気候変動による影響
平成6年は、全国的に厳しい渇水に見舞われました。そのため、利水容量が枯渇するダムも続出しました。福岡県においても、5月頃の小雨から6月も空梅雨のまま経過して、さらに7月に入ってからは連日の猛暑と小雨により、ダムや河川の状況は急速に悪化しました。これにより、北九州市では9月から約1か月間にわたる上水の給水制限が行われました。
「北九州市地球温暖化対策実行計画・環境モデル都市行動計画」では、渇水の頻発化、長期化、深刻化を気候変動の1つとしてとらえ、適応策を講じる必要性を訴えています。
取り組み
北九州市では、地震やその他自然災害に被災した場合であっても迅速に復旧できる安定給水対策として「いつでも安定して供給できる水道」を掲げ、事故・災害に強い水道の構築に取り組んでいます。この中の主要施策として、水道トライアングルシステムの構築を推進してきました。
北九州市の水源は東西に分散されており、浄水施設は東部地区に2浄水場、西部地区に3浄水場を有しています。これらのうち東部地区の「井手浦浄水場」と西部地区の「穴生浄水場」、「本城浄水場」は、基幹浄水場として市内全体の9割の給水をカバーしています。水道トライアングルシステムは、これら3浄水場をそれぞれ連絡管で結び、通常時は本来の給水区域を供給する送水本管として運用し、万が一、基幹浄水場の1つが事故・災害等において供給が停止した場合、他の浄水場からの水融通に切り替え安定給水を確保することを主な目的としています(図)。
効果/期待される効果等
水道トライアングルシステムの完成により、基幹浄水場間の相互水融通機能が強化されることから、事故や災害時の影響範囲を大幅に軽減させることが可能となります。このシステムを活用した相互水融通により、いずれかの浄水場で機能停止した場合を想定したシミュレーションの結果、安定的に給水が可能な市民は約79万人(計画給水人口に対して約75%)となります。
また、東西に分散している水源を一元的に運用することにより「渇水時の水融通」やコスト面を考慮した「経済的な水融通」も可能となります。