気候変動による影響
マツ材線虫病(松くい虫被害)は、病原体である「マツノザイセンチュウ」という体長1mm以下の線虫がアカマツやクロマツなどのマツ類を枯らす伝染病であり、「マツノマダラカミキリ」という体長2~3cmほどのカミキリムシによって媒介されます。松くい虫被害は年々北上しており、青森県では平成22年に蓬田村で初めて確認されました。現在では、北海道を除く46都府県で確認されています。平成27年以降に被害が確認された深浦町広戸・追良瀬地区や南部町小向地区では令和3年3月現在、被害が継続しています。また、近年の地球温暖化の影響から、被害の定着が懸念される地域が拡大しています。
取り組み
地方独立行政法人 青森県産業技術センター 林業研究所では、青森県内での被害拡大を防止するため、平成25年7月に作成された「マツ材線虫病(松くい虫被害)の監視・防除対策 ~対策の手引き~」を令和3年3月に改訂しました。
被害が拡大する時期の見直しにより、ヤニ打ち(注1)や、衰弱木や枯死木の搬出または燻蒸処理(注2)の時期を早める等、「マツノマダラカミキリ」の活動や、現場で行われている「被害木の発生の監視」「予防」「駆除」のスケジュールなどに合わせた改訂が見られます(図1)。
また、松くい虫被害発生の危険度を示す「温量によるマツ材線虫病ハザードマップ」も更新されました。これは、1年間の日平均気温が13℃を超えた地点だけ抽出した上で、合計1,000日℃以上の場所で「マツノマダラカミキリ」は定着できるという条件を基に、平成22年~令和元年の気温から作成されたものです。
効果/期待される効果等
「温量によるマツ材線虫病ハザードマップ」の更新により、日本海沿岸、津軽 平野、青森平野及び馬淵川沿いの地域は、危険性が高いエリアであることや、以前よりもエリアが拡大していることが判明しました(図2)。これらの地域にはマツ類も広く分布しているため、特に注意が必要です。
令和2年度における深浦町の被害については、広戸・追良瀬地区にとどまっており、被害の拡大は認められていません。南部町の被害についても小向地区内における単木的な被害にとどまっているため、これまでの対策の効果が表れていると考えられます。今後も同様の対策を実施し、被害の早期発見及び適切な駆除を徹底することが求められます。
脚注
(注1)カミキリムシの産卵対象となる弱った木を見つける手法で、マツヤニの乾燥状態から異常を検出する。
(注2)害虫駆除の目的で薬剤などをいぶすこと。