令和5年度 地域の気候変動適応推進に向けた意見交換会

開催日 2023年12月22日
開催地 ビジョンセンター東京京橋
参加者 LCCAC・地方公共団体など:61名(都道府県48、市10)
国の研究機関:16名

地域の気候変動適応を推進することを目的に「令和5年度 地域の気候変動適応推進に向けた意見交換会」を開催しました。※意見交換会のプログラムと講演資料はこちらからご覧いただけます。

集合写真

地域気候変動適応センターやセンター設置に取り組む自治体関係者や国の研究機関にご参加いただき、午前中は地5つの域気候変動適応センターの方々から、テーマに沿った活動の変遷や、成果、課題等についてご講演いただきました。

講演資料表紙
講演の様子

【情報収集・調査研究への取組】

自然系調査研究機関連絡会議(H28年静岡開催)にて行った気候変動適応に関する講演をきっかけにネットワークが広がり、センター設置に繋がったこと、国民参加事業への参画、県温暖化防止推進センターと連携したワークショップの開催、大学と共同で実施した適応ビジネスの情報収集など、「縁」を生かした様々な取組について紹介がありました。会場からは、農業関係の縁から、他分野での協力関係に発展した事例が印象的だったという声がありました。(発表者:静岡県気候変動適応センター 神谷 貴文 主査)

講演資料表紙
講演の様子

【施策推進支援の取組】

冒頭、これまでの活動経緯につきお話があり、大学へのセンター設置は当時初だったこと、研究×教育×社会実践を3本柱に適応を推進し、特に農業分野や災害分野の気象データ・将来予測・適応情報の収集と解析に注力されてきたことなど紹介がありました。また、県及び市町村関連委員会への参画をはじめ、研究機関として自治体の計画策定・改定及び適応策の策定支援にどのように取り組まれてきたかにつき説明いただきました。(発表者:茨城県地域気候変動適応センター 横木 裕宗 教授/センター長 )

講演資料表紙
講演の様子

【普及啓発の取組】

センター設置から長年取り組まれてきた、かながわ気候変動学習教材作成の背景や概要について紹介がありました。高校生・中学生・小学生向けの3部構成になっており、完成・公開までに関係者とどのような調整を図ったか、また教材をいかに周知したかなど具体的な方策を知る機会となりました。今後の課題として、興味のある先生や必要としている先生にいかに伝達するか、また、普及啓発の実施効果をいかの定量的に測定するかなどが挙げられました。(発表者:神奈川県気候変動適応センター 田澤 慧 主査)

講演資料表紙
講演の様子

【ステークホルダーの取組】

「将来人の立場で社会をデザインする」Future Designの企画から実現に至るまでの経緯について説明がありました。「気候変動下の京都の農業」について、産・官・学が視点の違いを前提としつつも対等に情報や知見を共有し、将来ヴィジョンを考える討議を実施。現在の制約から自由になれるFuture Designの仕組みは、専門的知見を率直に伝え合う場として有効であること、根本的かつ包括的な適応策の策定に活用し得ることが示唆されました。(発表者:京都気候変動適応センター 一原 雅子 外来研究員)

講演資料表紙
講演の様子

【基礎自治体の取組】

埼玉県と所沢市とのセンター共同設置の経緯、県との役割分担、計画改定に向けた気候変動影響調査や職員研修、他部局と協働した再エネの普及など多岐に渡る活動を紹介いただきました。世界首長誓約の国際会議で発表された、市有施設の屋根貸しによる太陽光発電事業(市内小中学校31校に設置、災害時には避難所の非常用電源として活用)等が紹介され、会場からは「たいへん参考になる先進的事例」との声が上がりました。(発表者:所沢市気候変動適応センター 濱本 恵代 主任)

ディスカッションの様子

午後は参加者が10グループに分かれ、2つのテーマでディスカッションを行いました。前半は多様なメンバーで構成されるグループでLCCACが活動する上での課題を共有し、後半は設置母体が共通するグループでLCCACの将来像について議論をしました。

各グループ発表では、活動上の課題として、気候予測データの取扱の難しさ、適応の認知度の低さ、部局間の壁、予算確保、人事異動による業務継続の難しさ等が挙げられました。

また、LCCACの中長期的なあり方に関しては、「適応のコンシェルジュ/ワンストップ相談窓口」、「地域づくりの総合マネジメント/プラットフォーム」を目指すといった統合的な役割を志向するセンターや、「調査研究」、「普及啓発」などに特化した役割を目指すセンターなど、多様な展開の可能性が議論されました。
環境省や国立環境研究所への要望としては、継続的な財政支援、人材育成(能力開発)、定量的な進捗管理指標の提示、地域発の共同研究の立ち上げなどが挙げられました。

今回の意見交換会では、「理想とするLCCACの将来像、取組の方向性」、「そのためには何が必要か」等について多くのご意見をいただきました。これらのご意見を踏まえ、LCCACの役割・業務の発展に資する業務ガイドブック的な参考資料の作成を検討してまいります。

貴重な事例紹介をしていただいた発表者の皆様や、グループディスカッションにて積極的に発言いただいた参加者の皆様のおかげをもちまして、たいへん活発かつ有意義な意見交換ができましたことを、弊所一同心より感謝申し上げます。

意見交換会の様子

なお、前日の12/21日(金)に令和5年度地域の気候変動適応推進に向けた意見交換会が都内で開催され、意見交換会と併せて多数のご参加を賜りました。詳細は下記の特設ページをご覧ください。
令和5年度 気候変動適応の研究会シンポジウム・分科会 特設ページ(A-PLAT)

アンケート結果(回収件数44※各設問の回答総数は不定)

参加者の所属機関

グラフ:所属機関

午前のプログラムでの事例紹介について、ご感想などを自由にご記入ください(任意)

  • 紹介されたような事例が全国各地のLCCACで実践されるようになれば、社会は変化する。今必要なことは、全国各地にLCCACを組織すること。
  • 他のLCCACにおける実践例を具体的に聞けたことはたいへんよかった。国民参加ロスなど、自分たちの課題を他のLCCACも共有していることを実感し、午前に聞いた内容が午後の議論に生きたと思う。
  • 設置母体等が異なるLCCACが、それぞれ工夫しながら事業を進めているところに差を感じられて参考になった。演者とテーマ選定のバランスが良いと感じた。時間配分もちょうどよかった。
  • こちらと同様の事業を実施しているセンターの状況、情報を知ることができて、意見交換をする上でも有意義だった。
  • 適応センターとして、実施することとなっている様々な分野の事業の話を聞くことができてたいへん参考になった。
  • 担当者が変わっても打ち切りにならないような仕組みづくりが必要と感じた。

グループディスカッション①「活動の課題を共有する」についてご感想をお聞かせください。

グラフ:グループディスカッション①の感想

グループディスカッション①について、ご意見、ご感想などを自由にご記入ください。(任意)

  • グループ分けは工夫されていたし、議題も進めやすく的を射ていたと思う。
  • グループ①②と、所属が異なるグループと類似するグループそれぞれで情報共有でき、とても良かった。まとめ役の方の配置により話し合いもスムーズだった。
  • センターを設置していない自治体でも意見が出しやすい雰囲気で、グループ内の皆さんの課題が把握できてとても勉強になった。
  • 他の自治体の活動が知れてよかったが、さらに聞きたいことがあり、もっと時間があってもよかった。
  • 状況の異なるセンターの課題を知ることができたのは有意義だったが、状況が異なるがゆえに課題の掘り下げるには時間的に難しかった。
  • 研究者として関わっているのか、行政部門で関わっているのか、視点や課題感が違う部分もあり、時に噛み合わない議論もあったように思う。今回は今回でとても勉強になり、刺激を受けたのでこのスタイルは継続すべきと思うが、別途、センターへの関わり方の違いによるグループ分けでの意見交換もしてみたかった。
  • 各センターで、設置母体によって強みと弱みが異なることがわかった。関係機関との協力体制や、窓口となる担当者の意識にも温度差があり、メンバーの苦労が窺えた。

グループディスカッション②「LCCACの将来像を検討する」についてご感想をお聞かせください。

グラフ:グループディスカッション②の感想

グループディスカッション②について、ご意見、ご感想などを自由にご記入ください。(任意)

  • 似た境遇のグループ分けになっており、当市と比較ができ、どの段階にいるかを確認できた。限られた時間の中でのグループワークのため、もっといろいろなお話を聞きたかった。
  • 似た性質の機関は、似た悩みやジレンマを抱えていることがよく分かった。
  • 全体発表で意見が様々でていることが面白いと思った。将来像を通して要望につながっていていいテーマだと思った。
  • 同じような立場の方と話すことで同じよう課題を抱えていることが認識できた。
  • 話が長い方もいて、ディスカッションにならず時間内に一度しか発言できない場面もあった。自分が発言できないことよりも、他の自治体の方から広く話が聴けなかったことが非常に残念。
  • あまり明るい将来像は出てこなかった。適応センターの活動にも予算がある程度必要だが、その予算が減らされていることなど、他の都道府県の事例も聞けたのは良かった。

グループディスカッションの時間

グラフ:グループディスカッションの時間

意見交換会への満足度

グラフ:満足度

グループディスカッション②について、ご意見、ご感想などを自由にご記入ください。(任意)

  • 普段なかなか意見交換の機会がないLCCACの職員たちが課題を共有しあいながら知恵を出し合えた。前日の懇親会があったこともあるのか、皆とても自由に積極的に発言しやすい雰囲気ができていたように思う。
  • 前回、前々回よりも、課題が具体的になったように思う。それを共有し、課題解決のための議論ができたことは本当にためになった。やはり対面がいい。
  • 内容は良かったが、時間が足りなかった。同じ内容を1日半か2日に分けても良かったかも知れない。
  • ウェブ上では他県の状況を把握・聞き取りすることに限界がある。対面による意見交換会はたいへん有意義に感じた。
  • 他のLCCACと対面で話せたことは大きかったと思う。自分のLCCACの強みや欠点が分かった。また参加したい。
  • 内容は満足だが、時間が足りないと思った。会場からの意見にもあったが、複数日での開催も検討してほしい。(環境省の研修所などを活用できれば費用も抑えられるかと)
  • NIESや地域気候変動適応センターの方と直接意見交換できたのは非常に有意義だった。
  • もう少し市町村の参加があるといいと感じた。
  • この意見交換会で何をアウトプットとして得るのか、ゴール地点が最後まで不明で意見が発散した印象を受けた。

国立環境研究所への要望など自由記載(任意)

  • いわゆる「国民参加ロス」へ、具体的な好事例をいくつか紹介してほしい。
  • 首長クラス対象の意見交換会があってもよい。
  • ウェブでの会議では限界がある。定期的(年に1回程度)に各県担当者が対面で集まった上で、情報交換を行うことで、各地域の実情を把握できるとともに、自身のモチベーションアップにもつながる。
  • 分科会と意見交換会が連続開催だったため、両方とも参加できた。本意見交換会の継続をお願いしたい。
  • 適応センターの職員だけでなく各自治体の適応担当者とも話す機会があればと思う。
  • COOL CHOICEで貸し出していたVRゴーグルのような、気候変動適応に関する貸出ツールがあるとよい。(特に、子供たちが前向きになれるようなもの。)

自由記述については、記載内容を抜粋するとともに、類似する内容については一部統合させていただきました。今後の研修の企画運営や気候変動適応推進の参考とさせていただきます。
意見交換会へのご出席、アンケートへのご回答ありがとうございました。

出典・関連情報
(2024年6月24日掲載)

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