気候変動による影響
高山帯では、地球温暖化による気温上昇、永久凍土下限高度の上昇、冬季積雪量の減少または増加、雪田、雪渓などの縮小、融解の早期化、夏期の気温上昇や霧の減少とそれに伴う乾燥化等が懸念されており、動植物の種組成、生育量や生息数、開花時期や発生時期などに影響を及ぼすことが考えられます。
また、生物多様性国家戦略(注)では4つの危機の1つとして、「地球環境の変化による危機」が挙げられ、高山帯は地球温暖化の影響が最も表れやすい環境といわれています。
掲載日 | 2020年2月10日 |
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分野 | 自然生態系 |
地域名 | 全国 |
高山帯では、地球温暖化による気温上昇、永久凍土下限高度の上昇、冬季積雪量の減少または増加、雪田、雪渓などの縮小、融解の早期化、夏期の気温上昇や霧の減少とそれに伴う乾燥化等が懸念されており、動植物の種組成、生育量や生息数、開花時期や発生時期などに影響を及ぼすことが考えられます。
また、生物多様性国家戦略(注)では4つの危機の1つとして、「地球環境の変化による危機」が挙げられ、高山帯は地球温暖化の影響が最も表れやすい環境といわれています。
環境省生物多様性センターでは、「モニタリングサイト1000」と称し、日本列島の多様な生態系について、全国にわたって1000ヶ所程度のモニタリングサイトを設置し、大学、研究機関、専門家、地域のNPO、ボランティア等と協力し、基礎的な環境情報の収集を長期に亘り継続しています。このうち高山生態系については、全国的な地域性や地域環境のバランスに配慮し、高山帯環境の変化を捉えるために効果的なモニタリングが行えるよう、大雪山、北アルプス(立山、蝶ヶ岳~常念岳)、白山、南アルプス(北岳)、富士山の5箇所の調査サイトを選定しました。また、高山生態系への様々な影響を検出できる調査項目として、気温、地温・地表面温度、植生、ハイマツ年枝伸長量、開花時期、チョウ類、地表徘徊性甲虫、マルハナバチ類が選定され、情報を蓄積しています。
例えば、ハイマツの年枝伸長量から推定される過去20年分のデータからは、長期的に気温が上昇している可能性が明らかになりました。また、富士山頂ではこれまでみられなかった種子植物がみられるようになりました(図1)。その一方で永久凍土の影響を受けているコケ類は減少していることが判明しました(図2)。
高山帯の環境や生物に関するデータが蓄積されることで、国立公園の中核部分である自然環境に関する情報が得られます。こうした情報は、国立公園のより適切な保護や利用を可能とし、高山帯の現状や課題、人為的な影響が示されることで、希少種の保護など国や地方自治体による組織的な取り組み、研究者による専門的な要因の解析、自然保護団体等による保全活動が促進されることが期待されます。
脚注
(注)生物多様性条約及び生物多様性基本法に基づく、生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する国の基本的な計画。
http://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/initiatives/index.html
図1 富士山頂で見られるようになった種子植物イワノガリヤス
(出典:環境省自然環境局生物多様性センター「モニタリングサイト 1000 高山帯調査-重要生態系監視地域モニタリング推進事業-2008~2012 年度とりまとめ報告書」)
図2 富士山頂で急速に減少しているヤノウエアカゴケ
(出典:環境省自然環境局生物多様性センター「モニタリングサイト 1000 高山帯調査-重要生態系監視地域モニタリング推進事業-2008~2012 年度とりまとめ報告書」)