気候変動による影響
気候変動により、植生に変化が生じる現象として、シカ食害や病虫害の拡大、ブナ林や高山・亜高山植生の減少や、気象害によるスギ枯損等が予想されています。
掲載日 | 2020年5月8日 |
---|---|
分野 | 自然生態系 |
地域名 | 全国 |
気候変動により、植生に変化が生じる現象として、シカ食害や病虫害の拡大、ブナ林や高山・亜高山植生の減少や、気象害によるスギ枯損等が予想されています。
気候変動による自然環境の変化へ戦略的に対応するために、広域での植生概況の迅速な把握が求められています。環境省生物多様性センターは、高頻度(1日に1~2回)且つ、一度に全国規模の観測が可能なMODIS(注1)データを活用して自然環境の概括的な把握を実施しました(注2)。
この手法では、MODISの植生指数(Vegetation Indices)を表示するに際して、雲の影響を除去したコンポジット画像(注3)が用いられており、値の高~低に応じて白~黒を割り当てたグレイスケールで表示されます(図1)。植生指数の年間の変化パターンを、トレーニングデータ(図2)をもとに植生区分ごとに整理し、画像分類を行うことで、植生の分類図を作成できます。また、MODISデータを使用して森林タイプ(落葉/常緑、広葉/針葉)の区分や植生項目が区分されている全国自然環境概況図(図3)の作成も可能となります。こうして作成した全国自然環境概況図を過年度の概況図と比較することにより、土地被覆の変化の把握も可能となります。
全国で同一年のデータをもとにした統一的な解析手法は、植生や生態系の異変をいち早く捉えることを可能とし、迅速かつ適切な保全施策への活用が期待できます。
図1 解析に使用した2009年における MODIS 植生指数の16日間コンポジット画像の例
(出典:角田 里美、中澤 明寛、染矢 貴、塚本 吉雄、柳川 智巳、清水 乙彦「リモートセンシング技術による全国の自然環境概況の把握」)
図2 トレーニングデータによるNDVI(注4)季節変化パターン(西日本)の例
(出典:一般社団法人自然環境共生技術協会「自然環境分野における気候変動適応に寄与する技術・事例集」)
図3 2009年のMODISデータを使用して作成した全国自然環境概況図
(出典:角田 里美、中澤 明寛、染矢 貴、塚本 吉雄、柳川 智巳、清水 乙彦「リモートセンシング技術による全国の自然環境概況の把握」)
脚注
(注1)地球観測衛星 Terra 及びAqua に搭載されている光学センサ
(注2)「平成21年度自然環境概況調査及び植生図作成手法の効率化検討等業務」において実施
(注3)16日間の画像が使用されている。1画素の250m四方毎に植生指数の高低を表す値が配列されたデータとなっている。
(注4)NDVI(Normalized Difference Vegetation Index: 正規化植生指標)
植物による光の反射の特徴を生かし衛星データを使って簡易な計算式で植生の状況を把握することを目的として考案された指標。
(国土交通省国土地理院 https://www.gsi.go.jp/kankyochiri/ndvi.html)