水災害から地域住民を守る水防団

掲載日 2022年4月15日
分野 自然災害・沿岸域
地域名 全国

気候変動による影響

近年、毎年のように全国各地で豪雨や台風による災害が頻発しています。時間雨量50mmを超える短時間強雨の発生件数も増加しており、気候変動の影響により、水害の更なる頻発・激甚化が懸念されています。

取り組み

国は、従来の「過去の降雨実績に基づく計画」から「気候変動による降雨量の増加などを考慮した計画」へ見直しを通じた「流域治水(注1)」を推進しています(注2)。流域全体のあらゆる関係者が協働して取り組む「流域治水」において「水防活動」は重要な役割を担っています。「水防活動」とは、突然洪水などが起きたとき、人命や財産を守るためにその地域に住んでいる人々が様々な技術で被害を最小限に食い止めようと活動することであり、その中心となるのが「水防団(注3)」です。水防団の主な活動は以下の通りです。

~平常時~
① 水防月間や水防訓練その他の機会を通じて広く地域住民等に対し水防の重要性の周知や水防思想の高揚のための啓発,訓練
② 危険箇所の巡回・点検等の活動
~出水時~
③ 災害発生時の洪水や高潮等の被害を最小限にくい止めるための活動
・水防工法の実施
・排水作業

このような重要な役割を担う水防団ですが、最近の水防そのものに対する認識の低下と相まって減少傾向にあることに加え、大都市周辺における団員の地域外勤務による昼間不在、あるいは季節的地域外勤務による長期不在のため現実には出動できない団員の増加等が進んでいることが問題になっています。このような状況に対処するため、水防管理団体は、毎年、情報伝達訓練や水防技術の習得、水防意識の高揚等を目的とした水防団員等に対する水防演習を実施しています。また、水防団の活動に関する住民へのPRと水防団への参加の呼びかけとともに、水防団員の処遇等の改善措置が図られています。令和元年5月からは、水防団員をはじめ水防関係者の情報交流の場や水防活動参加希望者の情報の入り口とすべく、水防ポータルの試験運用を開始しています(図1)。

効果/期待される効果等

「平成25年台風第18号」の影響に伴う集中豪雨に際し、京都府桂川・小畑川水防事務組合から水防団員17人が出動し、大雨特別警報が発表される中、土のう積みや住民の避難誘導等の水防活動を実施しました。

「平成27年9月関東・東北豪雨」では、宮城県大崎市において、延909人の水防団員が出動し、床上浸水などの被害を受ける危険な状況の中、内水の排水作業や各種水防工法を用いた活動を行い、被害の軽減に多大な貢献をしました。

年には梅雨前線や台風に伴う豪雨により、全国各地で洪水による被害が発生しました。そのような状況の中、水防団は、堤防からの越水対策として「積み土のう工法」、漏水対策として「釜段工法」などを実施し、人命の安全確保や被害の軽減に大きく貢献しました(図2)。

図1 水防ポータルのトップページ
(出典:全国水防管理団体連合会 「水防ポータル(全国水防管理団体連合会ホームページ)試行版の運用開始」)

図2 主な水防工法の例
左上:越水防止【積土のう工】 堤防天端に土のうを数段積み上げる。
左下:漏水防止【月の輪工】 堤防裏のり下部の漏水を、土のうを半円形に積み上げ池を造り、池の水圧で漏水を減少させる。
 右:漏水防止【釜段工】 土のうを円形に積み上げ池を造り、池の水圧で漏水を減少させる。
(出典:全国水防管理団体連合会 「水防ポータル(全国水防管理団体連合会ホームページ)」)

脚注
(注1)流域治水とは、気候変動の影響による水災害の激甚化・頻発化等を踏まえ、堤防の整備、ダムの建設・再生などの対策をより一層加速するとともに、集水域(雨水が河川に流入する地域)から氾濫域(河川等の氾濫により浸水が想定される地域)にわたる流域に関わるあらゆる関係者が協働して水災害対策を行う考え方。
(注2)内閣府ウェブサイト「第23回会議資料~国土交通省説明資料(これまでの公共投資の動向と今後のインフラ整備について)~」(2020年5月7日)
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg6/20200507/pdf/shiryou1.pdf
国土交通省ウェブサイト「『気候変動を踏まえた治水計画のあり方』提言」 (令和3年4月改訂)
https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/chisui_kentoukai/pdf/r0304/01_teigen.pdf
(注3)8道府県で71団、団員数は13,988人(平成28年時点)。水防団員は、水防管理団体(水防管理者)の所轄のもとに水防活動を行うこととなっており、平常時は各自の職業に従事しながら、非常時には水防管理者の指示により参集し水防活動に従事する。

出典・関連情報
全国水防管理団体連合会 「水防ポータル(全国水防管理団体連合会ホームページ)」
http://zensuikan.jp/
全国水防管理団体連合会 「水防ポータル(全国水防管理団体連合会ホームページ)
試行版の運用開始」(令和元年5月14日)(水防活動活性化調査会第3回配布資料5)
https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/suiboukatsudou_kasseika/dai03kai/dai03kai_siryou5.pdf
国土交通省 「洪水から守ろうみんなの地域 水防月間」
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001401520.pdf
国土交通省 「水防団の実態」(平成30年3月19日)(水防活動活性化調査会第1回配布資料2)
https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/suiboukatsudou_kasseika/dai01kai/dai01kai_siryou2.pdf
国土交通省 水管理・国土保全局ウェブページ 「水防の基礎知識」
https://www.mlit.go.jp/river/bousai/main/saigai/kisotishiki/index.html
国土交通省 水管理・国土保全局 「「流域治水」の基本的な考え方 ~気候変動を踏まえ、あらゆる関係者が協働して流域全体で行う総合的かつ多層的な水災害対策~」
https://www.mlit.go.jp/river/kasen/suisin/pdf/01_kangaekata.pdf
内閣府 防災情報のページ 「2 消防団水防団」
http://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/h18/bousai2006/html/honmon/hm01030200.htm

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