気候変動による影響
「平成30年7月豪雨」や「令和元年東日本台風」など、毎年のように全国各地で自然災害が発生しています。ダムや遊水地の導入、河道掘削等により、河川水位を低下させる対策を計画的に実施しているものの、氾濫危険水位(注1)を超過した河川数は増加傾向にあり、気候変動等による豪雨の増加により、相対的に安全度が低下している恐れがあります。
掲載日 | 2022年6月8日 |
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分野 | 自然災害・沿岸域 |
地域名 | 全国 |
「平成30年7月豪雨」や「令和元年東日本台風」など、毎年のように全国各地で自然災害が発生しています。ダムや遊水地の導入、河道掘削等により、河川水位を低下させる対策を計画的に実施しているものの、氾濫危険水位(注1)を超過した河川数は増加傾向にあり、気候変動等による豪雨の増加により、相対的に安全度が低下している恐れがあります。
全国における近年の洪水により激甚な被害を受けた河川について、再度災害を防止するための「緊急治水対策プロジェクト」が国、県、関係市町村の連携にもとづき平成27年より実施されています(図1)。
例えば、「平成27年9月関東・東北豪雨」の被害を受けた鬼怒川では、国、茨城県、7つの市町(注2)が主体となり、一番目の「緊急治水対策プロジェクト」が実施され、下表に示す対策が計画されました。
ハード対策(令和3年9月15日完了) | ソフト対策 |
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決壊した堤防の本格的な復旧 | 豪雨時の行動を示した「タイムライン」の作成とそれに基づく訓練 |
高さや幅が足りない堤防の整備 | 地域住民等との共同点検 |
洪水時の水位を下げるための河道掘削 | 広域避難に関する仕組みづくり |
この他、災害を風化させないための広報活動として、常総市地域交流センターでは、当災害のVR映像等が盛り込まれたタッチパネルモニターや、マイ・タイムライン作成講座がいつでも体験できる装置等が常設されています(図2)。
また、「令和元年東日本台風」により甚大な被害が発生した7水系に対する「緊急治水対策プロジェクト」では、河道掘削、遊水地、堤防整備等に着手する他、国、都県、市区町村が連携し、霞堤(注3)等の保全・有効活用、浸水リスクを考慮した立地適正化計画の作成などのソフト対策を組み合わせた総合的な治水対策を進めています(注4、図3)。
水防災において「水害は施設整備で発生を防止」から「施設の能力には限界があり、施設では防ぎきれない大洪水は必ず発生するもの」へと意識を変革し、社会全体で洪水氾濫に備える「水防災意識社会の再構築」が必要とされています。また、社会資本整備審議会(注5)は、この再構築する取組をさらに一歩進め、気候変動による影響や社会の変化などを踏まえ、住民一人ひとりに至るまで社会のあらゆる関係者が、意識・行動・仕組みに防災・減災を考慮することが当たり前となる、防災・減災が主流となる社会の形成を目指し、流域全員が協働して流域全体で行う持続可能な「流域治水」への転換を提言しました。
緊急治水対策は、この「流域治水」の考え方を取り入れた対策を集中的に実施するものであり、実効性のある事前防災対策を計画的に推進、加速化するものと期待されています。
図1 進行中の緊急治水対策プロジェクト
(出典:国土交通省ウェブページ 「緊急治水対策プロジェクト」)
図2 常総市地域交流センターの体験コンテンツ
(出典:国土交通省 関東地方整備局 下館河川事務所 『鬼怒川緊急対策プロジェクト』ハード対策完成特設サイト~水防災意識向上を目指して~)
図3 令和元年東日本台風関連 7水系緊急治水対策プロジェクト(令和2年度版)
(出典:国土交通省 令和元年東日本台風関連の7水系緊急治水プロジェクト(2020年3月31日))
脚注
(注1) 河川が氾濫する恐れのある水位
(注2) 7つの市町:常総市、守谷市、筑西市、つくばみらい市、結城市、下妻市、八千代町
(注3) 霞堤とは、堤防のある区間に開口部を設け、上流側の堤防と下流側の堤防が、二重になるようにした不連続な堤防のこと。(出典:国土交通省 国土技術政策総合研究所)
(注4) 7水系:阿武隈川、吉田川(鳴瀬川水系)、入間川流域(荒川水系)、那珂川、久慈川、多摩川、信濃川
<7水系の緊急治水対策プロジェクトの概要>
[1] 阿武隈川緊急治水対策プロジェクト(令和元年度~令和10年度)
[2] 吉田川・新たな水害に強いまちづくりプロジェクト(令和元年度~令和6年度)
[3] 入間川流域緊急治水対策プロジェクト(令和元年度~令和6年度)
[4] 那珂川緊急治水対策プロジェクト(令和元年度~令和6年度)
[5] 久慈川緊急治水対策プロジェクト(令和元年度~令和6年度)
[6] 多摩川緊急治水対策プロジェクト(令和元年度~令和6年度)
[7] 信濃川水系緊急治水対策プロジェクト(令和元年度~令和9年度)
(注5) 社会資本整備審議会 河川分科会 気候変動を踏まえた水災害対策検討小委員(国土交通省ウェブページ:
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/s204_kikouhendousuigaitaisaku01.html)