気候変動による影響
京都府では、京野菜や果物など歴史に磨かれた特徴のある農林水産物の中でも、特に品質が優れたものを「ブランド京野菜」として認証しています。そのひとつである万願寺とうがらしは、京都府が生産拡大を進めていますが、夏期に出荷できない変形果の発生の増加が問題となっています(図1)。これは、高温により花粉の発芽率が低下し、種子ができなかった部位が変形するのが原因とされています。
掲載日 | 2021年1月29日 |
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分野 | 農業・林業・水産業 |
地域名 | 近畿(京都府) |
京都府では、京野菜や果物など歴史に磨かれた特徴のある農林水産物の中でも、特に品質が優れたものを「ブランド京野菜」として認証しています。そのひとつである万願寺とうがらしは、京都府が生産拡大を進めていますが、夏期に出荷できない変形果の発生の増加が問題となっています(図1)。これは、高温により花粉の発芽率が低下し、種子ができなかった部位が変形するのが原因とされています。
京都府農林センターでは、山城地域並びに中丹地域で万願寺とうがらしを生産する12棟のハウスにICT機器(図2)を設置し、定植時期から気温、土壌水分及び日射量の測定を開始し、それらの情報を栽培技術に反映させるICT(情報通信技術)農業に取り組んでいます。平成29年度までの調査では、ハウス内の温度を15℃から35℃の範囲で管理すると安定多収になること、4月の17時台の温度が高いと出荷量が多くなることが判明しました。また、日中のハウス内の温度が35度を超えると変形果が増えることも判明しました。これらの結果を踏まえて、生産者がスマートフォンでハウス内の温度データを確認し、日中は35℃以下に保つためのハウスの開放や、3月中旬から4月下旬における夕方は温度を高めに維持するため早期にハウスを閉める実証活動に取り組みました。
京都府農林センターから生育に望ましい温度域を生産者に伝えた上で、各ハウス内の温度をスマートフォンで監視しながら換気作業が行われたところ、生産者からは「温度を確認するためだけにハウスへ行く必要がなくなった」「ハウスの気温が常に手元で分かるので安心できる」などの好意的な評価を得られました。また、ICT農業を活用することにより、熟練生産者の栽培技術を新規生産者へ伝承することが可能となりました。今後は、日中のハウス内の温度が35℃以上になる時間の長さと変形果発生率の関係を調査し、この結果をもとに、変形果の発生を抑える温度管理法を生産者に提案する予定です。
図1 万願寺とうがらしの正常果と変形果
(出典:京都府農林センター 「高温が万願寺トウガラシの変形果発生に及ぼす影響を調査」)
図2 設置したICT機器
(出典:京都府農林センター 「万願寺トウガラシのハウス内環境をICT機器で測定開始」)