気候変動適応に向けたガイダンス(全体の概要)

本コンテンツは、気候変動リスクとその適応への体系的な理解の促進、またそれらを基にした自社での具体的な適応計画立案や主導するための実践的な行動への移行を支援します。

【STEP1】
適応策検討・実施に向けた土台の準備

適応策検討の第一歩として、「目的(方針)の明確化」を行い、検討・実施に向けた土台の準備として、対象範囲・期間・実施体制について整備を行います。
このSTEPでは、適応策の検討・実施に向けてまず整理すべきことと、その内容について具体的に示します。

(例)「気象災害(水害)等に対して国内の事業継続性を高める」
  「気候変動(高温)による作業環境悪化の影響を段階的な施策実施により最小化する」
  「気候変動に伴い変化する市場ニーズを反映した商品開発を行い、適応ビジネスをつかむ」

このために、自社がこれまで経験した気候変動影響や、今後重大な影響が想定される事業活動や地域を踏まえ、対象範囲や期間を検討・整理します。必要に応じて、事業活動や影響分野を限定して検討することも一案です。
これらを整理することで、「目的(方針)の明確化」を行うことができます。

対象とする範囲
  • 地域(国内、海外拠点など)
  • 事業範囲(一部事業か全事業か)
  • 企業範囲(自社のみ子会社、取引先、物流ルート等も含むか)
  • その他(原材料、労働環境など)

〇検討参考例

対象とする期間
  • 影響分析の対象(何年先の影響分析を行うか)
  • 適応策の実施期間(何年間で取組む適応策を検討するか)

〇検討参考例

実施体制
  • 事業継続マネジメントや環境マネジメントシステムなどの既存体制の活用検討
  • 社外も含めた幅広い組織の巻き込み
  • 地域金融機関や中小企業支援団体の支援獲得など

〇体制構築の参考例

(図の出典:環境省(2023)「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ 2022版」)

ここまでの内容について「チェックシート」にて確認してみますか?

STEP1チェックシート

適応策を検討するための目的・方針を明確化

1

適応策を検討するにあたっては、適応に取り組む目的(事業継続性の向上、悪影響の最小化、機会の創出など)を明確にする必要があることを知っていますか?

解説

適応策検討の出発点として、「何のために適応に取り組むのか」を明文化や文書化することで整理し、社内で共有することが重要です。
これにより、社内全体で適応に取り組む必要性について認識を統一することにもつながります。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP1:適応策検討・実施に向けた土台の準備をご覧ください。
2

適応策の検討にあたっては、優先順位の定義や社としての取組方針(気候変動を経営上のリスクとして捉える、適応を新たな成長機会として捉える)などの設定が重要であることを知っていますか?

解説

適応策を検討する目的を踏まえ、どのような考え方・進め方で適応を行うか(基本方針)を定めます(例:国内拠点を優先する、重要課題から段階的に進める、など)。これにより、次に行う適応策を検討する対象範囲・期間・体制の検討にスムーズにつなげることができます。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP1:適応策検討・実施に向けた土台の準備をご覧ください。
3

適応策の検討にあたっては、「まずどの気候変動影響を重視するか」(例:水害対策、暑さ対策など)を定めることが重要ということを知っていますか?

解説

初めて適応策の検討に取組む場合は、対象とする事業活動(主力製品の事業部門や、調達、製造、物流などの業務プロセスなど)や、対象とする影響(水害、猛暑など)を絞り込んでスタートし、次年度以降に範囲を拡大していく「段階的な進め方」が推奨されています。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP1:適応策検討・実施に向けた土台の準備をご覧ください。
4

実効性のある適応策を策定するためには、検討対象とする具体的な事業範囲や地域・拠点(国内・海外、事業所・工場・店舗など)を定める必要があることを知っていますか?

解説

対象とする地域や拠点を明確化することで、どのような影響を把握する必要があるか、どこに対策を講じるとよいかを整理しやすくなります。また、現地の事情に詳しい担当者など、ヒアリングすべき対象者が明確になります。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP1:適応策検討・実施に向けた土台の準備(対象とする範囲)をご覧ください。
5

実効性のある適応策を検討するためには、生産・物流・販売・調達や主要事業・全事業など、検討対象とする事業活動をあらかじめ設定する必要があることを知っていますか?

解説

これまでの経験や、今後重大な影響が想定される事業活動であるかを踏まえて対象とする事業の範囲を検討します。対象とする事業活動を決めることで、自社のバリューチェーンのどの部分(調達・製造・物流など)の情報を集め、対策を打つべきかが整理しやすくなります。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP1:適応策検討・実施に向けた土台の準備(対象とする範囲)をご覧ください。
6

適応策の検討にあたっては、「いつの時点までの将来を考慮するか」という検討対象とする期間の明確な設定が重要であると知っていますか?

解説

いつの時点までの将来を検討の対象とするかを決めることで、収集する情報の範囲や対策のレベルが整理しやすくなります。
期間は一律ではなく、例えば「事業全般のリスクであれば中期経営計画の期間(3年程度)」、「施設への影響であれば施設の耐用年数(数十年)」、「中核事業であれば2030年や2050年といった長期」など、目的に応じて自社に合った時間スケールで考えることが重要です。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP1:適応策検討・実施に向けた土台の準備(対象とする期間)をご覧ください。
7

適応を進めるためには、社内の担当者(窓口)や関係部署を含む推進体制を整えることで、社内の理解や協力を得やすくなり、意思決定を進めやすくなると知っていますか?

解説

適応の検討は、様々な部門が関係する部門横断的な取組になることもあります。そのため『●●部の○○がとりまとめる』など、誰が取りまとめ、どの部門の誰を巻き込むかを明確にしておきます。これが社内調査や意思決定を行う基盤となり、検討が進めやすくなります。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP1:適応策検討・実施に向けた土台の準備(対象とする実施体制)をご覧ください。
8

BCP/BCM(事業継続計画/事業継続マネジメント)や環境マネジメントなど、すでにある社内の体制と今回の適応策の検討(適応の取組)との関係を確認することで、効率的な適応策の検討や実施につながることを知っていますか?

解説

既存の仕組に対して、適応の検討を組み込める部分がないかを確認します。これにより、すでにある会議体(経営会議、部門会議などの話し合いの場)・PDCA(計画→実行→確認→改善の流れ)・文書体系(社内ルールや計画書、マニュアルなどの書類のまとまり)を活用した、効率的な適応策の検討・実施を進めることにつながります。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP1:適応策検討・実施に向けた土台の準備(対象とする実施体制)をご覧ください。

*解説に掲載する関連図表がないことを示す。

【STEP2】
気候変動影響の整理

ここでは、これまでに自社に発生した気候変動影響の経験と、将来の気候や影響の予測情報を収集・整理して、自社の具体的な気候リスク(物理的リスク)と機会を特定します。

≪STEP2-1≫
 これまでに経験した気候変動影響等の収集・整理

社内記録、関係部門へのアンケートやヒアリングを通じ、自社でこれまでに経験した気候変動の影響と思われる事案を幅広く収集します。様々な部門から実務的な情報を得ることが重要です。

表 1. 収集の例
影響が生じた日 場所 影響の内容 原因と考えられる気象現象等 担当部門
2018/9/4 A工場 工場敷地内の浸水(最大浸水深約20cm) 台風21号 生産部
2020/7/10 B工場 記録的豪雨に伴い、製品Kの原材料の供給停止、製品製造が3日間停止 集中豪雨 生産部
2023/8/5 C工場 職員が熱中症により救急搬送 猛暑 生産部
2023/8 本社 猛暑に伴い、製品Xの売上が前年比30%増 猛暑 営業部
急性影響と慢性影響

気候変動の影響は急性影響と慢性影響に区別することが可能です。情報を収集する際には、気象災害などの短期的な急性影響だけでなく、長期的・広範に影響を及ぼす慢性影響も含めて、影響の大小を問わず幅広く整理することが重要です。

急性影響とは 気象災害等に伴う(短期的な)影響
(例)大雨による事業所の浸水被害、勢力の強い台風や強風、高潮の被害、極端な猛暑など
慢性影響とは 気候パターン(雨の降り方や平均気温の変化)などがゆっくりと変化することに伴う影響
(例)気温の上昇に伴う夏季の空調費用の増加や労働生産性の低下、農作物の生育不全、降水パターンの変化に伴う水資源の影響など
業種別の気候変動影響の例

影響は業種によって異なります。一方で、業種によらず想定される影響も数多くあります。
業種別に想定されている影響例として下表やA-PLATのインフォグラフィック(事業者編)、環境省(2026年2月)第3次気候変動影響評価報告書などから確認が可能です。

業種 影響の一例(他の影響が生じる可能性も十分にあります)
業種共通 急性影響 ・土砂・洪水災害、高潮・高波、強風などによる立地・販売・経営への影響
・作業員、従業員の熱中症リスク増加
・輸送ルートの寸断などのサプライチェーンへの影響
・新たなビジネス機会の創出
慢性影響 冷暖房需要の変化
製造業 急性影響
/慢性影響
農作物の品質低下や収量低下による最終製品の品質等への影響
商業 慢性影響 季節性商品の需要変化
金融・保険 急性影響 保険金支払額の増加
観光業 慢性影響 自然資源(砂浜、雪山、海岸等)を活用したレジャーへの影響
建設業 急性影響
/慢性影響
設計基準の見直し
医療 急性影響 断水や濁水による人工透析等への影響
(出典:環境省(2026年2月)「第3次気候変動影響評価報告書」を元に作成)

≪STEP2-2≫
 将来の気候変動影響に関する情報の収集

自社の事業活動への影響が想定される将来の気候変動影響に関する情報を収集します。
将来の気候変動影響に関する情報は、以下の「気候変動の観測・将来予測データ」にまとめています。自社への影響を詳細に分析する必要がある場合には、独自に将来予測を評価することも選択肢として考えられます。

気候変動影響評価報告書

≪STEP2-3≫
 将来に想定される気候リスク(物理的リスク)と機会のリストアップ

収集した将来予測情報を踏まえ、自社が想定する具体的な気候リスク(物理的リスク)と機会をリストアップします。
その際には、部門横断の会議やワークショップの開催、研究機関やコンサルタントとの連携など、幅広い部門・専門家を巻き込んだ検討を行います。
多様な視点を取り入れることで、見落としが少なくなるだけでなく、新たな気づきや洞察が得られ、より実効性の高いリスク・機会の把握につながります。

図 4. 部門横断の会議イメージ
図 5. 研究機関やコンサルタントとの連携のイメージ

社内記録、関係部門へのアンケートやヒアリングを通じ、自社でこれまでに経験した気候変動の影響と思われる事案を幅広く収集します。様々な部門から実務的な情報を得ることが重要です。

自社のビジネスモデルと照らし合わせ、「暑熱」、「気象災害の頻発・激甚化」、「年間を通した平均気温の上昇」など、影響の要因ごとに収集した情報から起こりうる影響を検討して整理していくことが重要です。
整理の際は、収集した情報と下表のリスクの例と機会の例を参考に、自社に当てはまるもの、今後起こりえるものをリストアップしましょう。

表 4. シナリオ分析による気候リスク・機会の影響評価結果の整理イメージ
リスク・機会の要因 ⚠️ 想定されるリスク例 💡 想定される機会例
暑熱
  • 屋外労働環境悪化による技能労働者不足の深刻化
  • 屋外作業者の熱中症等の健康被害の増加、作業者の健康管理に伴うコスト増
  • 屋外作業効率低下、工期遅れ
  • 温度が適切に管理されていない工場や作業場での労働生産性の低下
  • 外出手控えによる小売業等における売上減少
  • 断熱・遮熱効果を有する製品群の売上拡大
  • 冷感商品・化粧崩れ防止商品の需要増
  • 省人化・遠隔化推進によるデジタル需要増加
気象災害の頻発・激甚化
  • 工場等の被災・操業困難、それによる売上減少、工期遅れ、復旧コストの増加
  • 設備強靭化のための投資の増大
  • サプライヤーの被災による原料・資材・労務等の調達困難
  • 事業保証やレピュテーションリスク(風評被害)
  • 洪水リスクの増加による不動産の資産価値の減少
  • 損害保険料の増加
  • 災害時に備える設備のニーズ拡大
  • 災害に強い住宅ニーズの拡大
  • 防災・減災に関連するインフラ関連製品・サービス需要の拡大
  • 河川や道路を対象としたセンシングソリューションの売上増加
  • 災害発生地域での画像診断のニーズ増加
  • 被害低減に向けた社会・公共システム投資の増加
  • 企業データの高度な安全確保を可能とするクラウド化されたデータセンターの活用の加速化
平均気温の上昇
  • 原材料に係る作物等の生育不良、対策に係るコストの増加
  • 感染症の発生頻度、時期、エリアの変化
  • 空調等のエネルギーコストの増加
  • 製品の耐熱要求の高温化
  • 新たな感染症を含む検査薬・ワクチンの需要増加
  • コールドチェーン事業の拡大
降水・気象パターンの変化
  • 病虫害等の発生、森林植生の変化等による木材調達コストの増加
  • 水リスク(水質悪化、渇水など)の増加、水確保コストの増加
  • 水リスクの高いエリアでの対応製品の売上増加
  • 世界での飲料用水等の需要増加による殺菌消毒剤の売上増加
  • 新規農薬の開発機会の増加
  • 対応策構築に向けたコンサルティング事業へのニーズ増加
(出典:環境省「改訂版 民間企業の気候変動適応ガイド」を元に作成)

≪STEP2-4≫
 気候リスク(物理的リスク)と機会のとりまとめ

具体的な気候リスク(物理的リスク)および機会をリストアップした後は、STEP2-1~2-3で整理した事項に基づき、全体を取りまとめます。
なお、出典には、STEP2-2にて将来予測の整理に用いた参照資料を記載します。
下表のようなフォーマットにて整理すると、「過去に起きたこと」「将来の科学的見通し」「自社にとって何が問題か/どんな機会か」を確認できます。

表 5. 自社が想定する具体的な気候リスクと機会の取りまとめイメージ
【STEP2-3】
リスク/機会
【STEP2-1】これまでに経験した影響 【STEP2-2】関連する将来予測 【STEP2-3】想定される気候リスク・機会 出典(STEP2-2の根拠)
リスク
  • 工場敷地内の浸水(最大浸水深約20cm)
  • 短時間強雨の頻度は2℃シナリオでも1.3倍
  • 電源施設が冠水して工場機能停止
  • 毎年の洪水対応費用が増加
  • 従業員が出社できない
  • 気象庁「関東甲信地方のこれからの気候の変化」
リスク
  • 記録的豪雨に伴い、製品Kの原材料の供給停止、製品製造が3日間停止
  • 短時間強雨の頻度は2℃シナリオでも1.3倍
  • 幹線道路が冠水し物流が停止
  • 従業員が出社できない
  • 気象庁「関東甲信地方のこれからの気候の変化」
リスク
  • 職員が熱中症により救急搬送
  • 21世紀末に気温が1.4~4.5℃上昇
  • 職員の熱中症の増加
  • 高温のため作業能率が低下
  • 夏場の作業可能時間の短縮
  • 日本の気候変動2025
機会
  • 猛暑に伴い、製品Xの売上が前年比30%増
  • 平均気温が1℃上昇するごとに製品X関連製品の売り上げが15%増
  • 製品Xの売上増
  • 暑熱関連製品の売上増
  • (自社独自推計の結果)
(出典:環境省「改訂版 民間企業の気候変動適応ガイド」を元に作成)

ここまでの内容について「チェックシート」にて確認してみますか?

STEP2チェックシート

自社に関連する影響の整理

9

これまでに自社が経験した大雨、渇水、極端な暑さや平均気温の上昇など、気候・天候に関連する影響(被害)を収集し整理することも、適応策の検討の一部であると知っていますか?

解説

被害や影響の大小を問わず、社内記録(施設の補修費用、操業停止期間、原材料価格等の高騰など)の確認や関係する部署へのヒアリングを通じて、これまでの影響(いつ・どこで・何が起きたか)を幅広く収集します。自社が経験した被害や影響の整理を通じて、これらに対する具体的な適応策の検討を進めることができます。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP2-1:これまでに経験した気候変動影響等の収集・整理をご覧ください。
10

自社への影響を把握する一つとして、台風、豪雨、極端な猛暑などの気象災害に伴う急な災害による影響(急性影響)を洗い出すことが重要であると知っていますか?

解説

短期的・集中的に発生する気象災害を把握することは重要です。豪雨による事業所の浸水被害、勢力の強い台風による強風や高潮の被害、極端な猛暑などにより、自社が受ける突発的な影響(急性影響)について、これまでに自社が経験した事案を影響の大小を問わず幅広く整理することが基本となります。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP2-1:これまでに経験した気候変動影響等の収集・整理(急性影響と慢性影響)をご覧ください。
11

影響を整理する際に、台風・豪雨などの急性影響だけでなく、暑さ・空調費増などの「じわじわとした変化」(慢性影響)も含めて整理する必要があることを知っていますか?

解説

台風・豪雨などの急性影響のみを整理すると、重要な影響を見落とす可能性が高まります。気温上昇による原材料の収量変化など広範な、また長期的な変化(慢性影響)も一緒に整理することで、見落としを減らすことができます。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP2-1:これまでに経験した気候変動影響等の収集・整理(急性影響と慢性影響)をご覧ください。
12

過去に経験した影響について、それらに関係する将来の気候やそれらの将来の影響予測情報(例:短時間強雨の増加、猛暑日の増加など)があるかを調べ、その結果を整理することが、適応策の検討にとって重要であると知っていますか?

解説

過去に起きた影響に関連する気象現象や、影響の将来予測の情報について、公開情報などから収集します。将来の気候がどのように変わるかを把握することで、今の影響が悪化する可能性を検討できます。この際、情報を取得した場所(URLや資料名など)を出典として整理しておきます。これにより、説明の際や後工程における適応策の更新作業などを円滑に進めることができます。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP2-2:将来予測・各分野の影響に関する情報の収集をご覧ください。
13

気候変動による自社への物理的リスクだけでなく、ビジネスの機会についてもリストアップし、整理する必要があることを知っていますか?

解説

自社の物理的リスクと商機等につながるビジネスの機会をリストアップします。この際に「部門横断の会議やワークショップ」「研究機関との連携」など、幅広い部門を巻き込み、リスクだけでなく機会も同時に洗い出すことで、前向きかつ戦略的な施策検討につながります。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP2-3:将来想定される気候リスク・機会のリストアップをご覧ください。

*解説に掲載する関連図表がないことを示す。

【STEP3】
気候リスクの評価と重要課題の特定

ここでは、気候変動影響が事業に与える影響度を費用・売上などの財務面や戦略面から評価します(気候リスク・機会の評価)。評価結果を整理し、優先して適応策を講じる重要な課題を特定します。

≪STEP3-1≫
 気候リスク・機会の評価と重要課題の特定

STEP2で整理したそれぞれの気候リスク・機会ごとに、「事業への影響の大きさ」を評価・整理します。下の表6では、重要度評価に用いる観点(評価軸)と、関連する影響の代表例を整理しています。

表 6. 物理的リスクと機会の重要度評価の観点
重要度評価の観点 影響の代表例
財務影響の大きさ
  • 気候関連リスクにより中核事業が中断する
  • 重要な原材料の入手が困難になる
  • 収益の大幅な減少/拡大が想定される 等
事業戦略との関連性
  • 自社の主要な事業や、今後中核を担うことが期待される事業領域に影響する
  • 戦略的拠点やビジネスモデルに影響する 等
ステークホルダーへの影響度
  • 社会的に重要な資源や製品等の安定供給に影響する
  • 操業する地域の気候変動適応等にも貢献する
  • 従業員や顧客、周辺住民等の生命を脅かす
  • 生態系等への重大な影響が予想される 等
顕在化の可能性
  • すでに影響の兆候が見られ、もうすぐ顕在化すると考えられる
  • 天候や天気の影響を受けやすい場所にある
  • 農作物や水産物などを原材料としている
  • 大量の水を必要とする工程や事業があり、渇水による事業中断等が見込まれる
  • (将来の改修等が困難な)長寿命の資産を保有している 等
(出典:環境省「改訂版 民間企業の気候変動適応ガイド」、環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」を元に作成)

気候関連の財務情報開示では、気候リスク等に伴う調達費用の増加や売上の低下といった財務影響が重視されます。
このため、重要度評価の観点としては主に財務影響が選択され、加えて、自社の主要事業や戦略への影響を踏まえ、事業戦略との関連性が評価軸として用いられる場合もあります。

≪STEP3-2≫
 重要度評価を一覧表で「見える化」する

評価した気候リスク・機会は、一覧表に整理して重要度を「見える化」します。
表7を参考に、少なくとも以下の項目を整理します。

    (例)
  • リスク/機会の区分
  • 想定される気候リスク・機会の具体的な内容
  • 対象となる拠点(本社・工場・営業所・サプライチェーン など)
  • 重要度(大/中/小 など)
  • 評価の根拠・備考(なぜその重要度としたか)

この一覧は、この後の「重要課題の特定」やSTEP5の「適応策の検討」の出発点になります。

表 7. 気候リスク・機会の重要度評価の整理イメージ
リスク/機会 想定される気候リスク・機会 対象となる拠点 重要度 備考・評価の根拠等
リスク 洪水により電源施設が冠水して工場機能停止 工場 中
リスク 毎年の洪水対応費用が増加 工場 中
リスク 洪水等の自然災害により従業員が出社できない 本社・営業所・工場 中
リスク 幹線道路が冠水し物流が停止 サプライチェーン 大 自社内では対処できないため、対応の検討が必要
リスク 職員の熱中症の増加 工場 中 屋内は空調により対処可能
リスク 高温のため作業能率が低下 本社・営業所・工場 小 空調により対処可能
リスク 夏場の作業可能時間の短縮 工場 小 空調により対処可能
機会 製品Xの売上増 本社 大

≪STEP3-3≫
 自社にとっての「重要課題」を特定する

気候リスク・機会について、重要度を評価した結果等を踏まえ、自社が優先的に対応すべき「重要なリスク」と「重要な機会」を特定します。特定の際には、次のような観点から選別します。

  • 既にその課題に直面しているもの
  • 気候変動により影響の悪化が想定されるもの(発生可能性も含む)
  • 寿命の長いインフラ等に影響を与えるもの
  • 事業活動に不可逆的な影響を及ぼす可能性があるもの

一部の企業では、リスクを発生可能性と重要度の軸で評価・可視化したリスクマップを作成し、その結果から「重要なリスク」「重要な機会」を特定しています。

図 6. リスクマップのイメージと重要なリスク・機会の例
気候リスク・機会について発生可能性と影響度を評価し、リスクマップ上に配置します。マップの右上に配置されたものほど発生可能性が高く、影響度が大きいため、特に重要なリスク・機会とみなせます。

ここで特定した重要課題が、次のSTEP4以降で整理する「適応策(対策)の対象」となります。
重要課題の特定は、経営資源の効果的な配分、事業継続性の向上とビジネス機会の獲得につなげることができます。

ここまでの内容について「チェックシート」にて確認してみますか?

STEP3チェックシート

リスクと機会から自社の重要課題を特定

14

気候変動による自社への物理的リスクとビジネスの機会の中で、自社にとってどれがより重要かを判断するために、「コストや売上への影響」、「事業への影響」などの観点(評価軸)を決めることが重要であることを知っていますか?

解説

例えば『売上への影響が大きいもの』『コスト高となる影響』『自社の戦略上の重要性』など、評価の基準をあらかじめ定めておくと、重要度の判断がしやすくなります。基準を定めることで、評価のばらつきを抑えることもできます。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP3-1:気候リスク・機会の「重要度」評価の観点をご覧ください。
15

観点(評価軸)に沿って、リスク・機会ごとに「重要度(大・中・小など)」を評価し、一覧表などにして「見える化」することが、検討のための優先順位の把握につながることを知っていますか?

解説

リスク・機会の一つひとつに対して、同じ評価軸で大・中・小などの評価を行い、可視化(見える化)します。評価の大小関係は、優先的に対応すべきリスク・機会はどれかという検討にとって重要です。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP3-2:重要度評価を一覧表で「見える化」するをご覧ください。
16

整理した「リスク/機会の内容」の一覧から「特に優先して対応したい重要課題(重要なリスク、重要な機会)」を特定することが重要であることを知っていますか?

解説

全てのリスク/機会に同時に対応することは難しい場合が多いため、『まずどれから対応するか』を決めることが大切です。すでに直面している課題や、影響が大きくなることが想定されるものなどを優先して選別し、ここで特定した重要課題が、特に優先して適応策の整理・検討を行う対象となります。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP3-3:自社にとっての「重要課題」を特定するをご覧ください。

*解説に掲載する関連図表がないことを示す。

【STEP4】
気候変動影響への適応策の実態整理

特定した気候リスク・機会に対して、実施済み・実施予定・未実施など適応策の実施状況を整理します。また、ヒアリングや競合他社の状況も確認し、その実態を一覧表などで確認します。

≪STEP4-1≫
 実態整理の手順

これまでのSTEPで特定した「重要な気候リスク・機会」には、すでに十分な対策が講じられているものもあれば、重要と評価されたものの、対策が未着手の状態にあるリスクも存在します。
ここでは、これら「重要な気候リスク・機会」について、下記に図解する実態整理の手順を参考に対策状況を可視化します。
この整理により、追加対応の要否や、対策実施の優先順位を判断できるようになります。

≪STEP4-2≫
 実態整理の進め方

STEP3で評価した「重要度評価済みのリスク・機会」については、関係する部署・拠点ごとに、現在の適応策(有無・内容)をヒアリングや資料調査により把握することが望まれます。
また、適応策を「実施していない」ことを明確に整理することも重要です。さらに、競合他社の取組事例や状況を参照することで、自社の立ち位置を把握し、課題への対応策を検討する際の示唆を得られる場合があります。

表 8. 将来の気候変動影響と適応策実施状況の整理例
事業所等 担当部門 影響要因 想定される影響 適応策の実態
A工場 総務 台風 従業員が出社できない 無し
B工場 製造 豪雨 電源施設が冠水して工場機能停止 土嚢の準備
B支店 販売 豪雨 幹線道路が冠水し物流が停止 無し
C工場 総務 洪水 毎年の洪水対応費用が増加 警戒レベルの変更
D営業所 管理 暑熱 高温のため作業能率が低下 無し
本社 営業 気温 季節商品の売上の減少 長期気象予報の活用
本社 商品開発 市場変化 気温変化による消費者行動変化 無し
(出典:環境省「改訂版 民間企業の気候変動適応ガイド」を元に作成)

ここまでの内容について「チェックシート」にて確認してみますか?

STEP4チェックシート

現在の対策の整理

17

気候変動による自社への物理的リスクとビジネスの機会の中から特定した重要課題ごとに、すでに行っている対策があるかどうかを各部署などに確認し、1つでも「対策済み」「一部対応/進行中」「未着手/要追加対応」といった区分で整理することが、実施状況の明確化につながると知っていますか?

解説

重要課題に対する対策の有無やその内容を、関係部署・拠点からヒアリングや資料調査により収集し、実施状況を可視化します。「未着手(何もしていない)」を明確化することも重要な成果の1つです。
これにより、重要課題と実際の対策に存在するギャップの把握につながります。また、どの程度の手を打つべきかといった追加対応の是非や、対策を行う優先順位の意思決定にもつながります。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP4:気候変動影響への適応策の実態整理をご覧ください。
18

重要課題が複数の拠点にある場合、対策に偏りがないか確認することが重要であることを知っていますか?

解説

拠点や事業部門によって、リスクへの対策に偏りがあるかどうかを確認します。これにより対策が少ない課題や対策が弱い箇所を把握できます。その箇所を優先的に対策・強化する必要があるとわかることで、社の全体的なリスクへの対策・補強にもつながります。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP4-1:気候変動影響への適応策の実態整理をご覧ください。
19

可能であれば、自社と同規模・同業種の他社の適応事例を確認することが、自社の適応策の参考になることを知っていますか?

解説

他社の取組事例を確認することで、自社の取組のレベル感や立ち位置の把握、追加対応のためのヒントなどが得られます。
参考とした事例はURLや資料名なども併せて整理しておくことで、見直しが容易になります。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP4-2:実態整理の進め方をご覧ください。
A-PLATで適応のリスク管理事例(適応のリスク管理事例)と適応ビジネスの事例を確認してみましょう(適応ビジネスの事例)

*解説に掲載する関連図表がないことを示す。

【STEP5】
適応策の検討・立案

将来の不確実性を踏まえ、「後悔しない方策」として「予防」「軽減」「回避」の3種類の選択肢から適応策を検討・立案します。具体的な企業事例を参照しつつ、自社の状況や業種特性に応じて、適応策の選定および組み合わせを行います。

≪STEP5-1≫
 適応策検討・立案の3種類の選択肢

将来の気候変動影響は、今後の温室効果ガス排出削減の進捗によってその程度が大きく異なる可能性があります。そのため、影響の大きさを一つの前提に固定せず、想定外に影響が拡大した場合でも「後悔しない」よう配慮することが重要です。

対策の実施時期や対象に応じて、適応策は「予防」「軽減」「回避」の3種類の選択肢から検討します。

種類事例
「予防」
影響の発生そのものを未然に防ぐ
夏季の熱中症対策
大成建設株式会社
「軽減」
影響が発生した場合の被害を最小限に抑える
気候変動対策に原料新品種開発 
サッポロホールディングス株式会社
「回避」
影響が予想される場所や事業から撤退する
百年先を見据えた酒造り
三千櫻酒造株式会社

また、適応策の実施にあたっては、短期的な効果だけでなく、周辺環境への影響や長期的な課題の有無も含めて検討することが望まれます。

≪STEP5-2≫
 適応策の設定(立案)

ここまでで、以下について整理してきました。
【STEP1】適応策の実施の目的や方針、対象範囲(どの事業・拠点・期間)
【STEP2~4】特定した気候リスク・機会、現在の適応策の有無や内容の整理・確認

適応策の選定(立案)の際には、これら整理結果と実施コストなども含め、自社のリスク・機会と事業特性にあった具体的な適応策を組み合わせて立案することが望まれます。
また、気候変動が事業活動に与える影響は業種によって異なります。
業種別の気候変動影響や適応策に関しては、インフォグラフィック(事業者編)、環境省(2026年2月)第3次気候変動影響評価報告書などから確認が可能です。

ここまでの内容について「チェックシート」にて確認してみますか?

STEP5チェックシート

適応策の検討・選定

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適応策を検討するために、自社の重要課題(物理的リスク・ビジネス機会)や現在の取組に残るギャップを踏まえて、不足を補う追加の対策や新たに取り組むべき対策の候補の検討が重要であると知っていますか?

解説

適応策を行う目的・範囲・重要課題・現状対策(ギャップ)を踏まえて、新規または追加の対策の候補を整理します。ここでの整理は、ギャップを踏まえて、設備の改修などの「ハード対策」と、作業手順や勤務形態の変更などの「ソフト対策」の両面から可能な範囲で対策を数多く集めることが重要です。それらから自社の事業特性に合った具体的な適応策を組合せて適応策を立案することが望まれます。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP5:適応策の検討・立案をご覧ください。
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特定した自社の重要課題(物理的リスク・ビジネス機会)への対策について新たに検討する際、「予防(事前に防ぐ)」「軽減(被害を小さくする)」「回避(リスクから離れる)」の3つの考え方があることを知っていますか?

解説

将来の不確実性(将来がどうなるか正確に予測できないこと)を踏まえ、影響の想定を1つに固定せず、想定外に影響が大きくなっても無駄にならない「後悔しない方策」として、予防・軽減・回避の3つの視点で検討することが推奨されています。 この視点を通じて、対策の幅が広がり、より自社に合った適応策の組合せを見つけやすくなります。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP5-1:適応策の3種類の選択肢をご覧ください。
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対策を実施することで生じる「別の悪影響(温室効果ガスを多く発生させる対策など)」や「長期的な影響(渇水リスク対策による地下水開発が地域住民の地下水利用に影響を及ぼすなど)」の可能性についても、検討する必要があることを知っていますか?

解説

適応策を実施する際は、短期的な効果だけでなく、実施による周辺環境への影響や、長期的にも問題にならないかについてもあわせて検討することが望まれます。 これら副作用の有無について検討することで『後悔しない』対策に近づきます。このような副作用が大きい適応のことを専門用語で「不適切な適応(マルアダプテーション)」といいます。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP5-1:適応策の3種類の選択肢をご覧ください。A-PLAT(気候変動影響と対策2-3適応 より詳しく 不適切な適応)https://adaptation-platform.nies.go.jp/climate_change_adapt/adapt/a-0203.html
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風水害や高潮による被災リスクの増加が重要な課題となる場合があります。これらの被害防止・軽減や早期復旧の具体策などを含むBCP(事業継続計画)の策定や運用が、適応策になると知っていますか?

解説

業種を問わず共通する水害等の急性影響に対して、BCP(事業継続計画)の策定・運用は代表的な事前準備です。他には、建物の設計条件・基準の見直し、気象情報の早期入手と防災計画の立案などが挙げられます。自社にこれらが備わっているならば、適応が進められていると言えます。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP5-1:適応策の3種類の選択肢をご覧ください。A-PLAT(気候変動の影響と適応策(事業者編))建物・設備 https://adaptation-platform.nies.go.jp/private_sector/infographic/pdf/11-buildings-facilities.pdf
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気温の上昇により、従業員の熱中症リスクの高まりが重要な課題となる場合があります。その対策として、警報システムの導入や健康管理の実施、高効率空調の導入などが、適応策になると知っていますか?

解説

業種を問わず共通する熱中症対策(警報システムの導入、高効率空調の導入等)は、代表的な事前準備と言えます。特に気候変動対策と意識していなくとも、これらをすでに行っている場合は、適応を進めていると言えます。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP5-1:適応策の3種類の選択肢をご覧ください。A-PLAT(気候変動の影響と適応策(事業者編))従業員 https://adaptation-platform.nies.go.jp/private_sector/infographic/pdf/13-employee.pdf
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候補となる対策について、「おおまかな費用」や「期待できる効果」(どちらか一方でも可)なども考慮することが重要であると知っていますか?

解説

概算でも構わないため、可能な範囲で実施コストなども含めた費用と効果のバランスを検討します。これらの検討結果は、適応策の実施に関する予算化や優先順位付けにも活用することができ、現実的な計画作りにつながります。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP5-2:適応策の選定(立案)をご覧ください。

*解説に掲載する関連図表がないことを示す。

【STEP6】
適応策の実施

適応策を継続的な取組として定着させるためには、「適応の主流化」や「実施タイミングの見極め」、さらに「将来を踏まえた柔軟な設計・計画」が重要となります。

≪STEP6-1≫
 適応策の主流化

適応策の実施には経営判断が求められる場面も多く、また一時的な対応で終わらせず継続的な取組とするためには、以下のような体制整備や仕組みづくりが重要となります。

  • 経営層を含めた実施体制の構築(委員会の設置など)
  • 中期経営計画や事業ビジョンなど上位計画への組込み・反映
  • 事業継続マネジメント(BCM)や既存マネジメントシステムとの連携・統合

ここでは、浸水対策を含むBCM策定の事例を紹介します。

BCM策定の事例 株式会社ディスコ

≪STEP6-2≫
 適応策の選定(立案)

気候変動影響は時間とともに変化します。そのため、効果的な実施タイミングを検討する際には、影響の顕在化が想定される時期を考慮し、計画的に進めることが重要です。

また、施設の新設・増設・改修といったサイクルの節目において、適応策の実施を検討できるよう、あらかじめ設計や計画に組み込んでおくという方法も考えられます。

ここまでの内容について「チェックシート」にて確認してみますか?

STEP6チェックシート

適応の主流化と実施計画

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適応に関する検討や決定に、経営層(役員など)が関わる場(会議・委員会など)を設けることが重要であると知っていますか?

解説

適応策の実施には経営判断が必要なことが多いため、経営層が関与する仕組があると、予算や人員の確保、意思決定などが進めやすくなります。これは、適応策を一時的なものではなく、継続的な取組として定着させる上でも非常に重要です。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP6-1:適応の主流化をご覧ください。
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中期経営計画や事業計画などに、「適応」またはそれに近い内容を記載することで、継続的な適応の取組になると知っていますか?

解説

適応を上位計画である経営計画などに組込または反映することにより、適応の取組の継続性を高めることができます。すぐの組込が難しい場合も考えられるため、例えば翌年や次回の計画改定時の組込を目指して段階的に取組むことも重要です。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP6-1:適応の主流化をご覧ください。
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BCP/BCM(事業継続計画/事業継続マネジメント)や環境マネジメント(ISOなど)、自社がすでに行っているマネジメントの仕組がある場合、気候変動による被害などへの対応を組込めることを知っていますか?

解説

リスク対応としての適応策は、自社が行っている既存のマネジメントの仕組(BCP/BCM、ISOなど)に組込める場合があります。これにより適応を管理するための仕組を別途設ける必要がなくなり、継続的な運用がしやすくなります。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP6-1:適応の主流化をご覧ください。
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対策の実施時期について、「影響が表れる時期」を踏まえた検討が対策の効果を高めるうえで重要であると知っていますか?

解説

気候変動による影響が表れる時期に着目し、対策の実施時期を検討することで、実施時期の前倒し対応や段階的実施の早期実現などにつながります。適切な対策時期を設定することで、適応の効果を大きくします。気候影響は時間とともに変化するため、適応はこれらを考慮した計画的な実施が重要となります。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP6-2:適応策の実施タイミングの検討をご覧ください。
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新しい建物・設備の導入や大規模な工事を行う際に、社内であらかじめ「将来の気候変化」も考慮して計画するよう話し合うことで、将来の気候による影響への対応がしやすくなることを知っていますか?

解説

将来の暑さや豪雨を見込んだ計画とすることで、後からのやり直しや追加投資を減らすことができます。施設の新設・増設・改修といったライフサイクルの節目に、適応策の実施を検討できるよう、あらかじめ設計や計画に組み込んでおくという方法も考えられます。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP6-2:適応策の実施タイミングの検討をご覧ください。

*解説に掲載する関連図表がないことを示す。

【STEP7】
適応策の進捗状況の確認と評価

適応策には、定期的な進捗確認と効果の評価、そして最新情報に基づく継続的な見直しが欠かせません。

≪STEP7-1≫
 進捗状況の確認・評価

実施している適応策が【STEP1】で設定した目的に対してどの程度の効果を挙げているか、進捗に問題がないかを把握することは、目的達成に向けた重要なプロセスです。
こうした効果や評価結果に基づき、必要に応じて取組の方向性を調整することができます。

≪STEP7-2≫
 適応策の見直し

気候変動影響に関する科学的知見や予測は継続的に更新されます。新たな情報の公表により、これまで想定していた「リスク・機会」が変わる可能性があります。
そのため、現行の想定が最新の知見と整合しているかを定期的に見直す必要があります。

一度策定した適応策を固定化するのではなく、状況の変化に応じて継続的かつ柔軟に見直しを行うことが、リスクを最小化し、機会を最大化するうえで重要です。

ここまでの内容について「チェックシート」にて確認してみますか?

STEP7チェックシート

進捗確認と見直し

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気候変動への対策の進捗の確認は、「毎年」「半期ごと」など決まったタイミングで行うルールを設定することが望ましいと知っていますか?

解説

定期的なチェックのタイミングを決めることで、確認漏れを防ぎ、継続的な見直しができます。例えば、環境マネジメントやBCM(事業継続マネジメント)、事業計画のPDCA(計画→実行→確認→改善の流れ)など、自社にすでにある管理プロセス等に適応を組み込むことで、確認漏れも防ぎやすくなります。

環境マネジメント、BCM、事業計画のPDCAなど既存の他の経営管理プロセスに適応策の確認も統合することで、作業の重複を避け、効率的な運用を実現する。
「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP7-1:進捗状況の確認・評価をご覧ください。
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実施している対策について、適応を行う目的に照らして有効かどうかを評価することが、対策の見直しに重要であると知っていますか?

解説

適応を検討するにあたり、あらかじめ設定した目的に照らして「どの程度効果が出ているのか」「進捗は順調か」を評価することで、対策を続けるか見直すかの判断材料になります。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP7-1:進捗状況の確認・評価をご覧ください。
33

進捗確認の結果を受けて、見直し(対策の追加/修正/中止/変更不要/新規検討)が必要かどうか検討することが重要であると知っていますか?

解説

評価を通じて必要に応じた軌道修正(追加・修正・中止・新規検討)につなげることで、適応が有効であり続けることにつながります。変更不要の判断も含め、検討した事実が重要です。一回目の進捗確認結果では変更不要であっても、二回目には軌道修正が必要となることもあります。状況は変わっていくため、継続的に見直しを行っていることが重要な要素となります。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP7-1:進捗状況の確認・評価をご覧ください。
34

最新情報や自社の状況の変化を踏まえて、リスク・機会のリストや優先度、対策内容を見直すことが、リスク低減などにつながると知っていますか?

解説

科学・技術は更新され、将来予測も変わり得ます。つまり、当初想定していた物理的リスク・ビジネス機会が変化する可能性があります。そのため、一度決めた内容であっても、状況に応じて柔軟に更新し続けることが、リスクを最小化し、機会を最大化するために重要です。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP7-2:適応策の見直しをご覧ください。
35

最新の気候予測や影響に関する公的な情報(政府報告書、業界資料など)を定期的(例:年1回程度)に収集・把握することで、想定しているリスクや機会の妥当性の変化を確認できると知っていますか?

解説

最新情報を収集・把握しておくことで、想定していたリスクや機会が変化していないか、またその妥当性に変化がないかを確認することができます。国の「気候変動影響評価」等もおおむね5年ごとに見直されており、5~10年で研究は大きく進むため、大規模な見直しが必要となる可能性が高くなることを意識しておくのもよいでしょう。

「気候変動適応に向けたガイダンス」STEP7-2:適応策の見直しをご覧ください。

*解説に掲載する関連図表がないことを示す。