気候変動による影響
地球温暖化と都市部のヒートアイランド化は、地域住民の健康・安全を脅かす状況になっています。また学校や地域におけるスポーツ活動時の熱中症、職域での熱中症、高齢者の日常生活における熱中症のケースは多く、人々の健康と安全を守る包括的な予防対策が必要です。
掲載日 | 2021年5月21日 |
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分野 | 健康 |
地域名 | 中国四国(岡山県) |
地球温暖化と都市部のヒートアイランド化は、地域住民の健康・安全を脅かす状況になっています。また学校や地域におけるスポーツ活動時の熱中症、職域での熱中症、高齢者の日常生活における熱中症のケースは多く、人々の健康と安全を守る包括的な予防対策が必要です。
岡山大学ではスポーツ活動の安全性を高めるため、スポーツ教育センターを2006年に設立し、環境測定を開始しました。そして、2008年に熱中症予防対策マニュアル第1版を作成し運動部に5部ずつ配布し、運動部幹部には講習会を開催しました。その成果を調査したところ、この熱中症マニュアルを見たと答えた運動部員は25.8%でしたが、その内容は全く理解されておらず、配布のみの対応や一部の学生を対象とした講習会では、熱中症予防にはならないことが分かりました。
岡山大学では、学生の熱中症予防対策を進めるとともに、地域社会と連携して、すべての人々に熱中症予防対策を普及するため、2006年より湿球黒球温度(WBGT)の測定装置を自主開発し、2008年以降はWBGTのオンライン・リアルタイム表示に取り組みました(図1)。2014年以降では、津島キャンパス・鹿田キャンパス屋内外において、いつでも誰でもPCやスマホの画面で直近15分以内のWBGTを参照することが可能になりました(図2)。
また、学生のスポーツ系課外活動を中心とした熱中症予防対策の重要性が増していることを受け、熱中症予防対策マニュアル(現在改訂第6版)や 「指導者のための熱中症予防ノート」を作成し、熱中症予防対策講座(安全教育)および環境整備を実施しています。2010年からは、運動部員全員が熱中症予防講習会を受講する形式としました。
さらに、地域の教育委員会や保健所等と連携して、学校現場での環境測定と評価、実地調査結果にもとづく高齢者の室内熱中症対策を推進してきました。
2019年には、第3回熱中症予防シンポジウムを開催しました。これは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技会に向けて最新の熱中症予防対策を学び、日頃のスポーツ活動における熱中症予防の事例などを知り、具体的な熱中症予防対策を講じるとともに、今後解決すべき課題を共有することを目的としたものです。発表者を含め、参加した岡山大学学生や教職員、学外者による活発な意見交換が行われました。
学生の熱中症予防という直接的効果に加えて、地域社会への波及と安全マインドを有する次世代の育成に役立つと期待されています。また、測定・表示システム一式は自主開発で汎用性があるため、普及が可能であると考えられています。
図1 WBGTリアルタイム表示システムの概要
(出典:岡山大学ウェブページ 「地球温暖化とヒートアイランド化を意識したすべての人のための熱中症予防対策」)
図2 WBGTリアルタイム表示イメージ
(出典:岡山大学ウェブページ 「地球温暖化とヒートアイランド化を意識したすべての人のための熱中症予防対策」)