「東京都交通局浸水対策施設整備計画」の策定

掲載日 2024年6月10日
分野 自然災害・沿岸域 / 国民生活・都市生活
地域名 関東(東京都)

気候変動による影響

近年、気候変動に伴い集中豪雨等による水害リスクが高まっています。2015年には水防法が改正され、全国的に浸水が想定される区域が拡大するとともに、地域によっては想定される浸水深も深くなっています。また、国の中央防災会議において示された荒川氾濫時の被害想定では、地上の浸水のみならず、氾濫水が地下鉄のトンネル等を通じて都心部まで達することで被害が拡大する可能性が指摘されています。

取り組み

東京都が2022年に策定した「TOKYO強靭化プロジェクト」では、「地下鉄の浸水対策」をリーディング事業として位置付け、浸水に伴う被害拡大防止を推進していくこととしています。このプロジェクトを推進する事業として、東京都交通局では、都市型水害に加え、荒川氾濫や高潮といった大規模水害による浸水被害をシミュレーションした上で対策を検討し、施設整備の方向性や具体的な整備手法、手順を取りまとめた「東京都交通局浸水対策施設整備計画」を策定しました。

この計画では、都市型水害(注1)と大規模水害(荒川氾濫・高潮)による浸水を対象として被害の想定をしています。対象とする水害の浸水予想区域図等を全て重ね合わせた結果、都営地下鉄の路線の多くの範囲が、浸水深に差はあるものの、浸水区域内に位置していることが分かりました(図1)。特に、大規模水害については、東京メトロと連携してシミュレーションを実施し、荒川氾濫では、荒川右岸21kmが破堤(注2)、荒川右岸9.5kmが破堤した場合に、地下に流入した水がトンネルや乗換駅の接続部を通じて広がり、地下鉄ネットワークへの被害が特に大きくなることが確認できました。

この結果を受けて、東京都交通局では、都市型水害の対策を図りつつ、荒川氾濫や高潮による大規模水害への対策を計画しています(図2、図3)。

本対策では、駅出入口や通風口など、浸水のおそれのある全ての箇所での対策の実施を基本とし、地下鉄ネットワークによる浸水区域の拡大を防止するとともに、車両の被害を防ぐため地下車庫の浸水対策を実施する予定です。

災害種別 主な対策 完了時期(予定)
都市型水害 駅出入口への止水版・防水扉・防水シャッターの設置 2030年代半ば
大規模水害 (荒川氾濫) 駅出入口への止水版・防水扉・防水シャッターの設置
トンネル、地下車庫への防水ゲートの設置
駅構内への防水扉の設置
2040年頃
大規模水害 (高潮) 2040年代半ば

また、車両避難手順の見直しやお客様の避難誘導訓練等のソフト面での取り組みの他、地上の浸水に備えて、都営バスや都電荒川線、日暮里・舎人ライナーへの対策も計画されています。

効果/期待される効果等

都市型水害については、地下鉄駅出入口に止水板等を整備することにより、想定される最大規模の降雨に対しても流入防止が可能になります。

大規模水害に対しては、駅出入口等の地上部対策のほか、他の鉄道事業者等と連携の下、トンネル内防水ゲートや駅構内防水扉の整備を着実に進めることにより、地下鉄ネットワーク全体の減災効果が期待されます(図4)。

浸水予想区域図等の重ね合わせ図と都営地下鉄各路線図
図1 浸水予想区域図等の重ね合わせ図と都営地下鉄各路線図
(出典:東京都交通局「東京都交通局浸水対策施設整備計画」)
主な整備手法と整備箇所
図2 主な整備手法と整備箇所
(出典:東京都交通局「東京都交通局浸水対策施設整備計画」(2023年2月))
対策の全体スケジュール
図3 対策の全体スケジュール
(出典:東京都交通局「東京都交通局浸水対策施設整備計画」(2023年2月))
想定される整備効果
図4 想定される整備効果
(出典:東京都交通局「東京都交通局浸水対策施設整備計画(概要)」)

脚注
(注1) 河川や下水道に大量の水が一気に流れ込むことから生じる河川の氾濫や下水道管からの雨水の吹き出しなどによる水害をいう。
    (出典:東京都防災会議「東京都地域防災計画 風水害編(令和3年修正)」)
(注2) 堤防が壊れ、増水した川の水が堤内地に流れ出すこと。
    (出典:国土交通省山形河川国道事務所ウェブページ「最上川電子大辞典」

出典・関連情報

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