「気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)」は、気候変動による悪影響をできるだけ抑制・回避し、また正の影響を活用した社会構築を目指す施策(気候変動適応策、以下「適応策」という)を進めるために参考となる情報を、分かりやすく発信するための情報基盤です。

気候変動リスクから生まれる日本のイノベーション?
―世界で起こる気候変動リスクを軽減し、持続可能な成長に貢献する日本企業のビジネス事例

気候変動に脆弱な国々では、すでに多岐にわたる分野で深刻な損失と損害を受けています。気候変動に適応するための資金は依然として不足しており、そうした国々に十分に行き渡っていないため、民間企業の資金や開発力が期待されています。
日本においても、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task force on Climate-related Financial Disclosures、通称TCFD)を開示して、自社の事業の気候変動と連動したリスクやチャンスを分析して開示する企業が増えています。気候変動による影響については悲観的な事実を目にすることも多いですが、民間企業においては、気候変動対策を新たなビジネスチャンスと捉えることもできます。気候変動の影響が避けられないものとなった今、差し迫ったこの地球規模の問題へのソリューションを諸外国に提供できるなら、それは新たな成長機会にもなるでしょう。気候変動によるリスクにうまく適応し、チャンスと捉えるかどうかが大きな分かれ道となります。
このページでは、気候変動を自社のビジネス機会と捉えて他社の適応を促進する製品やサービを展開する「適応ビジネス」の取組事例を紹介します。

農業・林業・水産業

気候変動で作物が育たない⁉―世界が直面する食料危機

極端な高温や豪雨などの異常気象の増加により、これまで当たり前のようにその土地で収穫できていた農作物が育たなくなっています。水産業では、海水温の上昇により、これまで獲っていた魚のサイズが小さくなったり、獲れなくなってしまったりしています。気候変動の影響を強く受けるアフリカや東南アジア諸国では、海面上昇による地下水の塩水化で土壌の悪化が進み、頻発する異常気象は農作物に大きな被害を与え、すでに深刻な食糧難に陥っている地域も多くあります。日本でも、輸入に頼っている小麦が干ばつのために世界的に生産量が減少したことも一因となり、値段が上昇しています。気候変動はすでに世界の食卓に大きな影響を及ぼしています。

水環境・水資源

命をつなぐ水を守る

水は農業、工業、そして家庭と多岐に渡り、我々の暮らしを支えています。気候変動による異常気象により、地中海沿岸、中近東、アフリカ南部、アメリカ中西部では、降水量が減り、年間の河川流量が特に減ると予測されていますが、その他の地域でも水不足が観測されています。世界各地で起きている深刻な渇水により、安定した水供給が難しい地域が増えています。
また、温暖化による水温の上昇で、有害藻類の繁殖や赤潮の被害などの水質の変化も生じています。東南アジアやアフリカ諸国では、自然災害による水質変動等が散見されるも、急激な人口増加に上水道整備が追い付かず、未処理の井戸水などに頼らざるを得ない状況が続いています。飲料水から産業に至るまで、私たちの生命線である水資源をめぐり、世界各地では水資源を確保するための「水紛争」にまで発展しています。

自然生態系

燃える森林、失われる生物多様性

気候変動に起因する気温の上昇は、生物多様性及び生態系サービスを脅かしつつあります。近年気候変動により世界各地で大規模な山火事が発生しており、森林の生態系に損失を与えています。人為的な気候変動による生態系の急速な変化は人間社会とも決して無関係ではなく、食物連鎖への影響による食糧生産基盤の悪化を招き、医薬品の資源でもある動植物も失っていくでしょう。

自然災害

自然災害による生活の困難化、世界に迫る気候変動の影響とは

最近、ニュースや身の回りで極端な豪雨や大型台風の増加を感じたことがありますか。実際に気候変動による大雨の増加や台風の大型化などの変化により、土砂災害や洪水といった自然災害が増加しています。先日もパキスタンで、国の3分の1が水没する洪水に見舞われました。アフリカでも自然災害の被害は年々深刻化しており、セーブ・ザ・チルドレンのレポートによると、東アフリカのブルンジ共和国では、度重なる洪水などによって、ここ数年で少なくとも10万人以上が近年家を追われました。途上国は自然災害に対処するための整備が追いついていない地域がまだまだ多く、気候変動による自然災害は、気候変動に脆弱な国々に特に大きな損失と被害を与えています。

健康

気候変動と感染症に関係が!?気温上昇がもたらす私たちの健康について

気候変動の影響を受け、北半球の大部分では2022年の夏は記録的な暑さを更新し、WHOの発表によると、スペインとポルトガルだけで少なくとも1700人 以上の死者を出しました。年々熱中症の搬送車数が増加している日本も他人事ではありません。
また、感染症を仲介する生物の生息する場所が気候変動によって変化することで、以前発生していなかった地域での感染症拡大が懸念されています。

<制作協力>

獨協大学:山田萌、渡部翔、松枝秀和教授