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首都の高度廃水処理施設を洪水から守るための対策

掲載日 2021年1月20日
分野 自然災害・沿岸域
地域名 海外(アメリカ合衆国ワシントンD.C.)

気候変動による影響

米国ワシントンD.C.を囲む大都市圏は、ポトマック川とアナコスティア川の2つの河川の潮津波(注1)に影響を受けやすい地域です。中部大西洋沿岸地域の海面はこの80年間で10インチ近く上昇し、近年では小規模の嵐や高潮でさえ、車道と歩道を水浸しにする「迷惑な洪水」が頻繁に発生する要因となります。NOAA(注2)の調査によると、ワシントンD.C.はこの種の洪水が起こる地域として全米で十指に入り、その回数は1950年代と比較して373%にまで増加しています。また、首都圏全域の下水はブループレーンズ高度廃水処理プラントと呼ばれる施設へと流れますが、この施設はワシントンD.C.内で最も低い場所に位置しているため、最近は海面上昇の影響を受けやすくなっています。

取り組み

DC水道局は高度廃水処理プラントを洪水から守るための対策として2つの取り組みを実施しました。
1つ目の取り組みとしては、DC水道局は、政府機関ならびに気候科学者の協力のもと、気候変動が今後数十年の間に、地域にどのような影響を与えるかをステークホルダーが検討できるよう支援を行いました。気候科学者を含む調査グループは、地域の脆弱性評価を行う一環として、気候予測データを参照し、海水位や高潮、異常気象等の潜在的な変化を把握しました。加えて、人々の生活にとって重要で、保護する必要がある物理的(病院等)及び概念的(観光経済等)の両方の都市資産のリストを作成の上、どのインフラが嵐の影響を受けるかについても確認し、レジリエンス構築の価値を金額で示せるようにしました。その結果、レジリエンス構築は災害からの復興よりも安価であることが判明しました。その後、調査グループは、気候変動影響に対して可能な限りレジリエントな都市にするための実施計画案を作成しました。
そして、DC水道局は1,320万ドルを投じて、高度廃水処理プラントの周辺に17フィート(約5メートル)の高さの防波堤建設の決定を下しました(図)。
2つ目の取り組みとして、DC水道局は、同地区の電力会社と協力し、独自の10メガワットの熱電併給施設を建設しました。DC水道局では、毎日3億7000万ガロン(約140万立方メートル)の排水をポンプで汲み上げを行い、ろ過や消毒等ポンプシステムを維持するために多くの電力を使用しています。熱電併給施設により、停電時の対応を改善し、炭素排出量やエネルギーコストの削減が可能となります。

効果/期待される効果等

防波堤は、500年に一度の洪水に対して150エーカー(約61万平方メートル)の高度廃水処理プラントの保護が可能となります。実施計画案の完全な実装には何年も要しますが、DC水道局は時代を先取りしています。また、熱電併給施設はプラントの使用電力量を抑え、緊急時の電力供給を守るだけではなく、発電所の炭素排出量も3分の1以上削減できると期待されています。そして、この高度廃水処理プラントは、ワシントン、メリーランド、バージニアの200万人の住民の生活を支えるワシントンD.C.で最も貴重な資産であると結論づけられました。

図 かさ上げがされた住宅

 図 2011年に建設された防波堤の最初の部分
(完了予定は2021年)
(出典:U.S. Climate Resilience Toolkit「Protecting Critical Infrastructure in the Nation’s Capital」)

脚注
(注1)満潮のとき、河口に入る潮波が垂直壁となって河川を逆流する現象をいう。
(注2)National Oceanic and Atmospheric Administration(米国海洋大気庁)

出典・関連情報
U.S. Climate Resilience Toolkit「Protecting Critical Infrastructure in the Nation’s Capital」
https://toolkit.climate.gov/case-studies/protecting-critical-infrastructure-nation%E2%80%99s-capital

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