すみだの雨水利用
掲載日 | 2024年9月4日 |
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分野 | 自然災害・沿岸域 / 水環境・水資源 |
地域名 | 関東(東京都墨田区) |
気候変動による影響
近年、地球温暖化により局地的な集中豪雨が頻繁に発生しています(注1)。このような状況下で、東京では近年、市街地の拡大に伴い地域の持つ保水、遊水機能が低下し、河川や下水道に大量の雨水が一気に流れ込むことから生ずる河川の氾濫や下水道管からの雨水の吹き出しなど、いわゆる都市型水害(注2)と言われる浸水被害にたびたび見舞われることが課題となっています。
取り組み
墨田区では、1981年頃から、錦糸町や両国地区などで都市型水害にたびたび悩まされてきました。当時、台東区にあった蔵前国技館を墨田区へ移す際、墨田区は日本相撲協会に洪水防止と水資源の有効活用のため、国技館における雨水利用の導入を申し入れました。その結果、国技館ではトイレの流し水や冷却塔(注3)の補給水等に、貯めた雨水を活用しています。
1983年には、区内で初めての本格的な雨水利用を導入する児童館が完成しました。これ以降、積極的に雨水利用を推進していくため、墨田区の新施設には、原則として雨水利用が導入されることになりました。例えば、墨田区役所庁舎には、約1,000立方メートルの雨水貯留槽があり、トイレの洗浄水に利用しています。
さらに、民間施設にも雨水利用を普及するため、1995年10月に墨田区雨水利用促進助成金制度ができました。この助成金を活用し、約330件の施設に雨水利用が導入されています(2024年3月末現在)(図1、図2)。
また、雨水利用に取組む全国の自治体がネットワークを結び、雨水利用の情報や技術の交流を図るため、1996年7月に雨水利用自治体担当者連絡会が設立されました。2016年4月からは、この連絡会は「雨水ネットワーク」(注4)の行政部会に組織を移行し、自治体同士だけでなく、事業者や市民の方々とより一層の連携を図ることとなりました。
効果/期待される効果等
墨田区雨水利用促進助成制度の利用と墨田区開発指導要綱(注5)及び墨田区集合住宅条例(注6)による雨水貯留槽設置の指導により、区内の雨水総貯留量は年々増加しています(図3)。このように貯留した雨水は、水資源として有効に利用することが可能となり、都市型洪水の対策へも寄与します。
また、墨田区が長年進めてきた雨水利用の取組は、ICLEI(国際環境自治体協議会)から高い評価を受け、2000年7月、国際環境賞の「水」部門で優秀賞を受賞しました(注7)。また、この受賞を機に、墨田区の雨水利用を広く発信するために「すみだ環境ふれあい館(雨水資料室)」が開設されました(現在は閉館)。
脚注
(注1)気象庁の全国 51 の観測地点における、日降水量 100 mm 以上及び 200 mm 以上の大雨の日数は、いずれも増加した(統計期間:1901~2019年)。気象庁の全国約 1,300 地点のアメダス観測地における、1時間降水量 50 mm 以上及び 80 mm 以上の短時間強雨の年間発生回数は、いずれも増加した(統計期間:1976~2019年)。
(注2)河川や下水道に大量の水が一気に流れ込むことから生じる河川の氾濫や下水道管からの雨水の吹き出しなどによる水害のこと。
(注3)クーリングタワーとよばれ、主に建物の屋上に設置される。水と大気を接触させて水を蒸発させることにより、水によって運ばれた室内の熱を大気に放出して温度を下げる役目がある。(出典:東京都社会福祉施設管理者のための環境衛生設備自主管理マニュアルよりhttps://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kankyo/eisei/yomimono/shakaifukushishisetu/shakaifukushishisetu-manyuaru.files/102kuutyou.pdf)
(注4)雨水活用や雨を主とした水循環系の健全化等に関わる市民・企業・行政・学会等が形成する “緩やかな情報のプラットフォーム”https://www.rain-net.jp/
(注5)墨田区良好な建築物と市街地の形成に関する指導要綱のこと。
(注6)墨田区集合住宅の建築に係る居住環境の整備及び管理に関する条例のこと。
(注7)1.独創性、2.市民と行政のパートナーシップ、3.世界に普及できる思想と技術を持つという点で高い評価を得た。
出典・関連情報