気候変動による影響
近年、平成30年7月豪雨や令和元年東日本台風など激甚な洪水氾濫や土砂災害を引き起こす気象災害が頻発しています。今後も気候変動により大雨や洪水の発生頻度が増加すると予想されており、これまでの想定を超える気象災害が各地で頻繁に生じる時代に入ったことを認識する必要があります。
令和2年6月に内閣府と環境省が連携して発表した気候変動対策と防災・減災対策を効果的に取り組む戦略では、課題の1つとして個人、企業、地域の意識改革・行動変容と緊急時の備え、連携の促進が上げられています(注1)。
取り組み
防災ジオラマ推進ネットワークは、防災についての意識を高める取組として、「堅苦しい」イメージのある「防災」をわかりやすく、そして楽しく学ぶために、「段ボールジオラマ」を考案しました。「段ボールジオラマ」は、等高線に沿って段ボールから切り抜かれたパーツをパズル感覚で積み重ねられるオーダーメイドのジオラマキットで、子供でも簡単に組み立てることができます(図1、注2)。なお、段ボールジオラマは防災ジオラマ推進ネットワークが作成します。
この「段ボールジオラマ」は、学校防災(総合的な学習の時間やPTAのイベントなど)や、地域防災(自治会の防災訓練やまちづくりイベントなど)に「段ボールジオラマ防災授業」として活用されています。
「段ボールジオラマ防災授業」は、大きく以下の3つのステップにより進められます。
- 「作る(体感する)」ステップでは、「段ボールジオラマ」の組み立てと、ジオラマに印刷されている主な道や施設などの色塗りを通じ、対象地域周辺の地形やランドマークの位置関係を3Dで体感・記憶します(図2)。
- 「考える」ステップでは、野外ワークなども活用しつつ、周辺の防災関連ポイントをチェックし、危険個所、避難施設、災害用自動販売機、AED等載せるべき情報を検討してジオラマ上にマッピングします。
- 「役立てる」ステップでは、完成したジオラマを学校の空き教室や公共施設等に展示し、地域の防災啓蒙ツールとして活用します。ハザードマップや古地図等と組み合わせた発展的な展開も期待されています。
宮城県登米市で中高生を対象に行われた防災授業では、ジオラマ制作後にハザードマップを見ながら浸水リスクの高いエリアを青いビニール紐で囲うと、ジオラマ内のかなりのエリアにその危険性があることがわかりました(図3)。さらに土砂災害の危険性がある箇所をマーキングした後、ジオラマの中に自分の家やよく行く場所などをプロットした結果、「自宅に帰れなくなったら〇〇さんの家に行こう」や「家族にも話して避難場所を確かめたい」等、ジオラマ内の情報を『自分ごと』として捉えた感想が多く聞かれました。
神奈川県川崎市で行われた九都県市合同防災訓練では、1/15000縮尺で川崎市全域をカバーしたジオラマを展示し、狭い範囲ではイメージしにくい洪水などのリスクを、大きな地形の高低差の中で『必然』として実感するきっかけ作りに貢献しました。
効果/期待される効果等
「段ボールジオラマ」の活用により、居住地域の地形や特徴を知り、豪雨の際の水の流れ、崖崩れから発生する危険エリア、避難時の道順など、災害の危険性や、副次的な危険性があるのかを学ぶことで防災知識を身につけ、いざという時に役立つことが期待されます。
脚注
(注1)『気候危機時代の「気候変動×防災」戦略~「原型復旧」から「適応復興」へ~』(2020年6月30日内閣府同時発表)
(環境省ウェブページ:https://www.env.go.jp/press/files/jp/114189.pdf)
(注2)基本仕様:縮尺1/1000、範囲2㎞四方、実寸2m四方(変更可)