「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」は、気候変動による悪影響をできるだけ抑制・回避し、また正の影響を活用した社会構築を目指す施策(気候変動適応策、以下「適応策」という)を進めるために参考となる情報を、分かりやすく発信するための情報基盤です。

雪割りによる野良イモ防除

掲載日 2020年1月6日
分野 農業・林業・水産業
地域名 北海道

気候変動による影響

北海道の十勝地方やオホーツク地方では、寒さが厳しく積雪が少ないため、冬に畑の土が凍結します。土壌凍結が深くなることで、畑で収穫漏れしたバレイショの多くが凍結死します。しかし近年、初冬の積雪量が増加し、雪の断熱効果で土壌凍結※1が浅くなってきています。その結果、バレイショが凍結せず、翌年に雑草化し「野良イモ」となる問題が深刻化しました。野良イモは、雑草として畑地の肥料分を収奪して輪作※2の後の作物の生育を阻害する他、病害虫の温床、他品種のイモの混入要因にもなります。

※1 土壌凍結とは、土壌中に含まれる水分が凍る現象です。土壌凍結が発達するのは日平均気温が0℃以下で積雪深が20cm以下に限られます。(出典:北海道釧路総合振興局ホームページ)
※2 地力維持を目的に異なる種類の作物を同一の耕地に一定の順序で繰り返して栽培することです。(出典:農研機構「農業技術辞典 NAROPEDIA」)

取り組み

農研機構では、これまでに畑を縞状に除雪する「雪割り」(図1)によりイモの越冬を効果的に防止できることを実証しました。生産者により畑の雪を縞状に除雪して土壌を人為的に凍らせて野良イモを凍結死させます。人力による収穫漏れの抜き取り作業に比べ、雪割りは作業時間が短く、大幅に省力化することができました。

一方で、土壌凍結を深くし過ぎると、融雪水が土中に浸透し難くなることで、①春先の融凍が遅れ農作業が遅れる、②土からの温室効果ガス排出が春先に増大するなど、野良イモの課題解決が生産性や環境に及ぼす影響が懸念されてきました。そこで、農研機構北海道農業研究センターは、土が凍結する深さを約30cm(28cm以上33cm未満)に制御することで、野良イモの発生を防ぎつつ、畑に残った窒素肥料由来の硝酸態窒素の流出による水質汚染も抑えられることが期待できることも明らかにしました(図2)。

効果/期待される効果等

土壌凍結によって、安定的な野良イモ対策を可能とする大幅な省力化が実現しました。

一方で、土壌凍結の深さを過剰に深くしないことは、冬の雪割り作業を効率化し、作業コストや燃料消費を節約する効果もあります。また、温室効果ガスの排出を回避しつつ、畑の作土に硝酸態窒素を残すことで環境保全につながるだけでなく、土壌肥沃度の維持や作物収量の増加など、生産性の向上も期待でき、寒冷地における生産性向上と環境負荷低減に役立ちます。

図1 雪割りを行った畑
(出典:農研機構プレスリリース)

図2 雪割りのメリット
(出典:農研機構プレスリリース)

出典
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構) プレスリリース「(研究成果) バレイショの越冬・雑草化を防ぎ、かつ環境にも優しい土壌凍結の深さを決定」2017年10月26日公開
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/press/laboratory/harc/077929.html
農研機構北海道農業研究センター産学連携室「北海道農研ニュース 第61号」2018年10月31日発行
http://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/files/newsvol61.pdf
関連情報
地球温暖化と農林水産業
https://www.naro.affrc.go.jp/org/niaes/ccaff/