「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」は、気候変動による悪影響をできるだけ抑制・回避し、また正の影響を活用した社会構築を目指す施策(気候変動適応策、以下「適応策」という)を進めるために参考となる情報を、分かりやすく発信するための情報基盤です。

既存環境情報を活用した日本全域の竹林分布推定

掲載日 2020年2月28日
分野 自然生態系
地域名 全国

気候変動による影響

近年、モウソウチクやマダケを主体とした竹林の著しい拡大状況が西日本を中心に各地で報告されており、生物多様性の低下、土砂災害の危険性、拡大先の土地利用での農林業被害、景観の劣化及び温暖化防止吸収源としての機能低下等が指摘されています。また、これまで竹林の生育分布が限られていた東日本(特に東北地方)においても、気候変動による今後の温暖化で竹林の拡大が進行する可能性があり、様々な影響を及ぼすことが懸念されています。

取り組み

竹林の分布箇所を全国規模で把握するため、既存の竹林分布データと基礎環境データを用いて日本全域における竹林分布可能域を推定し、竹林の分布に関係する環境要因を考察する研究が行われました。まず、自然環境情報GISデータ(注1)を用いて竹林に該当する箇所を抽出し(注2)、竹林の在・不在データを3次メッシュレベル(注3)で作成しました。この在・不在データと国土交通省が提供する国土数値情報等(注4)による環境要因データ(注5)から、統計的な分析(注6)により、日本全域における竹林の分布可能域の推定を示す竹林分布確率が求められました。竹林分布確率を持つ3次メッシュ(注7)を分析すると、太平洋側では宮城県以南、日本海側では新潟県以南の西日本の沿岸部の平地から丘陵地を主として竹林の広い分布が判明しました(図)。また、竹林の分布確率は、気象・気候要素(暖かさの指数、年降水量、最深積雪量)の影響を受けることが明らかとなりました。このことから、今後の温暖化に伴う北日本等分布確率の低い地域での竹林拡大が示唆されました。

効果/期待される効果等

竹林分布の実態が把握できていない地域などにおいては、この竹林分布可能域図を適用することで、どの場所で、どの程度の確率で竹林が分布するのかを具体的に把握することが可能になります。また、実態把握の優先順位付けや、竹林の拡大防止の全体計画を検討する際等において有効な資料になり得ると考えられます。

脚注
(注1)「第2-5回植生調査重ね合わせ植生」http://www.biodic.go.jp/biodiversity/about/initiatives/index.html
(注2)5つの竹林凡例を統合:竹林、モウソウチク林、マダケ・ハチク林、マダケ林、ホテイチク林
(注3)ほぼ1kmメッシュと同等
(注4)国土交通省国土政策局国土情報課 国土数値情報 http://nlftp.mlit.go.jp/ksj/
(注5)自然要因:暖かさの指数、年間降水量、最深積雪深、表層地質、斜面傾斜角。人為要因:森林率、農地率、宅地率
(注6)一般化線形モデル(Generalized Liner Model:GLM)による分析
(注7)ROC分析(Receiver Operating Characteristic analysis)により得られた閾地である0.48以上の竹林分布確率を持つ3次メッシュ

竹林の分布可能域の図

図 竹林の分布可能域
(出典:染矢貴、竹村紫苑、宮本駿、鎌田磨人「自然環境情報GISと国土数値情報を用いた日本全域の竹林分布と環境要因の推定」)

出典・関連情報
一般社団法人自然環境共生技術協会「自然環境分野における気候変動適応に寄与する技術・事例集」平成31年3月
http://www.necta.jp/pdf/adptec_all.pdf
染矢貴、竹村紫苑、宮本駿、鎌田磨人、(2010)「自然環境情報GISと国土数値情報を用いた日本全域の竹林分布と環境要因の推定」景観生態学15(2) 41-54
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jale/15/2/15_2_41/_pdf/-char/ja