「熱中症対策」:6月から「猛暑」がはじまる時代がやってくる?国立環境研究所・岡 和孝室長に聞く、2025年の気候と熱中症への備え
地球沸騰化時代の到来。2025年は観測史上最高の暑さが生活のあらゆる範囲に影響
国立環境研究所気候変動適応センターは、2025年の気候の特徴と、私たちの暮らしの中ですでに現れている気候変動の影響、適応策を「暮らしに関する気候変動適応レポート2025」および「研究者インタビュー:私たちが取り組むべき適応策とは」として整理しました。
気候変動の影響は、健康、水資源、スポーツ、食生活、生態系など様々な分野で、すでに私たちの生活に現れています。その影響にそなえる「適応アクション」を広めるため国立環境研究所は、2025年6月より「#適応しよう」キャンペーンを開始しました。
こうした中、2025年は、気候変動の影響、気候の極端化、暮らしの変化を改めて実感する年になりました。例えば、2月上旬の北海道などでは観測史上最も多い降雪量が観測された一方、日本の夏(6月〜8月)の平均気温は統計開始以降歴代1位の高温となった他、5~9月の熱中症による救急搬送人員は初めて10万人を超え、過去最多となりました。また、7月の東北日本海側と北陸地方では降水量が記録的に少なくなるなど、これら気候変動に伴う高温や水不足の影響で作物の不作などが発生しました。
2023年、世界的な記録的猛暑を受け、国際連合のアントニオ・グテーレス事務総長は「『地球沸騰化の時代』が到来した」と警告しました。猛暑や豪雨が当たり前になる時代は遠い未来ではなく、今すでに生活に影響を及ぼしており、将来にわたり気候変動の影響にそなえ、快適に暮らしていくための「適応アクション」の重要性はより高まっています。
2025年の気候の特徴と生活への影響(要点)
- 全国各地で統計開始以降1位となる記録的な猛暑(6月〜8月)および少雨(7月)を観測
- 熱中症による救急搬送人員が過去最多の10万人超(5月〜9月)
- 北海道で12時間に120cmの降雪量を観測し、国内の観測史上最多記録を更新(2月)
- 少雨の影響により「国土交通省渇水対策本部」が8年ぶりに設置(7月)
- 高温や干ばつの影響で、一部の野菜や農作物に出荷量の減少や生育不良、価格上昇が発生
2025年の気候の特徴と生活への影響(詳細)
極端な気象現象や高温、水資源、食など生活への影響が広がる
1. 夏(6月〜8月)の平均気温が観測史上最高
日本の夏の平均気温は、基準値(1991〜2020年の30年平均)に比べて+2.36℃高く、統計開始(1898年)以降で最も高い値となりました。また、全国153の気象台などのうち132地点で、夏の平均気温が観測史上1位の高温を記録しました。
出典:気象庁「2025年夏(6月〜8月)の天候」
2. 7月に各地で少雨、東北日本海側と北陸で歴代最少
7月は日本各地で降水量が少なくなりました。特に東北日本海側と北陸地方では、1946年の統計開始以降、7月として最も少ない降水量を記録しました。
3. 国内の観測史上最も多い降雪量を北海道で観測
2月上旬、低気圧の影響により、帯広(北海道)などで12時間に120cmの降雪を観測し、国内の観測史上最多記録を更新しました。一般に、地球温暖化の進行に伴い降雪や積雪は長期的には減少すると見込まれています。一方で、気温や海面水温の上昇により大気中の水蒸気量が増えることにより降水量が増加し、気温の低い地域では短時間に大量の降雪が発生する可能性があると指摘されています。
4. 熱中症による救急搬送が過去最多
記録的な高温の夏となった2025年は、生活のあらゆる範囲に影響をもたらしました。熱中症警戒アラートの発表回数は過去最多となり、5月から9月までに全国で熱中症により救急搬送された人数は累計100,510人に達し、調査を開始した2008年以降で最も多い数字となりました。
5. 少雨の影響による渇水
2025年夏は少雨の影響により各地で渇水が発生し、2017年以来8年ぶりに国土交通省の渇水対策本部が設置されました。特に稲の出穂期と重なったことから、農業用水(かんがい用水)の確保に向けた支援が行われました。
出典:国土交通省 「令和7年夏渇水の状況について」
6. 食生活への影響
高温や干ばつの影響により、一部の野菜では生育不良や出荷量の減少が見られ、価格上昇など食生活への影響が生じています。また日本近海では平均海面水温の上昇に伴い魚介類の分布が変化し、水揚量の減少や漁獲される魚種の変化が起こっています。例えば、高水温を好むブリは、1990年代以降漁獲量が増加しており、近年は北海道や太平洋北部・中部での漁獲量が増えるなど、分布の変化が見られます。
出典:
農林水産省 「野菜の生育状況及び価格見通し」
水産庁 「海洋環境の変化による水産業への影響と対応」
2025年に見られた「暮らしの中の適応策」とその広がり
記録的な暑さを背景に、2025年は気候変動の影響に備える「適応策」が、暮らしの中でより広まった年でもありました。
1-1 暑さ対策の浸透:日傘の普及
東京都の調査によると、歴代最多の猛暑日を記録するなど厳しい暑さとなった東京では、都民の約7割が日傘を利用しています。男性の利用率も44%に達しており、そのうち44%が今年から利用を開始するなど、性別を問わず日傘の利用が広がりつつあります。
出典:東京都 「日傘利用に関する8,353人都民アンケート調査」
1-2 暑さ対策の浸透:スポーツにおける暑さ対策
2025年は、『スポーツ基本法』に初めて気候変動や厳しい気候条件を考慮する必要性が盛り込まれた画期的な年となりました。夏の甲子園で二部制が導入されるなど、スポーツ分野でも暑さ対策の取り組みが進んでいます。
また、東京2025世界陸上では、大会期間を2019年ドーハ大会に次いで2番目に遅い9月中旬に設定し、競技スケジュールをモーニングセッションとイブニングセッションに分けることで、日中の競技を回避しました。さらに、会場ではアイスバスやスポットクーラーの設置、氷やアイスタオルの提供など、アスリートや観客の暑さ対策も行われました。
2 食品ロスへの対応
食品ロスの削減は、温室効果ガス排出を抑える「緩和」と、気候変動の影響に備える「適応」の両面で重要な取り組みです。大阪・関西万博では、会場内のパビリオンや飲食施設で食べきれる量での提供を行うほか、ナッジを活用した来場者向けの啓発活動を実施しました。また、廃棄されそうな食品と購入者のニーズをマッチさせるフードシェアリングサービス「万博タベスケ」を活用するなど、食品ロス削減に取り組みが進められました。
研究者インタビュー:私たちが取り組むべき「適応」とは
近年、夏の厳しい暑さや激しい雨など、気候変動の影響を身近に感じる機会が増えています。内閣府が2025年に実施した「気候変動に関する世論調査」でも、多くの人がこうした変化を実感していることが明らかになりました。一方で、これらの影響に備える「気候変動適応」を知っていると答えた人は11%にとどまっています。
具体的な取り組みとして、「塩分・水分補給やエアコン使用による熱中症対策」は82.1%が実践している一方、「水災害リスクや避難経路の事前確認」は40.4%、「高温の影響を受けた規格外野菜の購入」は24.9%、「蚊が媒介する感染症(デング熱など)の予防」は20.3%、「雨水利用や節水など水資源の保全」は18.3%にとどまっています。気候変動の影響が続く中、私たちの暮らしを守るための「適応」の取り組みをさらに広げていくことが求められています。
出典:内閣府 「気候変動に関する世論調査」
本レポートの公表に合わせ、国立環境研究所気候変動適応センターの研究者5名による「熱中症対策」「水資源」「スポーツ」「米」「生態系」の各分野に関するインタビューを実施し、記事を公開しました。記事の中では、長期的なトレンドに基づいた適応の重要性を分かりやすく伝えます。
「水資源」:豪雨が増えているのに水が足りない?国立環境研究所・花崎 直太室長に聞く、2025年の気候と水資源のこれから
「スポーツ」:世界陸上から甲子園まで…スポーツが迎えた「ターニングポイント」国立環境研究所・大山 剛弘研究員に聞く、気候変動とスポーツのこれから
「米」:お米の品種が群雄割拠!戦国時代がやってきた?国立環境研究所・増冨 祐司室長に聞く、2025年の気候とお米の未来
「生態系」:効率重視とは異なる視点も大切にしよう!私たちが選びたい「グリーンインフラ」という新しい選択。国立環境研究所・西廣 淳副センター長に聞く、これからのエコシステム
「#適応しよう」キャンペーンについて
国立環境研究所気候変動適応センターでは、「地球沸騰化時代の生き方改革」として、現在および将来の気候変動の影響に備え、快適に暮らしていくための「適応アクション」を国民一人ひとりに広げることを目的に、「#適応しよう」キャンペーンを2025年6月26日(木)よりスタートしました。
本キャンペーンでは、「ライフスタイル」「食」「住まい」「スポーツ・レジャー」「その他」の5つのカテゴリーからなる15の「適応アクション」を紹介しています。また、本キャンペーンの趣旨に賛同いただけるパートナーも募集しています。ご賛同いただいた皆さまには、ロゴ・バナー・リーフレットなどのPRツールを無償で提供しています。CSR・SDGsの発信やブランド価値向上などにぜひご活用ください。
気候変動適応の取り組みに賛同いただける企業・団体・自治体など、幅広いみなさまのご参加をお待ちしています。今後も「#適応しよう」キャンペーンを通じて、気候変動適応に関する情報発信を進めていきます。

【キャンペーンに関する問い合わせ】
国立研究開発法人国立環境研究所 気候変動適応センター
project-adpt(末尾に”@nies.go.jp”をつけてください)