①マダニ:野生動物を適正な密度に管理することでマダニの密度を抑え、ヒトとマダニとの接触リスクを一定水準以下に抑えることができる。野生動物管理はこれまで増えすぎ て害獣化したシカやイノシシ、生態系被害を引き起こす外来生物などを対象に実施されてきたが、まずはこれらの既存の制度を活用することでマダニ対策の目標が達成されるかどうかを検討すべきである。(以上岡部ら2019より引用)
②ツツガムシ:従来の標準3型Gilliam、Karp、Katoでは検出されないShimokoshi株等によるつつが虫病が確認され、届出数も増加傾向となり、診断法や疫学情報も新たな局面を迎え、古くて新しい感染症としての認識が必要(馬原2017より引用)となってきており注意が必要である。
国内において野生動物由来人獣共通感染症対策としての野生動物管理が進まない要因として、根拠となる法制度の不足、管理目的ごとに管理主体や監督行政部署が異なること、野生動物の個体数管理が野生動物種毎の特定計画に基づいて行われること、野生動物の生息地と管理主体の管理スケールとの不一致、適切な管理手法が構築されていないことなど(岡部他2020より引用)が挙げられており、関係機関や分野を横断した協同の重要性が指摘され、ワンヘルス*の取組も進められている。
*ワンヘルス(One Health):予防的アプローチである「人」「動物」「生態系」の健康をひとつと 考えこれを守っていく(IUCN 2021より引用)取組。
野外イベント等での人へのマダニリスク低減策として、場所を限定して医薬品医療機器等法で承認された衛生害虫用殺ダニ剤の散布の有効性が試験で確認されている(橋本ら2015, 2017)。主催者による殺ダニ剤散布の検討と参加者個人による予防(最右列参照)の併用等の対策が考えられる。