気候変動による影響
英国のヨークシャー・デール国立公園では、ビショップデール川の氾濫により主要道路が通行不能となり、住民が学校や病院、店等のインフラからの孤立が問題となっています。昨今の気候変動科学は、豪雨の激化と頻度の増加を予測しているため、洪水リスクの管理に関する考え方を変える必要があります。
掲載日 | 2020年2月10日 |
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分野 | 自然災害・沿岸域 / 国民生活・都市生活 |
地域名 | 海外(イギリス) |
英国のヨークシャー・デール国立公園では、ビショップデール川の氾濫により主要道路が通行不能となり、住民が学校や病院、店等のインフラからの孤立が問題となっています。昨今の気候変動科学は、豪雨の激化と頻度の増加を予測しているため、洪水リスクの管理に関する考え方を変える必要があります。
2018年夏より、英国環境庁、ヨークシャー・デール河川信託、ヨークシャー・デール国立公園、地域住民が協働し、自然を活かした洪水管理(Natural Flood Management)に取り組んでいます。NFMは、洪水に備える時間を稼ぐため、河川や氾濫原、広い集水域の自然機能を復元、またはそれに倣い造成することにより、洪水時における河川下流の最大水位を下げ、洪水ピーク(洪水発生時における最も高い流量水準)への到達を遅らせることを目的とした手法です。これには、流出管理、堤防や木質小堰堤(木の瓦礫を利用したダム(図1))の整備、土壌管理、林地造成、河畔緩衝地帯の整備、及び氾濫原を利用した放牧等が含まれます(図2)。また、ヨークシャー・デール国立公園は、実際に対策に関わる農家や土地管理者からの要請で「自然を活かした洪水管理-農業者のための実践的なガイド」を公表し、分かりやすい情報を提供しています。
NFMは工学的な防護策よりも伝統的な手法に沿ったシンプルな技術であり、生産レベルの犠牲や土地利用を大きく変更することなく洪水のリスクを軽減できると期待されています。
図1 木の瓦礫を利用したダム
(出典:Catchment Based Approach「NATURAL FLOOD MANAGEMENT MEASURES: A PRACTICAL GUIDE FOR FARMERS」)
図2 ヨークシャー・デール国立公園内で自然を活かした洪水管理が実施可能な立地
(出典:国土技術政策総合研究所「水技術政策に関する海外最新情報【H31-1 号】」)