第5回地域の気候変動適応推進に向けた意見交換会 開催概要及びアンケート集計結果報告

Ⅰ.開催概要について

開催日 令和4年10月28日(金)10:00~17:30
開催方法 国立環境研究所(つくば)とオンライン会議ツールZoomを利用したハイブリッド形式
主催 国立環境研究所 気候変動適応センター

2018年の気候変動適応法の施行後、地方公共団体における「地域気候変動適応計画」の策定や地域の情報拠点である「地域気候変動適応センター」の設置が進んでいます。今回の意見交換会では、この地域気候変動適応センターやセンター設置に取組む自治体メンバーなどが一堂に集い、地域の適応の取組事例や課題を共有し、地域を超えたセンター間、自治体間の意見交換を行いました。

プログラムは大きく2つの内容から構成され、午前は5つの先進事例の紹介と意見交換、午後はセンターの組織体制や取組・活動内容などにより複数のグループに分かれ、組織運営上の課題や取組の課題を共有し、同じ目的意識を持ったメンバー間での経験やノウハウの交換を行いました。また、全てのオンラインプログラム終了後、つくば来場者間や国環研関係者との意見交換、研究室訪問を行いました。
開催はハイブリッド形式で実施し、全体で73名の方が参加、うち15名の方が対面参加されました。

Ⅱ.プログラム

午前のプログラム「先進事例の紹介」概要

これまでに実施されてきた環境イベントへの取組について紹介がありました。また、「ミライ地球ガチャ」を活用した経験から、具体的な運営方法や、その取組を通じて「適応を知ってもらい、考えてもらう効果が得られた」ことなどが共有されました。参加者からは、「商業施設などで実施することによりイベント目的ではない人への啓発に使える」、「既製品であれば使いやすい」などの感想が聞かれました。
(発表者:石川県 LCCAC 山下 貴夫 専門員)

3か年にわたって取組んだ国民参加事業でのヒアリング内容、水産物への影響予測の結果、事業成果の具体的な活用例などについて紹介がありました。また、センターが関連情報のハブ機能を担うことを目指すという将来展望や課題について言及がありました。参加者からはフォローアップ事業実施の経緯や、水産物の影響予測結果と養殖において検討すべき課題について質問がありました。
(発表者:三重県 LCCAC 樋口 俊実 事務局長)

推進費及び共同研究として取組んだ、気候変動適応を推進するための情報の収集・整理・分析の方法、研究成果としてまとめた「事例集」、「情報作成の手引き」の内容について紹介がありました。また、その活用と適応策の社会実装について言及がありました。参加者からは、プログラム共有の要望のほか、市町村ニーズの収集や支援の進め方などについて質問がありました。
(発表者:信州 LCCAC 浜田 崇 主任研究員)

将来予測のための技術習得に関し、解析に必要なPC環境の構築、プログラミング言語及び活用データの選定などについて具体的な紹介がありました。また、技術継承の課題を克服する上で、マニュアルの作成や実用的な将来予測結果に基づき適応オプションを提示することの重要性について言及があり、同じ課題を抱える参加者から個別相談を希望する声が上がりました。
(発表者:愛媛県 LCCAC 横溝 秀明 研究員)

WebGISの導入に至った経緯、技術習得の方法、利用データの入手先などについて紹介がありました。成果の活用に際しては適応策を担う人の具体的な行動にどうつなげるかの視点が重要であり、技術継承に際してはマニュアルの作成、効率的な運用、コスト管理も踏まえたコンテンツの作成が重要との言及がありました。参加者からは、ライセンス保有の考え方などについて質問がありました。
(発表者:山口県 LCCAC 惠本 佑 専門研究員)

先進事例紹介の様子

午後のプログラム「グループディスカッション」概要

センターの組織体制や取組・活動内容などにより複数のグループに分かれ、組織運営上の課題や取組の課題を共有し、経験やノウハウなどの情報交換、課題に対するディスカッションが行われました。ディスカッションに先立ち、参加者にはそれぞれの組織の課題や話し合いたい内容を記入シートにまとめていただきました。(詳細はアンケート結果参照)

ディスカッションは組織体制や取組内容によってグループ分け

つくば来場者と国立環境研究所関係者との意見交換

Ⅲ.アンケート結果(回収件数49※各設問の回答総数は不定)

参加者の所属機関
午前のプログラム「先進事例の紹介と意見交換」について感想などを自由にご記入ください(任意)
  • 紹介された先進事例の取組はこれからの公務員として目指すべき姿であると感じ、モチベーションの向上につながるものだった。
  • 地域気候変動適応センターとして、独自にどこまで活動できるかが共通の悩み。
  • 県の気候変動対応センターだけでなく、市町村の事例も紹介してほしかった。
  • 先進的な事例をざっくばらんに聞け、大変有意義だった。自組織でも実行できればと考えており、個別に連絡をしようと思う。
  • 当県と自治体規模、産業構造が似ている県の紹介があり、また課題認識も近かったため、とても参考になった。
  • 各県の情報はいずれも本県の調査研究の参考になるものばかりだった。
  • GISの活用法を知ることができ大変ためになった。
  • GISの導入を検討してみたいと思ったが、同時に、予算が大きな壁になると感じた。
  • 当自治体では温暖化対策と併せて事業や計画などが策定・実施できていない状況のため、今後適応センターとも協力し、啓発活動から進めていきたい。
  • 「ミライ地球ガチャ」は、子供の興味を引くことができ、また、各自で適応策を考えるきっかけにもなるのでとても良い取組。
  • 「ミライ地球ガチャ」活用における掲示方法の工夫や、その後の改善案など知ることができ有意義だった。
グループディスカッション①(組織体制別グループ)で
参加したグループ
グループディスカッション①(組織体制別グループ)に
参加しての感想
グループディスカッション①(組織体制別グループ)についての意見、感想(任意)
  • 地域センター(外部団体)と地方公共団体で課題に対し違った視点や考え方もあるように思うが、それぞれが違った視点や考え方を新たに認識できるような混在したグループ分けがあってもよいと感じる。
  • 組織別以外では,設置からの経過年数でグループ分けするとおもしろのではないかと思う。
  • 対面参加したが、オンラインとの併用はかなり難しいと感じた。生の声とスピーカーからの声が同時に聞こえたり、他の班の声がマイクに入ったりし、議論に集中できない場面もあった。改善の必要があると思う。
  • Web会議による意見交換会は、顔が見えるといっても限界があり、実際に会場に足を運びたいと感じた。
  • 問題提起の段階で終わった感があるが、深く掘り下げても答えは出ないような内容も多く、このくらいの深度で十分か。
  • 他部局との連携については、どの自治体も課題を抱えており、苦慮していることは共通と感じた。
  • 同じグループに都道府県の研究所のベテランが多く、専門的な内容は多少難しかったが、参考になった。
  • それぞれの地域気候変動適応センターで特徴があってよい、というファシリテーターの言葉に励まされた。
グループディスカッション②(取組分野別グループ)で
参加したグループ
グループディスカッション②(取組分野別グループ)に
参加しての感想
グループディスカッション②(取組分野グループ)についての意見、感想(任意)
  • 調査研究についてはより多くのLCCACから意見を聞いてみたかった。
  • 他自治体の先進事例を共有いただけて参考になった。
  • 参加者の意見交換したい内容が似通っていたため、詳しく話が聞けて良かった。
  • 個々の討論の中で、ファシリテーターが体験談をあげてくれるなど大変有意義な討論となった。
  • 普及啓発に関する理解、取組には各自治体で大きな隔たりがあると感じた。
  • 啓発普及は取組やすいが,奥が深い。対象を絞って進めたい。
  • 新規の普及啓発につながる方法についての話題が参考になった。ミライ地球ガチャについても利用を検討したい。
グループディスカッションの時間 意見交換会への満足度
満足度についての意見(任意)
  • 都道府県と市町村混在ではなく、対象が県なのか市町村なのかを明確にして実施してほしい。
  • 意見交換会の内容自体は大変満足だったが、課題解決の困難さも同時に知るところとなった。
  • グループディスカッションはもう少し時間がほしかった。
  • 引き続き、今回のような全国自治体の取組事例を共有できる場があるとありがたい。
  • 参加したことで人脈ができ、非常に良かった。
  • やはり対面での開催は楽しいし,交流が進みやすい気がする。次回は対面で参加したい。
  • 各自治体で取組のレベルに差があるため、このような意見交換会は大変有意義なものだと思う。
  • オンライン参加だったが、発言できるように振ってくれたので距離をあまり感じなかった。
国立環境研究所への要望など自由記述(任意)
  • 国の動向について、検討段階であっても頻繁に情報提供してほしい。
  • つくばだけでなく、たとえば東日本・西日本などの地域に分けて、各地域での対面開催などができれば顔合わせによる連携向上などが得られるのではないかと思う。
  • 気候変動に必要な初心者向けプログラミング研修を開催してほしい。
  • 各地方自治体単位では、予算もマンパワーも不足しており、一からイベントの内容を企画したり、普及啓発ツールを作成したりすることは、困難。「ミライ地球ガチャ」のように、国環研が作成したツールを、各自治体へ貸出しいただければ、負担感も少なく、イベントなどの出展ができるのではないか。
  • 国民皆が行動変容に繋がるような取組を協働していければと思う。
  • 地域の気候変動の影響評価について、元となるデータの提供のみでは、地方公共団体ではマンパワー(質・量)の問題から、詳細な分析ができないというのが現実。影響評価についても、ある程度細かいメッシュでA-PLAT上で見られるようになるとよいと思う。それによって、自分の住んでいる住所で将来的にどの程度の気候変動が予測されるかがわかれば、具体的なアクションにつながりやすい。
  • 先進的な適応センターには、モチベーションの高い担当者がいると感じた。いろいろなことにチャレンジできる環境を確保するためには、予算獲得スキルを有する担当者の存在も欠かせない。

自由記述については、記載していただいた類似の内容を統合あるいは抜粋させていただきました。
今後の研修運営、気候変動適応推進の参考とさせていただきます。
意見交換会へのご出席、アンケートへのご回答ありがとうございました。

(2023年1月18日掲載)

ページトップへ