国立環境研究所主催の専門家会合
気候変動適応策を推進するための科学的知見の充実に向けて設置された専門家会合
適応策推進のための気候変動予測・影響評価に係る連携ワーキンググループ(令和3年~4年度)
「適応策推進のための気候変動予測・影響評価に係る連携ワーキンググループ」は、第2期「気候変動及び影響評価の連携推進に向けた検討チーム」(令和元年~2年度)の活動を引き継ぎ、気候変動の影響評価と適応策実施に係る情報の創出と伝達についてそれぞれの主体(アクター)が何に取り組み、どのような困難に直面しているかを伺うことで、主体間の相互理解を深め、情報の創出と伝達のあるべき姿を描き出すことを目的としています。
今期(令和3年~4年度)では新たに、 「情報仲介(公的機関)」「情報仲介(事業者)」、「俯瞰」の3つの立場にある委員が加わりました。
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検討チーム・ワーキンググループの約6年間の活動の集大成となる論文「気候変動の予測研究と適応の意思決定をつなぐ」が水文・水資源学会に受理されました! ※2023.12.1より早期公開中/2024.5.5発行予定
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高薮 出, 花崎 直太, 塩竈 秀夫, 安部 大介, 生駒 栄司, 石川 洋一, 江守 正多, 大塲 あい, 小埜 恒夫, 嶋田 知英, 田浦 健朗, 高橋 潔, 仲江川 敏之, 中北 英一, 西森 基貴, 初鹿 宏壮, 福渡 潔, 真砂 佳史, 三上 直之, 横木 裕宗, 吉川 実, 渡部 雅浩
DOI: https://doi.org/10.3178/jjshwr.37.1823
(抄録)
昨今、気候予測や影響評価に関する様々な情報が創出・発信されている。しかし依然として個々の意思決定者のもとにまでそれらの情報は行きわたっておらず、気候変動適応に関する意思決定がなされるまで効果的に利活用されているとは言い難い。この課題に対し、様々な分野の専門家が集まり、①気候予測と影響評価の専門家と適応策の意思決定者の関係はどうあってそれぞれ何をすべきか、②気候予測と影響評価の専門家と適応策の意思決定者は、効果的な適応策の実現に向けた強力な情報提供の主体である民間事業者、気候変動に係るリテラシーや合意形成に深く関わってきたマスメディアや環境NGO/NPOと今後どう共創・協働していくべきかについて、議論した。その結果、そこでは問題に関わる「情報創出」・「情報仲介」・「意思決定」の各主体が活発に双方向に情報共有しあうべきであることが浮かび上がった。また、その実現のためには幅広い主体間の定期的かつ対等な対話機会の確保に加え、情報創出者や情報仲介者の科学コミュニケーション能力のさらなる向上が不可欠であることも示唆された。
令和4年度第2回会合(2023年3月3日 10:00~12:00 オンライン会合 32名接続)
- 議事次第
- 開催結果概要
本ワーキンググループにおける活動の最後を締めくくる会合となりました。
今回の会合では主にこれまでの活動の集大成となる論文案について、事前に委員から寄せられた主な論点を中心に議論を行いました。
今後はオピニオン論文として投稿することを予定しています。 - 参考資料
適応策推進のための気候変動予測・影響評価に係る連携ワーキンググループ 2023年3月現在名簿
ワークショップ「適応策につながる気候変動予測情報の創出と共有」
(2022年8月30日 9:30~14:30 オンライン会合 約120名接続)
- プログラム
- 開催結果概要
脱炭素社会に向けて国内外の動きが加速する一方で、全球平均気温の上昇は既に産業革命比で1.09℃に達しており、少なくとも近い将来にはさらに上昇が続くことが見込まれます。そのため、気候変動への適応が不可欠であり、その実現には不確実性を含む気候変動予測情報を意思決定者に的確に伝達する必要がありますが、現状、必ずしも効果的に実施できているわけではありません。本会合では、気候変動の予測と適応策実施の意思決定に携わる者が集い、昨今の急速な社会の変化も踏まえて、効果的な気候変動予測情報の創出と共有に向けたあり方について議論することを目的としました。
各方面への参加呼びかけにより、気候予測研究者15名、影響評価研究者19名、情報仲介者(民間事業者、公的機関)24名、地方公共団体19名、俯瞰(マスメディア、NPO法人、研究者等)6名、省庁、地方公共団体等オブザーバー23名を含む総勢約120名のご参加を得て開催されました。
第一部にて気候変動予測情報の創出と共有に関する新しい動きを中心に、5名の識者より講演をいただいた後、第二部では参加者が6~9名ずつの10のグループに分かれ、第一部の講演を受けて、忌憚のない意見交換を行いました。第三部は、第二部の各グループの座長が議論内容について報告するとともに、「自分事」として個人の具体的なアクションにつなげることの重要性、予測の不確実性は立場によってとらえ方が違うこと、コミュニケーションと教育の重要性、情報仲介者の役割の重要性、データの使い易さの向上、自治体の人的リソース不足の解消などについて参加者全員で総合討論を行いました。 - 会合資料
令和3年度第2回会合(2022年2月4日 14:00~16:00 オンライン会合 44名接続)
令和3年度第1回会合(2021年8月2日 14:00~16:00 オンライン会合 48名接続)
気候変動適応策を推進するための科学的知見の充実に向けて設置された2つの検討チーム
「気候変動の影響観測・監視に向けた検討チーム」と「気候変動及び影響評価の連携推進に向けた検討チーム」は平成29年3月の中央環境審議会気候変動影響評価小委員会における「気候変動適応策を推進するための科学的知見と気候リスクに関する取組の方針(中間とりまとめ)」に示された方針に基づいて設置された検討チーム(専門家会合)です。
所属機関の枠を超えた議論と連携:
「気候変動の影響観測・監視に向けた検討チーム」は気候変動及びその影響の観測・監視の取組について体系的に整理し、長期的な観測・監視(基礎情報としてのデータ集積)を戦略的に進める必要があります。
また、気候変動及びその影響に関する予測・評価情報が、気候変動適応策の立案・実施に生かされるようにするためには、国、研究機関、事業者、地方公共団体など、情報を提供する側と利用する側の相互理解や意思疎通が必要です。
これを踏まえ、2つの検討チームは、所属機関の枠を超えた議論により現状の問題点と今後の方向性やあるべき姿を検討し、その成果を報告書にまとめました。
2020年気候変動影響評価報告書への貢献:
第2期(令和元年~2年度)は国立環境研究所気候変動適応センター(CCCA)のもと活動が継続され、2020年気候変動影響評価報告書への提言がなされました。
気候変動影響評価報告書 総説 (2020年)4章「気候変動影響の評価に関する現在の取組と今後の展望」
気候変動予測及び影響評価の連携推進に向けた検討チーム(令和元年~2年度)
気候変動及びその影響に関する予測・評価情報が気候変動適応策の立案・実施に生かされるようにするために、第1期(平成30年~令和元年度)現在直面する課題を出発点として、将来実現すべき姿を検討した第2期(令和元年~2年度)は、理想的な気候予測、影響予測、地方公共団体での適応関連施策の実施を描き、そこから逆算して、気候予測と影響評価の研究者はいつまでに何をすべきか、また対策側は何を望むのかを議論しました。
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予測・評価検討チームの成果をまとめた論文が水文・水資源学会誌に掲載されました!
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高薮出・花崎直太・塩竈秀夫・石川洋一・江守正多・嶋田知英・杉崎宏哉・高橋潔・仲江川敏之・中北英一・西森基貴・橋爪真弘・初鹿宏壮・松井哲哉・山野博哉・横木裕宗・渡部雅浩.2021. 気候変動の予測情報を利用者まで届けるには.J. Japan Soc. Hydrol. and Water Resour. 34(6):377-385.
DOI: https://doi.org/10.3178/jjshwr.34.377
(抄録)
過去20余年にわたり,気候変動とその社会への影響に関する膨⼤な予測情報や知⾒が創出されてきた。しかし,これらの予測情報や知⾒が国・地⽅公共団体や事業者などに広く利活⽤されるようになるまでにはまだ様々な課題が残っている。そこで,気候予測と影響評価に関する研究に⻑く携わってきた著者らが現在⾒られる各種の障害や,解決の⽷⼝について議論した。その結果,気候予測・影響評価・利⽤者のコミュニティーにはそれぞれ業務の前提と他コミュニティーへの期待があり,それらの間にずれが⽣じていることが浮かび上がった。解決のためには,気候予測・影響評価・利⽤者のコミュニティー間の協働が重要である。具体的には,予測情報や知⾒が創出される前の段階での相互の情報交換やすり合わせによるギャップの解消や,その実現のための制度や設備の整備が必要であることが⽰された。
- 気候変動予測及び影響評価の連携推進に向けたチーム(第2期)の概要
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- 第2期チームとその活動のポイントを分かりやすくまとめたものです。
- 「気候変動予測及び影響評価の連携推進に向けた検討チーム 第2期報告書」(12ページ)
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- 2030年影響評価報告書で実現されているべき事項
気候予測と影響評価研究の連携における現状の課題について、第1期にまとめられた55項目の中から、実現は困難だが重要な15の項目に絞り込まれました。また、新たに13の項目が追加されました。 - 2025年、2030年、その先のあるべき姿
気候予測、影響評価の研究コミュニティがいつまでに何に取り組むべきか、地方公共団体等の対策側が何を望むのかをまとめた図のほか、今後10年間に発表が予想される気候予測データセット、影響評価報告書、関連施策のおおよそのスケジュールと相互の関連性をまとめた図が掲載されています。
- 2030年影響評価報告書で実現されているべき事項
気候変動の影響観測・監視に向けた検討チーム(令和元年~2年度)
「気候変動の影響観測・監視の推進に向けた検討チーム」は、気候変動及びその影響の観測・監視の取組について体系的に整理し、長期的な観測・監視(基礎情報としてのデータ集積)を戦略的に進めることを目的とし、7分野における観測・監視の現状と観測・監視項目の優先度を整理しました。
■ 7分野
① 大気・陸面・海洋 ② 農業、森林・林業、水産業 ③ 水環境・水資源 ④ 自然生態系
⑤ 自然災害・沿岸域 ⑥ 健康 ⑦ 産業・経済活動及び国民生活・都市生活
「気候変動の影響観測・監視に向けた検討チーム」活動から生まれた観測データベース集
- 気候変動関連データベース集(2024年1月更新)
- 気候変動および気候変動影響に関する主要な観測の取り組みとそのデータの所在をリスト化したもので、令和2年度「気候変動の影響観測・監視の推進に向けた検討チーム」委員およびご協力をいただいた専門家の皆様、新たにご参加いただきました専門家の皆様のご助言をいただきながら編集しています。
- このリストに収録するデータベースは、「長期にわたる観測」および/あるいは「多点での観測であり今後の再調査等により気候変動影響把握に役立つ観測」で得られたデータを対象としています。
最終的には気候変動モニタリングのポータルサイトとなることを目指した、基礎的な情報提供という位置づけです。主要なユーザーとしては、研究者・行政担当者およびコンサルタント職員を想定しています。
気候変動影響は長期的に観測・監視が必要であるため、今後も継続的に更新していく予定です。
- 気候変動の影響観測・監視の推進に向けた検討チーム(第2期)の概要
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- 分野の拡充と観測・監視優先度の検討
第2期チームとその活動のポイントを分かりやすくまとめたものです。
- 分野の拡充と観測・監視優先度の検討
- 報告書「戦略的な気候変動の影響観測・監視のための方向性 第2版」(122ページ)
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- 分野別の課題と解決のための方向性
各分野の代表的な有識者が専門家判断を交えながら気候変動における現状の課題と課題解決のための方向性について簡潔にまとめています。 - 影響の因果関係図と観測項目の優先度・課題表
分野ごとに気候変動による影響の因果関係が一目で分かるストラクチャー図、重要な観測項目の優先度と課題をまとめた表が付いています。
- 分野別の課題と解決のための方向性
- 付表:各分野における観測の他分野との関連性
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- 他分野でも重要な観測項目
各分野で行われる観測のデータは他の分野でも重要です。検討チーム委員にアンケートを行いそれぞれの分野から見た評価を表にまとめました。
- 他分野でも重要な観測項目
(参考)中央環境審議会 気候変動影響評価等小委員会(第19回)平成31年3月28日開催
議事次第・配付資料/議事録