「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」は、気候変動による悪影響をできるだけ抑制・回避し、また正の影響を活用した社会構築を目指す施策(気候変動適応策、以下「適応策」という)を進めるために参考となる情報を、分かりやすく発信するための情報基盤です。

「いろは呑龍トンネル」による浸水被害の解消

掲載日 2021年1月29日
分野 自然災害・沿岸域
地域名 近畿(京都府)

気候変動による影響

京都市西京区、南区、向日市、長岡京市にまたがる桂川右岸地域は、度重なる浸水被害に悩まされてきた歴史的な地域です。このことが長岡京造営からわずか10年で平安京へ遷都となった一因といわれています。近年では、急激な都市化が進み、多くの雨水を排水しきれない「都市型浸水」が何度も発生しています。今後、気候変動による極端な大雨が増えれば、そのリスクがさらに高まると懸念されています。

取り組み

京都府では、平成7年度に京都市、向日市、長岡京市にまたがる地域の浸水対策として、地下トンネル「いろは呑龍トンネル」(図1)の整備を開始しました。これは、大雨で増水した雨水を地下のトンネルに貯留しながら、同時に桂川へ放流することにより浸水被害を防ぐものです。
平成13年から平成23年の期間に3つの北幹線管渠が敷設され、順次供用を開始し、最終的には最大で107,000㎥の雨水を貯留できるようになりました。また、令和3年には南幹線及び呑龍ポンプ場の暫定供用が開始され、桂川へ毎秒10㎥で放流する予定です(図2)。全体供用は、令和5年を予定しており、最終的に雨水調整池が整備されると、施設全体の対策量は238,200㎥になります(図3)。

効果/期待される効果等

平成25年9月の台風18号では、京都府に全国で初めての大雨特別警報が発令され、各地で浸水被害が発生しました。いろは呑龍トンネル供用開始後、初めて北幹線管渠の貯留率100%を記録しましたが、浸水被害の戸数を106戸に留めることができました。浸水シミュレーションでは、当該施設が未整備の場合、約900戸に浸水被害が発生したと推定されたことからも軽減効果がみられました。また、施設全体が完成すれば、台風18号に相当する降雨(注)による浸水被害は解消されます。

図1 いろは呑龍トンネルイメージ図

 図1 いろは呑龍トンネルイメージ図
(出典:京都府環境部地球温暖化対策課「気候変動に適応した魅力的な京都をつくる!~京都府の気候変動適応施策~」)

図2 いろは呑龍トンネル縦断面図

図2 いろは呑龍トンネル縦断面図
(出典:京都府ホームページ「いろは呑龍(どんりゅう)トンネル(桂川右岸流域下水道雨水対策)」)

図3 いろは呑龍トンネル整備計画のイメージ画像

 図3 いろは呑龍トンネル整備計画
(出典:京都府ホームページ「いろは呑龍(どんりゅう)トンネル(桂川右岸流域下水道雨水対策)」)

脚注
(注)降雨量:275mm、時間最大雨量:41mm

出典・関連情報
京都府環境部地球温暖化対策課「気候変動に適応した魅力的な京都をつくる!~京都府の気候変動適応施策~」(平成29年3月)
https://www.pref.kyoto.jp/tikyu/news/documents/170407_tekioupanf.pdf
京都府ホームページ「いろは呑龍(どんりゅう)トンネル(桂川右岸流域下水道雨水対策)」
https://www.pref.kyoto.jp/gesuido/16400045.html
京都府 「いろは呑龍トンネルの整備と効果」
http://www.pref.kyoto.jp/seisakuteian/documents/4-36s2.pdf
樫 智徳「「いろは呑龍トンネル」の整備効果について(桂川右岸流域下水道雨水対策事業)」(2015)
https://www.kkr.mlit.go.jp/plan/happyou/thesises/2015/pdf04/02.pdf