滋賀県における水害に強いまちづくり

掲載日 2022年3月10日
分野 自然災害・沿岸域
地域名 近畿(滋賀県)

気候変動による影響

滋賀県の一級河川は、509本あります。それぞれの河川は、さらに小さな支流を持ち、滋賀県全体が川や水路の網目に覆われています。また、水源山地の地質条件と相まって、天井川(注1)は、全国で最も多く81本を有しています。滋賀県長浜市では、平成20年7月18日の短時間豪雨により、約200世帯が浸水被害に見舞われました。平成25年の台風18号では、記録的な大雨により県内各地で河川が氾濫し、浸水被害が多数発生しました。

取り組み

滋賀県は、平成24年3月に「滋賀県流域治水基本方針-水害から命を守る総合的な治水を目指して-」を策定し、平成26年3月には「滋賀県流域治水の推進に関する条例」(流域治水条例)を制定しました(注2)。条例では「どのような洪水にあっても、(ア)人命が失われることを避け(最優先)、(イ)生活再建が困難となる被害を避ける。」を目標とし、自助・共助・公助が一体となり「川の中の対策に加えて川の外の対策を総合的に実施する。」と定められています(図1)。なお、条例で定められた流域治水対策は、以下の4つに分類されています(図2)。

【川の中の対策】
① ながす(河道内で洪水を安全に流下させる対策)
洪水をできるだけ川の外へ溢れさせないよう河川や水路等を整備する対策。河道内に整備される洪水調節施設(ダムなど)も含む。
【川の外の対策】
② ためる(流域貯留対策)
調整池、グラウンド、森林土壌、水田、ため池での雨水貯留など、河川や水路等への急激な洪水流出を緩和する対策
③ とどめる(氾濫原減災対策)
輪中堤、二線堤、霞堤(注3)、水害防備林、土地利用規制、建築物の耐水化など、河川や水路等の整備水準を超える洪水により氾濫が生じた場合にも、まちづくりの中で被害を最小限に抑える対策
④ そなえる(地域防災力向上対策)
防災訓練や防災情報の発信など、避難行動や水防活動など即時的判断を伴う災害対応をより強化する対策

また、滋賀県では、全国に先駆けて「地先(ちさき)の安全度マップ」を作成しました(図3)。これは、大小の河川とともに、身近な下水道や農業用排水路などの氾濫まで想定した浸水予測マップです。

効果/期待される効果等

流域治水条例は、水害防止に向けた総合的な対策として人命被害を回避することが期待されています。また、「地先の安全度マップ」では、10年確率、100年確率、200年確率(注4)のシミュレーションにより大雨が降った場合に想定される浸水の深さを「見える化」することで、水害対策を具体的に検討することが可能となりました。

流域治水条例に基づき知事が指定する、200年確率の浸水区域に現存する建築物に対する「宅地嵩上げ浸水対策促進事業」の支援(補助)は、水害に強い安全安心なまちづくりの促進に寄与しています(注5)

図1 滋賀の流域治水対策
(出典:滋賀県ウェブページ 「滋賀の流域治水政策」)

図2 流域治水対策の分類
(出典:滋賀県 「滋賀県流域治水基本方針― 水害から命を守る総合的な治水を目指して ―」

図3 地先の安全度マップ 「水害リスクマップ」の例
(出典:滋賀県防災情報マップ 「地先の安全度マップ」)

脚注
(注1)天井川:川底が、周辺の地面の高さよりも高い位置にある川のことを天井川という。国土交通省 国土技術政策総合研究所 ウェブぺ―ジより)
http://www.nilim.go.jp/lab/rcg/newhp/yougo/words/068/html/068_main.html
(注2)「滋賀県流域治水基本方針― 水害から命を守る総合的な治水を目指して ―」(平成24年3月発行)
https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/1020555.pdf
「滋賀県流域治水の推進に関する条例」(平成26年3月31日 条例第55号)
https://www.pref.shiga.lg.jp/site/jourei/reiki_int/reiki_honbun/k001RG00000883.html
(注3)輪中堤(わじゅうてい):ある特定の区域を洪水の氾濫から守るために、その周囲を囲むようにつくられた堤防です。輪中堤は江戸時代につくられたものが多く、木曽三川(木曽川,長良川,揖斐川)の下流の濃尾平野の輪中が有名です。
二線堤(にせんてい):本堤背後の堤内地に築造される堤防のことをいい、控え堤、二番堤ともいわれます。万一、本堤が破堤した場合に、洪水氾濫の拡大を防ぎ被害を最小限にとどめる役割を果たします。
霞堤(かすみてい):堤防のある区間に開口部を設け、その下流側の堤防を堤内地側に延長させて、開口部の上流の堤防と二重になるようにした不連続な堤防です。戦国時代から用いられており、霞堤の区間は堤防が折れ重なり、霞がたなびくように見えるようすから、こう呼ばれています。霞堤には2つの効果があります。1つは、平常時に堤内地からの排水が簡単にできます。もう一つは、上流で堤内地に氾濫した水を、霞堤の開口部からすみやかに川に戻し、被害の拡大を防ぎます。
(国土交通省 水管理・国土保全ウェブページ 用語の説明より)
https://www.mlit.go.jp/river/pamphlet_jirei/kasen/jiten/yougo/05_06.htm
(注4)10年確率(10年に一度の大雨):時間最大50mm程度の雨が降った場合
100年確率(100年に一度の大雨):時間最大109mm程度の雨が降った場合
200年確率(200年に一度の大雨):時間最大131mm程度の雨が降った場合
(注5)条件を満たした場合に支援(補助)を受けることができます。
「水害に強い安全安心なまちづくり推進事業費補助金交付要綱」
https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/5259200.pdf

出典・関連情報
滋賀県ウェブページ 「滋賀県の流域治水政策」(2020年11月20日更新)
https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/kendoseibi/kasenkoan/19554.html
滋賀県 「4つの対策で総合的に命を守る「流域治水条例」」(リーフレット)
https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/1020717.pdf
滋賀県ウェブページ 「水害情報発信~水害の記録と記憶~」
https://www.pref.shiga.lg.jp/suigaijyouhou/gaiyou/105805.html
滋賀県ウェブページ 「滋賀県流域治水の推進に関する条例に基づく浸水警戒区域の指定について」
https://www.pref.shiga.lg.jp/ippan/kendoseibi/kasenkoan/19549.html
滋賀県土木交通部 流域政策局流域治水政策室 「滋賀県流域治水の推進に関する条例(平成 26 年条例第 55 号)の解説」(平成26年10月17日発行)
https://www.pref.shiga.lg.jp/file/attachment/1020716.pdf

ページトップへ