気候変動による影響
気候変動が自然災害・沿岸域に及ぼす影響として、短期間強雨や大雨の強度・頻度の増加による河川の洪水、土砂災害や台風の強度の増加による高潮災害等が挙げられます。平成24年7月の九州北部豪雨災害では、大分県竹田市の玉来川をはじめとする河川で洪水による河岸浸食(林地の土壌流出)を受け、支持地盤を失った立木が河川内に倒伏し、下流域へ流出したものが多くみられました。一部には、河川に面した急傾斜地の森林の崩壊による流木被害も発生しました。また、平成29年7月九州北部豪雨でも、記録的豪雨により多数の山腹斜面が崩壊し、大量の流木による甚大な被害が発生しました。
取り組み
大分県では、森林づくりの基礎となる指針として「次世代の大分森林づくりビジョン」を公表しており、課題の1つに「災害に強い森林の整備」を挙げています。これは、過去の災害の被害形態から「(1)林地崩壊の防止」、「(2)流木被害の軽減」、「(3)風倒木被害の軽減」の3点に着目したものです。
具体的な取り組みとして、河川沿い両岸10m幅の立木の伐採と集積(更新伐)や、自然植生の回復及び植栽等による早期の広葉樹林化の森林整備(図1)が挙げられます。また、危険木除去や土石流の流出を防止する透過型の治山ダムであるスリットダムの設置といった施設対策(図2)も講じられています。
また、平成29年や令和2年の豪雨を受け、大分県地域森林計画について、森林審議会に諮り、「林地崩壊の発生が懸念される急傾斜地等の森林」に具体的な対象地域として「急傾斜の尾根谷部(概ね傾斜35度以上)の森林」を追加するとともに、これらの森林の広葉樹林化等の推進を図ることを明記しました。
効果/期待される効果等
平成24年、29年の九州北部豪雨災害では、治山ダム等の治山施設の設置により土石流を抑止・抑制したことで、人家等への被害を軽減しました。
河川や渓流沿いの森林を伐採及び根茎の発達した広葉樹林の導入による減災対策は、表層土をつなぎ止める力(土壌緊縛力)が強くなります。また、河岸・渓岸の侵食を防ぐ効果が高く、仮に崩壊した場合でも、重心が低く、枝張りの良い広葉樹に誘導することで、下流域への流木の流下量の軽減も期待できます。これは、平成29年7月の九州北部豪雨災害において、一定の効果が認められています。