概要
アジア太平洋地域の首脳級や国際機関の代表が水に関する諸問題について議論する第4回アジア・太平洋水サミット(4th APWS)が、4月23日・24日に熊本県熊本市で開催されました。サミットには日本を含む30の国と地域が参加しました。
初日の開会式には天皇皇后両陛下がオンラインで出席され、「人の心と水-信仰の中の水に触れる-」と題した記念講演が行われました。
各国首脳が対面およびオンラインで参加して開かれた首脳級会合では、岸田総理が「熊本水イニシアティブ(概要 / 本文)」を宣言し、気候変動適応策・緩和策両面での取組と、基礎的生活環境の改善等に向けた取組の2つのアプローチによって、アジア太平洋地域の質の高い社会の実現に貢献していくと述べました。また、日本が質の高いインフラ整備等に今後5年間で約5,000億円の支援を実施することが表明されました。
さらに、首脳級会合では「熊本宣言」が採択されました。宣言では、世界的な新型コロナウイルスの蔓延に対処する中で水分野の重要な役割を確認するとともに、気候変動に関連する水災害が激甚化する中でも、健全な水循環を取り戻すことで、災害に備え、多角的な SDGs を達成し、さらには国際河川での協力を強化できるとしています。
2日間の議論を総括した議長サマリーでは、熊本宣言で示された質の高い社会への変革を目指す上で科学技術やガバナンス等に求められるそれぞれの役割について提言が盛り込まれました。
気候変動・適応に関する結果
※会合全体の詳細は出典をご参照ください。
サミットでは、アジア太平洋地域における水を巡る問題に深刻化し続ける気候変動が関与している現状が取り上げられました。首脳級会合で岸田総理が宣言した「熊本水イニシアティブ」では、世界人口の半分、GDPの3分の1以上を占めるアジア太平洋地域で気候変動の影響が既に顕在化しており、1000人以上に影響を及ぼす洪水の数が30年前の約3倍になるなど甚大な被害が生じていることが言及されています。
このような問題に取組むため、熊本水イニシアティブにおける気候変動適応策・緩和策両面でのアプローチとして、日本は次の取組を進めていくことを表明しました。
(1)「質の高いインフラ」の整備推進
- ダム、下水道、農業用施設等による、流域治水を通じた水害被害軽減(適応策)と、温室効果ガスの削減(緩和策)を両立できるハイブリッド技術の開発・供与
(ダム:既存ダムの運用改善や改造により、早期に効果発現) - 官民協働による「質の高いインフラ」の導入提案
(2) 観測データの補完への貢献
- 気象衛星(ひまわり)、陸域観測技術衛星2号(だいち2号)、全球降水観測計画(GPM)主衛星等の衛星データ供与
(3) ガバナンス(制度・人材・能力)への貢献
- AI/IoT等での予測・解析技術等による水害リスク評価の高度化
- アジア太平洋気候変動適応情報プラットフォーム(AP-PLAT)やデータ統合・解析システム(DIAS)を通じた人材育成等への支援