気候変動による影響
熊本市は、生活用水を100%天然地下水でまかなっており、「蛇口をひねればミネラルウォーター」と言われるほどとても恵まれた都市です。しかし、都市化が進み雨水などの浸透する面積が減少していることに加え、熊本市民が1人1日あたりに使う水の量が九州の他の主要都市に比べて多いこともあり、地下水は長期的に見ると減少傾向にあります。また、気温の上昇による飲料水の需要増加等が懸念されています。気候変動による海面水位の上昇に伴う地下水の塩水化、及び地下水の過剰採取による地盤沈下が発生するおそれもあります。
取り組み
地下水の保全に向けて、熊本市では様々な節水対策に取り組んでいます。例えば、平成17年度から実施されている「節水市民運動」は、令和元年度から令和6年度までに熊本市民1人1日あたりの生活用の水使用量の目標値を210リットル(注1)に設定した「節水210(ニイ イチ マル)運動」を展開しています。この運動では、節水方法の他、簡単に取り付けられて節水に大きく役立つ節水器具を「節水器具普及協力店(注2)」で紹介しており、市民が節水に取り組みやすい環境整備を行っています(図1)。また、年間を通して、毎月の1人1日あたりの水使用量の結果は、市政だよりや熊本市のウェブページに掲載され、目標に向けた節水が呼び掛けられています。特に水使用量の増加する7月・8月の2ヶ月間 は「夏季の節水重点期間」として、1人1日あたりの水使用量を熊本市のウェブページに毎日公表しています。
また、学習・広報施設(水の科学館等)を活用するとともに、わかりやすい情報の提供を行うための広報体制・媒体・手法の充実にも取り組んでいます。これまでに、おいしい水道水のPRや、上下水道施設の見学を通じた事業内容のPR、出前講座による上下水道事業の普及啓発、及び民間事業者の発想やノウハウを活用した効果的でわかりやすい広報を行ってきました(図2)。
熊本県教育委員会が実施する「学校版環境ISO」の取り組みも節水に貢献しています。「学校版環境ISO」は、環境にやさしい心情を育むとともに、環境保全活動や環境問題の解決に意欲的に係わろうとする態度や能力を育成することを目的としており、毎年多くの小中学校で節水がテーマの1つに取り上げられています。
効果/期待される効果等
「節水市民運動」により、1人1日あたりの水使用量(年度平均)は毎年着実に減少しています。そして、長年の運動の浸透により、平成24年度・平成25年度は当時の目標であった「1人1日あたりの生活用の水使用量230リットル」を達成しました。
脚注
(注1)九州の主要都市における1人1日あたりの生活用水使用量の平均値
(注2)熊本市による節水器具の普及を推進し地下水の保全を図るための「節水器具普及協力店」の登録制度