-
■パルプ、
バイオマス燃料利用竹チップ
バイオマス発電施設
-
■工業的利用
- インフォグラフィック
- イラストで分かりやすい適応策
竹林の拡大
影響の要因
気候変動による気温の上昇が、竹林(モウソウチクとマダケ)の生息適地に変化を及ぼしている。
現在の状況と将来予測
現在、分布上限及び北限付近においてもモウソウチクやマダケの拡大が報告されており、気温の上昇が原因の一つとして指摘されている。
将来、東日本におけるモウソウチクとマダケの生育適地の将来変化を予測した研究によれば、 現在の35%から61-67%(3℃上昇の場合)に増加し、分布北限が現在より北上すると予測されている。
適応策
モウソウチクやマダケは人間が植えないと定着しない*ことから、特に今後の気温上昇により生育適地となる地域では、未植栽地における予防(植栽したら必ず管理する)が重要となる。また既に植栽後拡大している地域では、竹林の駆除や利用といった管理活動を行う事が考えられる。
*モウソウチクやマダケは天然更新せず地下茎で伸長する為、人為で植えない限り、別の場所で増える事は無い。
-
■竹林管理の継続
-
■管理できない場合の対策
例)広葉樹林等への転換
-
■人力による伐採
-
■重機による伐採
-
■竹稈、切株への注入
-
■土壌への散布
モウソウチクは中国から持ち込まれ、タケノコや竹材生産の為に西日本を中心に広く植栽されたものである。近年では輸入タケノコが増加し、竹林の放置が進んでいる。植栽する場合は、下記の事項を守る事が重要となる。
竹林管理が出来る場合のみ植栽を行う。
管理できなくなった場合は竹林全てを駆除し、広葉樹林の再生等、別の土地利用に転換する。
①駆除回数・期間
竹林を地下茎まで駆除するには、地上部の刈り払いを年2回7年間継続する必要があるとの研究成果が示されている。地上部を全て刈り払っても、生き残った地下部から多数の再生竹が生える為、辛抱強く伐採し続ける事が必要となる。
②道具
ナタや鋸を使う方法もあるが、竹用チェーンソー(木を切るチェーンソーより刃が多くついている)を使うと効率的である。
通常の重機に装着可能な竹伐採専用のアタッチメントが開発されており、切断・引き出し・小割・集積などを行うことができる。平地等では地下茎ごと除去出来る場合もあり、重機による作業が可能な場所では有効であるが、表土もはぎ取る為、その後の土地利用を考慮する必要がある(宅地利用等)。
竹の枯殺を目的として農薬登録されている除草剤*には、グリホサート系除草剤と塩素酸系除草剤があり、竹稈または切り株に1本づつ注入する方法と、土壌に散布する方法がある。
電動ドリルやドリルビットで穴を開け、分注器やスポイトなどを用いて注入(投入)する。竹稈と切株では再生を抑制する効果には差があり、特に地上部を伐採してから切株へ注入した方が再生を抑制する効果が高い。
竹林の伐採前や伐採後に塩素酸系除草剤を土壌散布し、根系に直接作用させて枯殺する(枯稈の伐採には注意が必要)。成竹に加え、伐採後に再生したササ状の細い竹の駆除にも有効。
*地下茎にグリホサート成分の移行があると思われる為、使用上の注意を守り、処理区から15m以内に発生したタケノコは2年間は食用にしない。
近年、鹿児島県等においてパルプ利用の需要量が伸びている。また、バイオマス燃料としての利用については、山口県等一部地域において、企業と連携した技術開発や制度的支援により取組を進めている 例が出てきている。
竹の繊維利用や樹脂としての利用が実用化されている。また、新素材のセルロースナノファイバー(CNF)を製造する技術が開発され、一部で実用化が進んでいる。
通年
通年作業が可能だが、新竹の成長に貯蔵養分を使い、光合成による養分の貯蔵が少ない時期(梅雨明け)に親竹を伐採すれば効果的。(出典:高知県立森林技術センター2007)
注入:生育期(春~秋頃、薬剤により異なる)
散布:生育期(春・秋)
-
侵入拡大を防ぐという点から効果が高い
地上部の刈り払いを年2回7年間継続する(出典:森林総研 2018)。
重機で根茎まで除去出来れば土地利用転換が可能となる。
注入・散布共に半年程度で枯死
竹の利用という点において効果が高い
低
一例として放置竹林を4年間、毎年全て人力で伐採した場合で230万/ha程度(出典:森林総研 2018)。「森林・山村多面的機能発揮対策交付金(林野庁)」等の助成が利用可能な場合もある。
〈試算例:立竹密度が10,000本/haで薬剤処理と伐採した場合〉竹稈注入:109万円/ha程度、切株注入:133万円/ha程度、土壌散布113万円/ha程度(出典:森林総研 2018)
高
一例として、一連の作業(伐採・玉切り・運搬・残材処理)を4人1組で行う場合、約140本/日(出典:高知県立森林技術センター 2007)
〈試算例:立竹密度が10,000本/haを薬剤処理のみする場合〉竹稈注入:1,280㎡/人日、切株注入:1,035㎡/人日、土壌散布1,519㎡/人日(出典:森林総研 2018)
地上部から竹がなくなっても、地下部が残っている場合再生してくる為、数年間は観察が必要。
薬剤を使用した場合でも1回で完全枯殺は難しく、状況に応じて複数回の施用を検討する。
資源量に応じた適正規模での利用が考えられる。
適応策の進め方
【現時点の考え方】
社会的要因(タケノコの価格下落、竹以外の資材や材料の普及等)により、主に西日本を中心として東日本の一部地域などでも放置竹林がみられるようになり、周囲の森林等へ拡大している事が確認されている。その対策として、竹の駆除方法や利用に関する知見が蓄積されてきている。
【気候変動を考慮した考え方、準備・計画】
気候変動が進むと北日本でも竹林の生育適地が拡大すると予測されているが、竹林を植栽するのは管理出来る場合のみとする必要がある。管理できなくなった場合は放置せず、既に蓄積された知見を活かして竹林の地上部・地下部全てを駆除し、他の土地利用に転換する事が重要である。