気候変動による影響
三重県では夏季の気温が35℃を超える暑熱日を記録するようになり、畜産への影響が生じています。肥育豚では飼料摂取量が低下し増体が進まないことが多く、母豚の飼料摂取量の減少や生時ならびに離乳時期における子豚の体重減少などの影響が生じています。ブロイラー経営では、特に梅雨明けを中心とした暑熱時に熱射病が多発し、斃死や増体・飼料要求率などの生産性の低下、採卵鶏の産卵性の低下(産卵数や卵重の減少等)、卵殻質低下による破卵数の増加により経済的損失が増大しています。また、肉牛では採食量及び血中ビタミンA濃度低下による死亡事故、さらに乳牛では乳量・乳質の低下といったヒートストレスが懸念されています。
取り組み
三重県畜産研究所では、畜舎環境面や飼料給与面からのヒートストレスの軽減に関する研究をしています。環境面の管理としては、外気を取り入れる際に水で湿らせたパッドの隙間に空気を通すことで畜舎内の空気を冷やすクーリングパッドや、家畜の首筋に水滴を当てて体を冷やすドロップクーリング等(図1)を導入しています(表)。また、飼料給与に関する対策として、養豚における必須アミノ酸であるリジンの市販飼料への添加が挙げられます。リジンを0.4%上乗せ添加した飼料を給与した肥育豚では、110kgへの到達日数や1日の増体重は、リジンを上乗せしていない慣行飼料を給与した場合と比較して劣りますが、総飼料摂取量および総飼料費が有意に減少し、飼料効率の向上傾向が認められました(図2)。また、暑熱環境下(7~8月)の分娩から離乳までの期間の母豚にリジン強化飼料を給与すると、発情回帰の早期化や、授乳中の子豚の成長促進のような有効性もありました(図3、図4)。様々な対策を併用するなど、最大限の効果が得られるよう工夫する必要性が指摘されています。
効果/期待される効果等
畜舎環境や飼料給与の改善を図ることにより、生産性の向上と経済的な改善効果が期待されます。