「令和3年度 気候変動適応研修(初級コース)」の開催概要報告とアンケート集計結果報告
Ⅰ.研修概要について
開催日 |
- ① 北海道地域:令和3年6月25日(金)10:30~16:45
- ② 中部地域:令和3年7月9日(金)10:30~16:35
- ③ 九州・沖縄地域:令和3年7月30日(金)10:30~16:45
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開催方法 |
オンライン開催(Zoom Meetingを使用) |
主催 |
国立環境研究所 気候変動適応センター |
令和3年6月末から7月末にかけて、北海道、中部、九州・沖縄の3地域において、これから地域気候変動適応計画を策定予定の地方公共団体職員や、気候変動適応を担当してまだ経験の短い職員の皆様を主な対象として、気候変動適応研修(初級コース)を開催しました。研修は気候変動適応計画策定に関する基礎的な知見・方法の習得を目的としたもので、講義、パネルディスカッション、グループワークの3部形式で行いました。
3地域での研修には、合計で全国約90の都道府県、市町村、地域気候変動適応センター等から約110名の皆様にご参加いただき、活発な議論が行われました。また、事後アンケートには約70名の方からご回答をいただきました。
以下、各プログラムの概要およびアンケート集計結果の一部をご報告します。
地域別参加人数 |
参加者の属性 |
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Ⅱ.各研修プログラムについて
【プログラム1】では、国立環境研究所の研究調整主幹阿久津より、本研修の目的とともに、「地域気候変動適応計画の目的と考え方」というテーマで、「地域気候変動適応計画はどういうものか」、「なぜ地域気候変動適応計画を策定しなければならないのか」についての説明を行いました。
講義のレベルは? |
参加者からのコメント |
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- 努力義務であるが、各市町村において策定することが望ましいということが理解できた。
- 疑問点に答える形で資料の作成、説明がされていてわかりやすかった。
- 他部局で想定される問いに対する回答が参考になった。
- 「2050年カーボンニュートラルを目指していればOK?」の部分については個人的にも気になっていたので、とても勉強になった。
- 全体像は理解した。実際、地域の何に着目して計画としていくのかは、先例自治体でも苦労したとの発表があり、研修のようにスムーズには進まないことを感じた。
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【プログラム2】では、各地域の気象台(北海道地域:札幌管区気象台、中部地域:東京管区気象台、九州・沖縄地域:福岡管区気象台)より、地域気候変動適応計画を策定する上で基本となる地域の気候の現状と将来予測について最新の情報を提供いただきました。また、情報の入手先や入手方法について解説いただき、困ったときは各地域の気象台に気軽に問い合わせるようにとの心強いメッセージを頂戴しました。
講義のレベルは? |
参加者からのコメント |
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- 気象台が温暖化に関する様々なデータを公表していると知ることができた。今後利用させていただきたい。
- 図や絵が多く、短い時間で理解することができた。特に、参考資料にURLとQRコードが掲載されているところがとても魅力的。
- 当初、適応策よりむしろ緩和策が重要と思っていたが、想定以上に環境変化が大きくなっているため、適応策も重要であると認識した。
- 降水量と降水日数の将来変化について、「鹿威し」の例えが非常にわかりやすかった。
- 気候変動の論拠となる部分を学ぶことができてよかった。レポートを読み解くだけの講義があっても良い。
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【プログラム3】では、国立環境研究所の気候変動適応推進専門員の大山より、環境省が平成30年11月に作成した「地域気候変動適応計画策定マニュアル」について、新たな情報も加えながら、その活用方法に関する説明を行いました。必ずしもこのマニュアルに沿って計画を作成することが必須ではありませんが、新たに地域適応計画を作成する上でたいへん役立つ手引きと考えています。
講義のレベルは? |
参加者からのコメント |
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- 計画を実際に策定するにあたっての流れをイメージすることができ、非常に参考になった。
- 地域の気候変動適応計画は、各地の環境条件により異なるため、各地の実情に合わせ、優先順位を付けた対策が必要であることを理解した。
- STEPごとに取り組む方が、今どの段階か、どの段階が弱いのかがわかり、STEPの必要性がわかった。
- 各STEPが分かり易く解説されていると感じた。重要性、緊急性、確信性のランク付けは、専門家も踏まえた基準作りが難しいという印象を受けた。
- 「ステージ」と「STEP」が混在して混乱する。「ステージ」は情報入手法の差異で、この講義での重要性は小さいため省いても良いのではないか。
- 字が多く、短時間の説明では、理解が難しかった。
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【プログラム4】では、すでに地域適応計画を策定された各地域の都道府県および市(北海道地域:北海道/札幌市、中部地域:長野県/京都市、九州・沖縄地域:沖縄県/北九州市)から、地域適応計画策定の具体的な事例を紹介いただきました。計画の概要と策定に至るまでの計画策定スケジュール、庁内調整方法、科学的知見の収集方法、影響評価の方法等に加え、地域特有の取組事例や普及啓発の方法等、これから計画の策定を目指している地方公共団体の方々にとってたいへん示唆に富んだ内容をお話しいただきました。
評価 |
参加者からのコメント |
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- 実際に計画の策定などを体験している方の話はとても貴重で参考になった。
- 今年度、計画改定を予定しているため実務的な話が聴けて参考になった。
- 各自治体とも、関係部局と連携しながら着実に計画を策定されており、大変勉強になった。
- 実際に関係部局と交渉およびとりまとめを行う行政職員の立場に立っての講義が必要。
- 他部局の関連施策を取りまとめるための工夫や、キッズコメントの実施など、札幌市様の事例がとても参考になった。
- 長野県の地域特性を生かした適応計画の内容についてと、京都市の計画策定をするまでの一連の流れについて知ることができ参考になった。
- 沖縄県以外の各組織が取り組んでいる施策を詳しく知る機会がなかったので、大変参考になった。
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【プログラム5】では、官民連携による地域の適応推進事例について紹介いただきました。北海道地域では、北海道銀行様より地域の金融機関の立場から、気候変動の影響を受ける地場産業を持続可能なものにするための取組を、九州・沖縄地域ではひろぎん・エリアデザイン様より地域の金融機関としての適応推進の取組についてお話しいただきました。
評価 |
参加者からのコメント |
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- 事業者が実際に直面している問題を紹介していただき、参考になった。
- 地方銀行が各地の実情に会わせたビジネス創成のコンサル事業を推進していることが良く分かった。
- 北海道の農林水産畜産は、それぞれ高いポテンシャルを持っているため、地域の特性を上手く活用した提言を続けていただければと思った。
- 民間の視点からの視点の講義は新鮮であった。民間企業の関心事が広まることが、行動変容や考え方の普及に必須であると感じた。
- 官民連携が必要になってくると思われるが、気候変動適応についてどのような方向で捉えられているか、参考になった。
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【プログラム6】では、プログラム4で事例紹介をいただいた地方公共団体の講演者の皆様、環境省の各地方環境事務所(北海道、中部、九州・沖縄)の担当官の皆様、国立環境研究所気候変動適応センターメンバーの間で、2つのテーマに絞ってパネルディスカッションを行いました。1つ目は「気候変動適応計画を作るに当たって必要となる科学的知見の収集方法について」、2つ目は「計画の策定および適応策の実施に向けた部局間連携の工夫について」をテーマとして取り上げました。各登壇者の皆様から経験談に基づく具体的なお話をいただき、参加者の皆様との間で活発な質疑が交わされました。
評価 |
参加者からのコメント |
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- 多くの方が悩む点(他部署との調整など)やその解決方法を聞くことができ、とても参考になった。
- 他県の具体的な事例や策定にあたっての課題などが聞けて良かった。
- 地域策定計画策定済みであり、他自治体も同様の苦労・思いでもって取り組まれていることがわかり、安心した。
- 関係者の肌感を感じるためのヒアリングや、部局間連携を進めるために、土木建築部局であれば国交省などそれぞれの主体にあった連携の仕方が重要と感じた。
- 新たな施策を求めるのではなく、今あるものの再整理というようなニュアンスで理解を求めることが、連携の第一歩として重要であることを学んだ。
- 資料等も特になく口頭だったため内容を瞬時に理解することが多少困難だった。
- 他部局との連携・庁内調整については、資料等で説明があるとよかった。
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【プログラム7】では、少人数のグループに分かれ、「地域気候変動適応計画策定マニュアル」のSTEP1~3、5、7に相当する計画策定作業を模擬的に行いました。比較的地域条件が類似した地方公共団体の皆様4~5人でグループを構成し、適宜アドバイザーにも加わっていただき、国立環境研究所のメンバーがファシリテーターや記録係を務め、グループワークを進行しました。実際に手を動かしながら、気候変動影響等に関する情報収集作業を行い、どこに使える情報があるのか、関連する情報取得ツール等の活用方法について理解を深めていただきました。グループワークの成果および気づきに関して2つのグループから発表いただくとともに、研修終了後各地域の参加者に各グループが作成した資料をお送りし、情報の共有を図りました。
評価 |
参加者からのコメント |
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- グループワークで計画策定を疑似体験することは非常に有益なので、計画策定を準備している自治体向けにもう少し詳しいメニューがあると良い。
- 研修前は、初めてのメンバーのグループワークで、会議進行や記録などをどうするのか心配だったが、良く練られた運営で安心して議論に参加することができた。
- 実施時間、人数や会議進行等ちょうどよいと感じた。議論も5人となると時間が足りないと思われたが、3、4人というところで議論がしやすかった。
- 地域の将来予測や影響を調べるために、まずは資料の確認など情報収集を行うことが重要であることが理解できた。他部局との連携を行う際には同じようにアプローチするとなじみやすいように感じた。
- グループの他自治体についても調べておくよう連絡があれば、もう少し深い検討ができたのではと考える。
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【主催者あいさつ】
Ⅲ.その他アンケート結果について
オンライン開催の感想は? |
コメント |
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- 今回の研修は、オンラインで行われたため、非常に効率的な研修が実施できたと思う。移動時間が短縮できるため、参加のハードルが低い。
- 挙手や、反応など、Zoom機能の使い方を研修前に共有していただいたため、参加しやすかった。
- オンライン会議に不慣れで参加に不安があったが、開始前のガイダンスが適切で、安心して研修に専念することができた。
- オンライン環境が乏しいと参加しにくいが、録画配信等もがあればもっと視聴者が増えるのではないか。
- 開催を2日に分けてはどうか。前半の研修を受けた後自分の職場へ持ち帰ることでより課題等を見つけやすい。
- グループワークは慣れていないこともあってオンラインではやりづらいと感じた。
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研修全体を通しての満足度は? |
その理由 |
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- オンライン会議に不慣れで参加に不安があったが、開始前のガイダンスが適切で、安心して研修に専念することができた。
- 自治体による事例紹介では、かなり詳細まで教えていただき非常に参考になった。加えてグループワークで策定の流れを体験することで、自分の自治体で策定する場合をイメージすることができた。
- 今年度から環境部局の担当になったが、本初級コースは細かく噛み砕いた内容となっていたので理解しやすかった。
- 他市町村の職員等の意見を共有できるとても良い機会になった。
- 中四国地域があれば参加しやすかったが、九州沖縄での適応策についても触れることができ、逆に良かった。
- グループワークで扱うことになった地域が、事前に準備した自身の地域と異なったため、気候の変化に関するパートについて、参加が難しかった。
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より専門的な講義は必要か? |
特に関心の高い分野は? |
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今後受講を希望する研修は? |
- 自治体が影響評価の検討を行うに当たっての理解を深めてもらうため、将来予想される気候変動影響について、分野毎の説明を行ってはどうか。
- 地域適応センターが自身の自治体を対象とした影響予測を行うために、気候シナリオの扱い方を学ぶ講義を実施してほしい。
- 受講対象者が、自治体の環境部門だけでなく、危機管理部門、防災部門等である研修を開催していただくことも必要かと思う。環境部門だけでなく、危機管理部門、防災部門からみて、計画的に予算化して取り組んでいくべき事象も多々あるかと思う。
- 影響予測に関して、先進自治体のやり方、その他事業者との連携や気候変動ビジネスに関して等の研修があれば参考になる。
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環境省・国立環境研究所気候変動適応センターへの要望は? |
- 市町村連携の上で参考になるようなツール(ゾーニングの補助資料等)の提供があると良い。
- 年度の早い段階(6月ぐらい)で、次年度の実施事業(委託事業等)に関する情報を共有してほしい。
- 国立環境研究所内と地方環境研究所等との研究の連携にかかるサポート(二型研究など地方との連携した取り組み及び予算確保)。
- 可能であれば地域、産業等をある程度場合分けした適応計画の素案のようなものを作成してほしい。
- 今後、将来予測等の高度な知見を必要とするレベルを展開すると、地方の自治体職員や適応センターでは限界がある(人員不足や異動の関係もあり)。国環研等における各分野の専門家の方々からの支援があるとありがたい。
- 各地方の大学・高専の教授等で気候変動に取り組んでいる方の紹介や、自治体との連携推進の動きがあれば助かる。
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アンケートでは研修全体を通しての満足度をお聞きしましたが、「たいへん満足」「満足」との回答が合わせて83%、「どちらかと言えば満足」との回答が17%と、おおむね高い評価をいただきました。一方、今回の研修の課題や改善点ついても具体的なご指摘をいただきました。
また、皆様から今後受講を希望される研修内容や、国立環境研究所気候変動適応センターに対するご要望も数多くお寄せいただきました。ご協力に感謝しております。気候変動適応センターでは、今後とも地方公共団体等の皆様からの要望を踏まえながら研修を企画していく所存です。
今回の研修が、地方公共団体等の皆様にとって、地域における気候変動適応計画の策定や、適応策の推進の一助となりますことを願っています。
(2021年10月15日掲載)