生態系を活用した適応策(介入)のモニタリングと評価のためのガイドブック

掲載日 2021年8月20日
分野 自然生態系
地域名 海外(ドイツ)

気候変動による影響

気候変動の影響は世界中で現れています。特に洪水やハリケーン、熱波のような異常気象は自然災害に脆弱な国や地域に多大な影響を及ぼしています。

取り組み

ドイツ環境省が管理する国際気候イニシアティブの事業の一部として、ドイツ国際協力公社は「生態系を活用した適応策(介入)のモニタリングと評価のためのガイドブック」を公表しました。これは、生態系の機能を生かした気候変動適応(Eco-based Adaptation (EbA))のための諸施策(介入)における効果的なモニタリングと評価(Monitoring and Evaluation(M&E))を設計・実行するために必要なプロセスを4つのステップに分けてその概要を説明したものです。このガイドブックは、M&Eの詳細なマニュアルではありませんが、下記のような各ステップで検討すべき重要な点が紹介されており、またより具体的な指示を提供するツールや手法にも言及しています(図)。

  • ステップ1(結果のフレームワークの構築):明確な目標を設定し、それの目標を達成するための道筋を描く。具体的には長期的な成果や影響に対して予測される「変化の因果経路」をマッピングし、介入がどのようにその経路に貢献するかを決定することで、その介入が目標を達成するための基本的な論理を明確にする。
  • ステップ2(指標、ベースライン(注)、ターゲットの定義):M&Eに利用できる指標の種類を把握する。なお、EbAの介入が効果的に目標を達成し得るかどうかを理解するために、成果(活動における中長期的な成果に関する情報提供)と影響(介入が貢献したことによる、より広範で長期的な変化の測定)の指標に焦点を当てる。また、ベースラインの設定とターゲットの特定を行う。
  • ステップ3(M&Eシステムの運用化):M&Eシステムを運用する上で重要な要素を把握する。ここには適切な評価デザインの選択、収集可能なデータの種類の慎重な検討、効果的かつ効率的なデータ収集・入力・分析・解釈に関する事項等が含まれる。
  • ステップ4(結果の利用と伝達):M&Eの結果を適応管理に役立てるとともに、資金提供者や政策立案者、コミュニティ及びより広い適応コミュニティを含む外部の聴衆に結果を伝える。

効果/期待される効果等

本ガイドブックをEbA設計の初期段階で活用することにより、介入の背景にある論理が明確になることが期待されます。また、EbAの実施の前にM&Eプロセスを導入することで、基本情報の収集が可能となり、それ以降は適切な間隔で関連パラメータを追跡できます。
一方、すでにEbAの実施を開始していた場合には、本ガイドブックの活用により、既に採用されていたフレームワークとM&Eシステムの改善に役立ちます。もし、M&Eシステムがまだ確立されていない場合は、本ガイドブックに沿って開発し、必要に応じて既存事業への統合や、中期の見直しや評価の実施にも役立つと期待されています。

図 「生態系を活用した適応策(介入)のモニタリングと評価のためのガイドブック」の構成
(出典:GIZ, UNEP-WCMC and FEBA 「Guidebook for Monitoring and Evaluating Ecosystem-based Adaptation Interventions」)

脚注
(注)ここでいうベースラインとは、介入が行われる前の初期状態を示すものであり、介入前と介入後の状況を比較し、変化を評価するための重要な基準点となる。

出典・関連情報
International Climate Initiative 「Adapting to the impacts of climate change」
https://www.international-climate-initiative.com/en/issues/adaptation
GIZ, UNEP-WCMC and FEBA 「Guidebook for Monitoring and Evaluating Ecosystem-based Adaptation Interventions」
https://www.adaptationcommunity.net/download/ME-Guidebook_EbA.pdf

ページトップへ