大分市主要浄水場等再構築基本計画の策定

掲載日 2021年1月19日
分野 国民生活・都市生活
地域名 九州(大分県大分市)

気候変動による影響

大分市では、平成30年7月に西日本を中心に被害をもたらした豪雨災害など、河川の氾濫や停電等による被害が頻発しています。大分県各地では、20世紀末と比較した場合、21世紀末では1時間降水量50㎜以上の短時間強雨の発生回数がさらに増加すると予測されています。

取り組み

大分市はこれまで、大分川表流水を水源とする「古国府浄水場」と「えのくま浄水場」、大野川表流水を水源とする「横尾浄水場」の主要3浄水場を基幹施設に、安全で安心な水道水の供給、安定給水の確保に取り組んできました。しかし、昨今の大規模災害等、水道を取り巻く状況は大きく変化しています。このような環境の変化に対応するため、大分市は「大分市主要浄水場等再構築基本計画 ~100 年先もくらしを支える大分の水道~」を令和2年3月に策定しました。
5つの基本方針(注)の1つ「主要3浄水場更新の最適化」では、災害による被害軽減と迅速な復旧を図るため、浄水場間の相互融通体制の確立、施設の浸水対策、停電対策等、災害に強い水道施設の構築が提言されています。取り組み例として、主要3浄水場間のバックアップ機能の構築が挙げられます。これは、災害などによりいずれかの浄水場に被害が生じても、各浄水場間の水融通を行い、断水の影響を最小限に抑えるシステムです。令和5年度までに「古国府~横尾浄水場」と「古国府~えのくま浄水場」の 2 区間の緊急時連絡管が整備される予定です(図1)。
また、大分市の洪水ハザードマップでは、「古国府浄水場」および「えのくま浄水場」は最大で5mから10mの浸水の発生が予測されているため、各浄水場の電気機械設備等に対する浸水対策が図られています。具体的には、防水扉の設置や、窓・ダクト位置(高さ)の変更等の防水措置や緊急時連絡管等の整備のようなハード面と、業務継続計画(BCP)の整備というソフト面の両面からの対応が示されています(図2)。災害時に活用が可能となる移動式浄水装置(MST(図3))の導入も図ります。このMSTは、局地的豪雨による高濁度時の浄水処理が浄水場で不可能な場合や断水地域の現場へ運搬した上での浄水処理が可能となります。
さらに、基本方針の1つ「水道施設の計画的な更新」では、主要配水池への送水管や大規模病院や行政施設等の重要給水施設への基幹管路を含めた整備・更新を図り、施設の予防保全や機能強化の取り組みを進めています。

効果/期待される効果等

大分市主要浄水場等再構築基本計画は、水道が直面する課題について、的確な対応を可能にするものです。社会情勢や環境の変化に対応し、将来世代に課題を先送りせず、100年先を見据えた持続可能な水道の構築を実現します。

図1 主要浄水場間のバックアップ(全体ルート)のイメージ画像

図1 主要浄水場間のバックアップ(全体ルート)
(出典:大分市上下水道局「大分市主要浄水場等再構築基本計画」)

図2 浸水対策の例のイメージ画像

図2 浸水対策の例
(出典:大分市上下水道局「大分市主要浄水場等再構築基本計画」)

図3 MST(モバイルシフォンタンク)の外観と処理フロー例のイメージ画像

図3 MST(モバイルシフォンタンク)の外観と処理フロー例
(出典:大分市上下水道局「大分市主要浄水場等再構築基本計画」)

脚注
(注)「大分市主要浄水場等再構築基本計画」の5つの基本方針とは、①主要3浄水場更新の最適化、②IoTなど最新技術の活用、③水道施設の計画的な更新、④安全な水道水の供給、⑤経営基盤の強化である。

出典・関連情報
大分市上下水道局「大分市主要浄水場等再構築基本計画~100年先もくらしを支える大分の水道~」(令和2年3月)
http://www.city.oita.oita.jp/o227/documents/honnpenn_saikoutiku.pdf
福岡管区気象台「九州・山口県の気候変動監視レポート別冊 九州・山口県の地球温暖化予測情報第2巻」(平成30年5月(2019年5月増補版))
https://www.jma-net.go.jp/fukuoka/kaiyo/chikyu/report/yosoku/pdf/yosoku2_all.pdf

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