令和3年度気候変動に関する研修会「熊本県」「佐賀県」「長崎県」&「球磨川視察」報告

2021年10月13日~15日に、熊本県、佐賀県、長崎県で行われた「令和3年度気候変動に関する研修会」と、10月12日に実施しました球磨川視察についてご報告いたします。

令和3年度気候変動に関する研修会

開催日 2021年10月13日(水)、10月14日(木)、10月15日(金)
会場
  • 10月13日(水):熊本県(ホテル熊本テルサ)(会場で受講 又は ウェブ(ZOOM)での聴講の併用)
  • 10月14日(木):佐賀県(ホテルグランデはがくれ)(会場で受講 又は ウェブ(ZOOM)での聴講の併用)
  • 10月15日(金):長崎県 オンライン(Webex)
主催・事務局 環境省九州地方環境事務所環境対策課、熊本県、佐賀県、長崎県
一般財団法人九州環境管理協会環境計画課

九州広域アクションプラン策定事業の一環として、熊本県・佐賀県・長崎県および各県内市町村の自治体職員向けに気候変動適応や適応計画策定に向けた研修が、10月13日~15日まで3つの会場に分かれて開催されました。「各県の地球温暖化の現状と今後の見通し」について、気象庁福岡管区気象台 野津原地球温暖化情報官よりご講演が行われ、「気候変動の緩和・適応に関する国の動向について」環境省九州地方環境事務所環境対策課 原田課長補佐、大嶋地域適応推進専門官よりご講演が行われました。また、佐賀県、長崎県研修会では、「地域における豪雨災害への適応、治水に関する適応策事例紹介」について九州大学 小松名誉教授がご講演されました。

弊所からは気候変動適応に関する情報提供を行いました。向井センター長より「地域における気候変動影響と適応計画(適応策)策定の流れ」のご講演の後、「地域適応計画の策定マニュアルについて」、「地域適応計画策定に向けた課題と対応の事例」「市町村における適応計画策定事例」説明を行い、弊所が発信している情報ツール及び支援メニューの紹介を実施しました。

また、「地域気候変動適応計画策定マニュアル」についてのパートでは、各自治体で対策する項目について考えていただく地域適応計画策定演習を行い、その中で参加者に「対策する項目」について考えていただきました。ご発言いただいた内容をご紹介いたします。

分野 対策する項目
農林水産業
  • 水稲、畜産、林業の項目で対策を考えたい。
  • 水稲で暑さに強い品種を作るのに時間がかかる。課題は品種改良。
  • 夏場の野菜不作による価格の高騰が起こるため、市民のために対策が必要。
水環境・水資源
  • 洪水が発生するので水資源の対策。
  • ため池を災害対策に活用。異常気象で集中して雨が降るので、災害が発生し災害にも直結する。(自然災害・沿岸域の項目とも重複)
  • 水質の環境が気温の影響を受ける。モニタリングを行う必要性。
  • 対策する課題は専門的な人的資源不足。
自然生態系
  • 離島のため海面上昇の脅威にさらされている。海峡の地形的条件で海面上昇がある。道路インフラを含めて適応できるのか、物流を含め、市民生活にリスクがある。
自然災害・沿岸域
  • 山林が多く、災害も多い。対応していくしかない。
  • 令和3年度の豪雨で災害が発生している。課題はどこから手を付ければよいかわからないこと。
  • 台風の被害がひどい。停電対策の必要性、土砂災害の対策が考えられる。所属が環境政策課で、どのように環境に対応するかを考える部署なので、どういう対策が考えられるかという点で項目を選んだ。防災関係の部署と話し合う機会は多い。
健康
  • 熱中症。エアコンの普及が課題だが、コストがかかる。
県民生活
  • 建造物の省エネ化。省エネルギーに向けた取組み。

また、最後に適応計画策定時の体験談として、熊本県・佐賀市・長崎県にコメントをいただきました。

  • 分野にまたがるので情報共有や進捗管理が課題。
  • 環境部局だけではわからない情報があるので、他部局から情報を得ることが難しい。横の連携が大変。計画策定に時間がなかった。部分的に詰めていくことが必要。
  • アンケート、ヒアリング照会等を行って取り組み、担当部局の協力を得られた。こういうことをやりたいと伝え、理解を得られるようにすることも必要。

気候変動に対する知見が得られ、理解が深まるという研修会に参加でき、また九州3県の自治体の現状や課題を共有させていただく機会となりましたことに感謝申し上げます。

【球磨川視察】

熊本研修の前日(12日)に熊本県人吉市に行き、球磨川を視察いたしました。
「令和2年7月豪雨」により、球磨川は広い範囲で氾濫し、大きな災害が発生しました。
視察時に見た球磨川は、氾濫するなど到底想像の及ばない、穏やかに悠然と流れる美しい川でした。

人吉市の住民によれば、以下の「写真1」周辺(人吉市中心部)では、建物1階の天井まで浸水したとのこと、また、球磨川の本流があふれる前に、先に近隣にある支流から氾濫が発生したとのことでした。


【写真1】

また、以下の「写真2」は、人吉市からさらに下流の球磨村渡地区周辺です。
写真を撮影した場所から3~4メートル下に川が流れていますが、目の前の建物の2階部分まで増水しました。


【写真2】

人吉市市内では至る所でショベルカーが活動していて、被災した土地を農地として復活させるために、現在も流入した土砂を取り除く作業が行われていました。

九州地区では毎年のように大雨による災害が発生しています。
大雨が発生することを前提とした場合に、いかに災害による影響を低減できるか、またいかに早く復興することができるか、気候変動への適応の重要性を痛感しました。

(2022年1月6日掲載)

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