気候変動による影響
気候変動の影響等により激甚な災害が頻発しています。「令和元年東日本台風」では、10日から13日までの総降水量が、東日本を中心に17地点で500ミリを超え、特に静岡県や新潟県、関東甲信地方、東北地方の多くの地点で3、6、12、24時間降水量の観測史上1位の値を更新しました。この大雨の影響で、広い範囲で河川の氾濫が相次いだほか、土砂災害や浸水害が発生しました。また、これら大雨による災害及び暴風等により、人的被害や住家被害、電気・水道・道路・鉄道施設等のライフラインへの被害、及び航空機や鉄道の運休等の交通障害が発生しました(注1)。
取り組み
国土交通省は「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト(注2)」を踏まえ、全国109の一級水系全てにおいて、総勢2000を超える国、都道府県、市町村、民間企業等の機関が参画する「流域治水協議会」を立ち上げ、関係機関が協働して「流域治水プロジェクト」の作成を目指してきました。そして、全国109全ての一級水系、12の二級水系における「流域治水プロジェクト」が策定・公表されました(令和3年3月30日)。
この「流域治水プロジェクト」は、近年の気候変動による災害の激甚化、頻発化を踏まえ、上流、下流、本川、支川の流域全体を俯瞰し、河川整備、雨水貯留浸透施設、土地利用規制、利水ダムの事前放流など、あらゆる関係者の協働による治水対策の全体像をとりまとめた初めての取組です。
プロジェクトを実施するにあたり、以下の3つのポイントが示されました(図1)。
- 様々な対策とその実施主体を見える化
対策は大きく次の3つに区分されています(図2)。
- 氾濫をできるだけ防ぐための対策
堤防整備、河道掘削、ダム建設・再生、砂防関係施設や雨水排水網の整備等
- 被害対象を減少させるための対策
土地利用規制・誘導、止水版設置、不動産業界と連携した水害リスク情報提供等
- 被害の軽減・早期復旧・復興のための対策
マイ・タイムラインの活用、危機管理型水位計、監視カメラの設置・増設等
- 対策のロードマップを示して連携を推進
目標達成に向けた工程を、段階的に示し、実施主体間の連携を促進します。
- 短期:被災箇所の復旧や人口・資産が集中する市街地のハード・ソフト対策等、短期・集中対策によって浸水被害の軽減を図る期間(概ね5年間)
- 中期:実施中の主要なハード対策の完了や、居住誘導等による安全なまちづくり等によって、当面の安全度向上を図る期間(概ね10~15年間)
- 中長期:戦後最大洪水等に対して、流域全体の安全度向上によって浸水被害の軽減を達成する期間(概ね20~30年間)
- あらゆる関係者と協働する体制の構築
流域治水協議会に参画する機関は、国、都道府県、市町村、民間企業の他、地方整備局、地方農政局、森林管理局、地方気象台が構成員となることもあり、省庁横断的な取組として推進されています。
効果/期待される効果等
治水対策の全体像を「流域治水プロジェクト」として示すことで、ハード・ソフト一体となった事前防災対策が加速され、あらゆる関係者が協働して流域全体で行う総合的かつ多層的な水災害対策が推進されることが期待されています。そして、本プロジェクトの実行により、「防災・減災が主流となる社会づくり」へと繋がることも期待されています。
脚注
(注1)被害に関する情報は、令和元年10月15日内閣府とりまとめ等による。
気象庁「災害もたらした気象事例~台風19号による大雨、暴風等(令和元年10月10日~10月13日)(これは速報であり、数値等は変わることがある)」https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/bosai/report/2019/20191012/jyun_sokuji20191010-1013.pdf
(注2)国土交通省ウェブページ 「総力戦で挑む防災・減災プロジェクト~いのちとくらしをまもる防災減災」
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/sosei_point_tk_000034.html