COP28セミナーレポート:アジア太平洋地域における気候変動リスク評価のための科学的ツールとシナジーの進展
開催日 | 2023年12月11日(UAE時間) |
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開催場所 | ジャパンパビリオン、Expo City Dubai、アラブ首長国連邦(当日の動画) |
2023年12月11日にドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)のジャパンパビリオンで開催された本セミナーでは、気候変動への適応に関するツールを紹介し、ツール開発の課題や具体的な次のステップについて議論しました。
環境省の小早川鮎子氏による開会の挨拶の後、国立環境研究所(NIES)から増富祐司氏が、気候変動の予測を可視化するための高度な科学的ツールであるClimoCastを紹介しました。増冨氏は、気候変動の影響に対処する人々が直面する課題に効果的に対処するために、日本の伝統的なツールである「まごの手」を例に出し、使いやすいツールの開発の重要性を強調しました。地方自治体の将来気温と降水量などを簡単にみることができるClimoCastは、痒い所に手が届くまごの手として機能することを示すため、実際にツールのデモンストレーションを行いながら説明されました。
もう一つの「まごの手」ツールとして、国際連合アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の丸一大輔氏が、気候変動による複合的なリスクを調べることができるRisk and Resilience Portalを紹介しました。このポータルは、異なる気候シナリオ下での自然災害のホットスポットを特定し、将来の気候災害から生じ得る経済的損失を推定することができます。
パネルディスカッションでは、モデレーターの吉田有紀氏(NIES)のもと、気候変動の影響に適応するための既存の科学的ツールにおける障壁とニーズとは何か、そして気候変動への適応のための科学的ツールをさらに進化させるために必要な次のステップについて議論されました。
アフメド・ラシード氏(モルディブ気象庁気象局長)は、気候変動がモルディブに及ぼす影響について概説し、科学に基づいた気候変動の影響評価の重要性を強調しました。
カルマ氏(ブータン国立水文気象センター氷河サービス部門長)は、ブータンやアジア太平洋地域の多くの国で、科学に基づいた影響評価を行うための財源が不足している等の課題を指摘しました。
オファ・カイサミ氏(太平洋気候変動センター(PCCC)マネージャー)は、気候変動適応におけるツール開発において、島嶼国の現在の課題を説明し、ツールに関する情報整理や、政策立案者がこれらのツールを適応計画に活用するための能力開発の必要性を訴えました。
ノエル・オブライエン氏(アジア開発銀行(ADB)気候変動と持続可能な開発部門(CCSD)気候変動ディレクター)は、投資の観点から、気候にレジリエントな都市計画の一部となるツールの開発を考慮することが重要であると述べました。
ヒョンギュ・キム氏(韓国環境研究院(KEI)研究員)は、韓国で将来の気候リスク予測ツールの開発に取り組むKEIの取り組みを紹介しました。
サンジャイ・スリバスタヴァ氏(ESCAP災害リスク削減セクション長)は、モルディブでの成功事例を例にとり、政府が適応的な行動を取るのを支援するために気候予測をカスタマイズすることの重要性を強調しました。
本セミナーの共催したNIESとESCAPは、アジア太平洋地域での適応のためのツール開発の次のステップを進めています。これまで共同で進めてきた高解像度のデータを用いた気候リスク予測を、アジア太平洋地域の国々がカスタマイズできるようにプロジェクトを拡大していく予定です。
本セミナーが、アジア太平洋地域における気候変動適応に関与するステークホルダー間の協力を強化することにつながることを願っています。
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