COP27現地レポート「いつもそばにいてくれてありがとう」
変わりゆく地球で今私たちができること
開催日 | 2022年11月6日-11月18日 |
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開催地 |
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国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(通称COP27)が、エジプトのシャルム・エル・シェイクで11月6日からおよそ2週間かけて行われました。今回ホスト国であるエジプトがCOP27開催にあたって掲げていたテーマは「Together for Implementation」(実行に向けて、共に)。この言葉をCOP27会期中至る所で目にしました。「これまでのCOPで決められてきたことが、果たしてどのくらい実行されてきたのだろうか」「今回のCOPでは必ずや気候変動対策の具体的な実行に持ち込もう」―そんな焦燥感や意気込みが感じられました。
COPの期間はWEEK1とWEEK2に分かれ、様々な展示やセミナーが開催されます。
気候変動適応センターからは、アジア太平洋気候変動適応研究室のメンバーが参加しました。同じ国立環境研究所の衛星観測センターと社会システム領域に加えて、RESTEC、IGESなどの各研究機関と共同開催したWEEK1の展示では、日本の研究機関における緩和と適応のための技術や研究などを紹介しました。展示期間中に、気候変動に関する技術に関心を持つ方達が展示ブースを訪れてくれました。
東ティモールが直面する気候変動
また、11月11日(金)にJAPANパビリオンで行われたセミナーでは、国家適応計画(NAP)を効果的に策定・実施するために、アジア太平洋地域の国々のNAP策定の経験が共有されました。日本、バングラディッシュ、東ティモールなど国際色豊かなメンバーで、NAP策定・実施にあたっての課題や、アジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム(AP-PLAT)に始まる日本の知見や技術がどのように適応計画の推進に貢献できるのかという事柄についてディスカッションが行われました。
東ティモールの適応計画のお話をしてくださったJustinaさんに少しお話をお伺いすることができました。東ティモールは昨年、極端な豪雨による大洪水に見舞われ、多くの家が流され、人命も失いました。Justinaさんによると、このような大規模な洪水は、彼女のこどもの頃には東ティモールでは起こらないものだったそうで、極端な豪雨が頻発する近年の気候変動の影響を実感しているとのことでした。すでに避けることのできない気候変動の影響を軽減するために、世界各国で適応計画の策定と実施が急がれています。
民間の力を気候変動対策に
COP会場では、気候変動の影響を軽減する民間企業の技術や製品も多く紹介されていました。JAPANパビリオンの適応のブースでは、SPACECOOL社の開発した冷却素材の展示がありました。地球上の熱が宇宙に放射されることで、物体が冷却される「放射冷却現象」を利用した新素材は、エネルギーを消費することなく、建物内の気温を下げることができます。今回のCOPホスト国であるエジプトのあるアフリカでは、電力の供給が不安定だったり、光熱費にお金をかけられなかったりする地域も多いため、エネルギーゼロの暑熱対策に興味を持ち、アフリカ地域をはじめとする様々な国の人たちが見にきてくれたそうです。
【#COP27 現地レポ!日本の適応ブース🇯🇵】
— 国立環境研究所 A-PLAT (@APLAT_JP) November 8, 2022
SPACECOOL社は、地球上の熱が宇宙に放射されることで物体が冷却される”放射冷却”の仕組を利用した冷却素材を開発。エネルギーを消費しない暑熱対策として、電力の供給が不安定な地域も多いアフリカの方が関心を持って見にきてくれるそうです✨#COP27と適応 pic.twitter.com/KUasTyuAiQ
COP27会期中、前回のCOP26で発足したGGAに関するグラスゴー・シャルム・エル・シェイク作業計画のレビューも行われていました。その中でも改めて確認されているように、気候変動適応を進めていく上で、民間企業のより深いコミットメントが方々から求められています。しかし、それは民間企業が資金援助をするという意味だけではなく、企業にとっても新たな市場を開拓できるビジネスチャンスでもあります。(日本企業の気候変動適応への取り組み特集ページ)
【#COP27 現地レポ!ブース紹介Green Climate Fund🌍】
— 国立環境研究所 A-PLAT (@APLAT_JP) November 10, 2022
Green Climate Fundは、開発途上国が緩和策と #適応策 を実施するための努力を支援する国際ファンドです。ブースにて、日本ではGCFや必要な申請プロセスなどがまだまだ周知されていないなどの課題をお伺いすることができました🧐#COP27と適応 pic.twitter.com/E2gxI2HxSp
企業が気候変動関連のビジネスに挑む際に考慮すべき資金源の一つに緑の気候基金(Green Climate Fund、通称GCF)があります。GCFのパビリオンにお伺いすると、近年日本企業からGCFへの申請も出てきているとのことでした。しかし、投資の側面も強いファンドそのものへの理解や、GCFの申請プロセスなどへの理解が日本ではまだまだ浸透していないと感じられているそうです。
Dear Earth...「いつもそばにいてくれてありがとう」
他にも各パビリオンで趣向を凝らした展示やセミナーが開催されていました。
【#COP27 現地レポ!トルコパビリオンは #アート がたくさん】
— 国立環境研究所 A-PLAT (@APLAT_JP) November 17, 2022
トルコの浜辺には #ウミガメ の巣がたくさんあり、海流に乗って移動するウミガメのジオデータをアートにした作品です。気候変動によって、トルコも砂浜の温度が上昇し、ウミガメの産卵に大きな影響を及ぼしているそうです。#COP27と適応 pic.twitter.com/OYAwUDSLsA
【#COP27 現地レポ!タイ🇹🇭パビリオン紹介】
— 国立環境研究所 A-PLAT (@APLAT_JP) November 15, 2022
日本に毎年50トンもの量が輸入されているタイのドイタンコーヒー。#コーヒー は #気候変動の影響 から今後、収穫が難しくなっていくことが予測されており、適応の分野でも様々な策が講じられています☕️#COP27と適応 pic.twitter.com/ATMpoVVyNS
【#COP27 現地レポ!Dear Earth...地球へお手紙💌】
— 国立環境研究所 A-PLAT (@APLAT_JP) November 18, 2022
子どもと若者のパビリオンでは、子ども達から地球への手紙が展示されている場所がありました。変わりゆく君に寄り添って、日々の変化に適応しながら共に生きていきたいと書こうかな🌏あなたなら何と書きますか?#COP27と適応 pic.twitter.com/iul7mhTOhv
各パビリオンを周って特に印象的だったのは、子どもたちと若者のパビリオンで壁一面に展示されていた子どもたちから地球へのお手紙。そこに並んでいたのは、この地球に育まれてきた子どもから地球へのラブレターでした。「地球さん、僕が毎朝日の光を浴びて、美しい海へ駆けていけるのは、あなたがいてくれたから」「地球さん、いつも美味しい大地の恵みを与えてくれてありがとう」「地球さん、ごめんね」―恐れや迷いのない子どもの真っ直ぐなメッセージは、多くの来場者の胸に刻まれ、勇気を与えてくれたと思います。
今回のCOP27では、懸案事項の一つだった気候変動による被害を受けている発展途上国側が先進国に求めていた「損害と損失」への保証に対する資金援助の合意が成立するなどの進展がありました。しかし、気候変動の影響への見通しは決して明るいものではありません。「気候変動による影響は予想を超える速度で大きくなっており、適応策を講じることは非常に重要ですが、それをもってしても被害を完全に回避することはできない」という見解が科学者たちにより改めて共有されました。次世代に少しでも長く、美味しいご飯や安全な水を残すため、安心して眠ることができる場所を残すため、そして美しい自然を残すために、今行動を起こさなくてはなりません。