、電力供給のピークを先鋭化する懸念があります。また、過去30年程度の期間における短時間強雨の発生頻度は既に増加傾向にあり、将来気候においてはさらに増加することが予想され、洪水や土砂災害等の水害の発生リスクが高まることが危惧されています。
取り組み
岩手県では、再生可能エネルギーや省エネルギー技術の導入を促進し、災害にも対応できる自立・分散型のエネルギー供給システムの構築に向けた取組を進めており、その一つとして長期間の安定保存、運搬が可能という特性を活かした水素の利活用に着目しています。また、県内への水素ステーションの整備促進に向け、水素ステーションや燃料電池自動車等に関する諸状況について情報共有を行い機運の醸成を図るとともに、必要な検討等を行うため、「岩手県水素ステーション等研究会」が設置されており、公開セミナーや先進地視察会を行っています。
効果/期待される効果等
大規模な停電が起きた時には、太陽光発電で作り貯めておいた水素を使って電気や熱を取り出すことが可能です(図1)。また、停電に対応した家庭用燃料電池(エネファーム)は、ガスや水道の供給があれば、停電した時でも水素を生成して発電し、家庭に電気やお湯の供給が可能となります(図2)。他にも、水素を燃料として車載する燃料電池自動車(FCV)や燃料電池バス(FCバス)は、電気自動車(EV)に比べて高い外部給電機能(注3)があり、その機能を分散型電源として利活用することにより災害時には各家庭や避難所で非常用発電機として使用できるほか、企業のBCP(注4)対応に有効であると期待されています(図3)。このように、自立・分散型エネルギー供給電源として水素を利活用することにより、既存の電力系統(注5)を補完することが可能となり、災害に強いまちづくりにもつながると期待されています。
脚注
(注1)気象庁によるIPCCのRCP8.5シナリオに基づくシミュレーション結果(気象庁,2017)を基に作成されたものである。
(注2)気象用語の定義:夏日(日最高気温25℃以上)、真夏日(日最高気温30℃以上)、猛暑日(日最高気温35℃以上)、熱帯夜(日最低気温25℃以上)、冬日(日最低気温0℃未満)、真冬日(日最高気温0℃未満)
(注3)自動車内の電力を外部に供給する機能をいう。
(注4)事業継続計画の略称(Business Continuity Plan)で、災害などリスクが発生したときに重要業務が中断しないこと。また、万一事業活動が中断した場合でも、目標復旧時間内に重要な機能を再開させ、業務中断に伴うリスクを最低限にするために、平時から事業継続について戦略的に準備しておく計画をいう。
(注5)発電や送電、あるいは変電や配電のために使う電力設備がつながって構成するシステム全体のことをいう。