「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」は、気候変動による悪影響をできるだけ抑制・回避し、また正の影響を活用した社会構築を目指す施策(気候変動適応策、以下「適応策」という)を進めるために参考となる情報を、分かりやすく発信するための情報基盤です。

医療センターの洪水ハザード緩和計画

掲載日 2021年1月29日
分野 自然災害・沿岸域
地域名 海外(アメリカ合衆国テキサス州)

気候変動による影響

アメリカでは気候変動により豪雨の頻度が増しており、洪水のリスクが高まっています。2001年、ヒューストンは、熱帯性低気圧アリソンが引き起こした1000年に一度の歴史的な洪水に見舞われました。医療施設が集まるアメリカ最大のテキサス医療センターでは、非常用発電機や電気開閉装置、ボイラー・冷却装置が損害を被り、またベイラー医科大学では3万頭の研究動物を収容する地下階が水没しました。

取り組み

テキサス医療センターは、将来の洪水に対応するためインフラの全面的な見直しが必要であると判断し、センター内の全施設のインフラ及び電算室を予測された洪水の水位より高い場所へ移設しました。このインフラの再整備に際し、医療センターは、将来的な異常気象の影響を軽減するための42の持続可能な予防策を記載した長期のハザード緩和計画を策定しました。本計画は、アリソンの襲来後すぐに立ち上げられた策定チームによりその草案が準備され、その後、工程やスケジュール、期待される便益等に関するステークホルダーへの説明等を経て策定されました。

緩和計画には、(1)体制の整備(2)リスク評価(3)緩和計画の検討(4)計画とモニタリングの実行の4つの主要な工程が組み込まれています。その中でも、(2)リスク評価は緩和計画の最も重要な部分であり、100を超えるハザードが特定され、その中から構造物等への物理的被害、施設運営への障害、死傷等の人的被害の3つに絞り込まれました。本計画は、優先順位の高い対策から実行されており、経過がモニタリングされることにより、緩和計画の更新や修正に活かされています。

効果/期待される効果等

この緩和計画の実装により、医療センターはレジリエンスを高めるための多くのインフラの向上を実施することができました(図)。

図 地上を介さず医療センター間を移動できる空中通路
(出典:Zheng Fang他「Case Study of Flood Mitigation and Hazard Management at the Texas Medical Center in the Wake of Tropical Storm Allison in 2001」)

出典・関連情報
U.S. Climate Resilience Toolkit「After Record-Breaking Rains, a Major Medical Center's Hazard Mitigation Plan Improves Resilience」
https://toolkit.climate.gov/case-studies/after-record-breaking-rains-major-medical-centers-hazard-mitigation-plan-improves
Zheng Fang他「Case Study of Flood Mitigation and Hazard Management at the Texas Medical Center in the Wake of Tropical Storm Allison in 2001」2014 American Society of Civil Engineers.
https://www.buildinggreen.com/sites/default/files/Fang14TMC_Final.pdf