「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」は、気候変動による悪影響をできるだけ抑制・回避し、また正の影響を活用した社会構築を目指す施策(気候変動適応策、以下「適応策」という)を進めるために参考となる情報を、分かりやすく発信するための情報基盤です。

高山帯・亜高山帯の生態系に及ぼす影響への対策

掲載日 2019年12月26日
分野 自然生態系
地域名 関東(静岡県)

気候変動による影響

地球温暖化は、高山帯の気温の上昇をもたらし、自然環境の変化を引き起こす可能性があります。静岡県では近年、積雪量の減少により、ニホンジカが高山帯へ生息域を拡大し、高山植物群落への影響が問題となっています。また、富士山頂付近では永久凍土の減少、イワノガリヤスなどの維管束植物の侵入、コケ類・ラン藻類の量の減少、種子植物の分布の変化が観測されています。さらには中部山岳域ではハイマツの分布縮小、南アルプスではライチョウの個体数の減少などが懸念されています。

取り組み

静岡県は、本県の生物多様性の将来像やその実現に向けた方策を示すとともに、行政だけでなく、県民や事業者、民間団体を含む多様な主体の自発的な取組として展開していくためのガイドラインとすることをねらいとして、「ふじのくに生物多様性地域戦略」を策定しました。この戦略では、行動方針に次のような取組が示されており、その取組が進められています。南アルプス、奥大井地域を中心に、ニホンジカの食害防止対策として、その移動を阻害するための防鹿柵(植生保護柵)を設置しています(図1)。また、外来種防除としては、富士山への外来植物の侵入や分布拡大を防止するため、定期的な分布確認調査や登山道の入口に外来植物の種子を除去するマットの設置等、侵入防止対策の充実を図ることとされています。さらに、県民意識を高めるための保護対策の担い手の育成のため、静岡県高山植物保護指導員を委嘱し、研修会を行っています(図2)。

効果/期待される効果等

「ふじのくに生物多様性地域戦略」との整合を図り対策を進めることで、高山帯・亜高山帯の生態系への気温上昇による影響の低減等が期待されます。

図1 南アルプス(三伏峠)の防護柵設置状況
(出典:静岡県「静岡県の気候変動影響と適応取組方針」2019年3月策定)

図2 高山植物保護指導員研修会
(出典:静岡県「静岡県の気候変動影響と適応取組方針」2019年3月策定)

出典・関連情報
環境省自然環境局生物多様性センター「モニタリングサイト 1000 高山帯調査-重要生態系監視地域モニタリング推進事業-2008~2012 年度とりまとめ報告書」
https://www.biodic.go.jp/moni1000/findings/reports/pdf/h20-h24_alpin_zone.pdf
静岡県「静岡県の気候変動影響と適応取組方針」2019年3月策定
https://www.pref.shizuoka.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/016/103/tekiouhousin.pdf
静岡県「ふじのくに生物多様性地域戦略[2018-2027]」
https://www.pref.shizuoka.jp/kankyou/ka-070/wild/seibutsutayousei.html